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ギースの懸念

ギースのフラグは実はエルリアが折るまでもなく実家の兄様によってすでに折られてます。

 



 僕、ギースは元々、ウィスタンブル侯爵家と血縁関係にある伯爵家の次男坊だ。


 兄同様優秀なのに次男なんて残念だったね、と周りからは同情される。が、僕は家督を継げないことを別に不服とは思っていなかった。

 長男こそ、家督を継ぐに相応しいと思っている。

 兄は所謂“脳筋”といわれる人間だが、懐が広く人望があり、勘が鋭く事業に対しても鼻が利く。

 父も昔から兄の妙な“勘”を大事にしている。兄が良しとした事業は上手くいくし、旨味があるように見える事業でも彼がなんだか気が進まないと答えたものは後々には失敗した。


 なんなんだ、あの人。

 未来でも見えているのか。

 ああ、そういえば、と幼いころに兄から言われた言葉を思い出す。



「お前次男だからって勉強してないみたいだけど、しといた方がいいぞ。」


「なんでさ。兄さまが家督を継ぐなら、別に僕はなにしててもいいだろ?」


 その頃の僕は、家督は継げないし、なら騎士にでもなるかとぼんやりと考えて体を鍛え始めていた。


「いや、体は鍛えたらいいけど。騎士じゃないと思う。うん、やっぱり、なんとなく勉強しとくべきだと思うぞ。それこそ、俺よりもっと。」


 その頃には兄に妙な勘があるって知っていたので、そう兄が言うなら、と従った。

 父もそのことを知り、兄以上に僕に教育をつけるようになった。





 ……まさか、ウィスタンブル侯爵家から養子の依頼が来るとは。


 本当に、なんなんだ、あの兄は……。






 兄の助言で厳しい教育を受けてきた結果が無駄にならずに済みそうだ。

 が、懸案事項がいくつか。


 ウィスタンブル侯爵家は、宰相であるグラード様、今は療養のため遠方におられるリルリア様、その一人娘であるエルリア嬢がいらっしゃる。

 グラード様は聡明かつ冷徹な方と聞く。

 エルリア嬢は、それに似ず、大層我儘に育ち、勉強もせずに身を着飾ることにしか興味がない、いわゆる馬…ごほん。

 とにかく、グラード様にも見放されているらしい。


 厳しいグラード様の後を継ぐのも責任重大で、それだけでも大変だが、義妹となるエルリア嬢が一番気にかかる。

 エルリア嬢がクリストファー殿下の婚約者に選ばれたため、今回の養子縁組が組まれたと聞く。

 正直、噂の令嬢に次期王妃が務まるのだろうか。

 下手をすれば、国が潰れる。

 婚約者候補との顔合わせの席でのはしたなくも不敬な振る舞いは、今でこそ人びとの記憶から薄まっては来ているが、思い出したかのようにまた話題にのぼり、嘲笑されている。


 そもそも、だれがエルリア嬢を婚約者になど推したのだ?

 グラード様は既にエルリア嬢を見放しているというし、クリストファー殿下も利口な方と聞くに、そのような令嬢を選ぶだろうか。

 もしやグラード様かクリストファー殿下に、他のなにか考えがあるのだろうか。


 なんの政治的思惑があるのやら。


 明日は初めてのエルリア嬢との面通しだ。

 さて、どんな高飛車なご令嬢やら。


 まぁ、距離を置いて過ごせばいいか。






 などと考えていたのだが。





『これ扱いすんな、このくそ親父!エルリア=ウィスタンブルと申します。どうぞよろしくお願いいたします。ギース義兄さま。』




 ん?







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