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男の子を拾います

男の子を拾う、それはフラグです

 



「あー、これでフラグが折れてくれればいいんだけど。」


 馬車の中でエルリアはつぶやく。


「……お嬢様?」


 同じ馬車に乗っていたメイドのリリアは、馬車の中でぶつぶつ言うわたしを怪訝な目で見ている。

 わたしが転んだことを知って迎えに来てくれた彼女にお礼を言うと、酷く狼狽えた。


 ああ、そうだったわ。わたし、使用人を人と思っていなかった振る舞いしていたものなぁと思い返す。


 名前を尋ねて、今までごめんなさい、心を入れ替えるわ、と90度の角度でお辞儀しながら言うと、もっとひどくなった。


「おおおおおおお嬢様がお礼!?謝罪!!???あああああ頭を打たれたのですね!?お医者さまにはまだ診ていただいておりませんの!?」


「いえ、診ていただきましたよ。特になにもないとのことでしたよ。さ、家に戻りましょう。あ、ええと、御者の方もありがとうございます。お名前、教えていただけますか?」


 後で名前を教えてもらったトニーという御者も、そう声をかけた時にはひどく驚愕した目で見つめてきた。本来、使用人である彼がわたしの目をじっと見つめるのはご法度だが、あまりの出来事だったのだろう。信じられないものを見る目で、呼吸も止まっていたので、息してください!と深呼吸をするよう命じた。




 一旦フラグのことは忘れ、膝立ちして馬車の窓から外を眺めていた。

 今までのわたしであれば、窓の外に興味などなく、大人しく座っていただろう。行儀の悪い振る舞いなので本来は叱られる行為だ。

 だが、リリアは何も言わなかった。多分、まだ狼狽えていてどうしたらよいのかわからないのだろう。


「ん?」


 歩道に、なにやら大きな固まりが落ちている。犬か?

 いや、あれは……!



「止めて!子どもが倒れてる!!」



 道端に一人の男の子が倒れており、それを何事もなかったように、またはちょっと顔を顰めて大人たちが通り過ぎていく。


 わたしは駆け寄って声をかける。リリアは馬車から飛び出したわたしの後を、焦って追いかけてきた。


「熱い。熱があるわ。」


 ゼエゼエ、と辛そうに呼吸している。体が震えている。


「大変。トニーさん、馬車に運んでください!」


「へっ!?お嬢様どうするおつもりで?」


「このまま、放っておけないです。我が家で看病します。」


「ええ!そんな!旦那様がお許しになるはずが……。」


 侯爵家に簡単に人を入れることはよろしくない。確かに、父様に言ったら、お許しくださらないだろう。

 でも、こんな小さな子が倒れているのに、誰も助けない。なら、わたしが拾うしかないではないか!

 腐っても侯爵家!金ならあるはずだ!


「父様には、後でわたくしが言うわ。だから、お願い!」


 潤んだ瞳で見つめると、二人は息を飲んで視線を彷徨わせた挙句、しょうがないですね、といった。

 ふっ、勝ったな!美少女の涙には勝てまい!さすがだね、エルリア!


 というわけで、拾った男の子はトニーとリリアに手伝ってもらい、裏口からこっそりとわたしの部屋に運んでもらった。

 わたしの部屋に入れることについても相当拒否をされたのだが、かといって他の使用人にばれても困る。90度以上に腰を折って何度もお願いしていたら、もうやめてください~!!とリリアが折れた。勝った!

 すぐに、お医者様を呼んでもらった。名目は、わたしが頭を打っておかしくなったから。

 というか、リリア的にはなんとなく、そちらがメインのような。

 まぁでも、結局小さなたんこぶ以上はなにも言われなかったけどね。


 リリア、なんでそんな怪訝な顔でみるのかしら?






男の子を拾うというと、有川浩さんの植物図鑑を思い出します。『女の子がイケメンを拾う話』で一作書けるのだから、さすがです。しかも、名作。

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