船内
タネヤカホルは母さん見たいな人だ。
ナカガワイツコは18歳ながら、しっかりしている。彼女の問題はポニーテールの髪だ、時々、発作的にカッターナイフを押し当てては、やめる。
シャンプーは3日に一回しか出来ないからだ。
シャワーも3日に一回。
労働者階級こそ入浴は必要なのに、入浴チケットが馬鹿高いから買えない。いや、買えるけど、使う気になれない。
3日に一度は福利厚生費に含まれる。
ミナミはショートカットで正解だった。
高水圧シャワールームは車の洗車機を応用しているらしい。
ぼんやり突っ立っているだけで、たった3分で身体をくまなく洗い、乾燥までしてくれる。
「ぽんぽこ行こか?」
「うん、行く、行く」
イツコはショートパンツにTシャツを、しこたま持ち込んできた。かしこい子だ。
「ミナミさんはあれだね」
「毎日言わなくてもわかってるからいい」
私は黄緑色の高校指定のジャージの上下とジーパンが2本、ナマズストアの制服が10着。1年に1組の計算で支給されている。
イツコは生意気にも、持ち物を完璧に揃えて来た。貸してもらうには料金を支払わなければならない。
コイツはそれも見越したように、郵便局で貰ったポスト型の貯金箱まで持ち込んだ。
すべての料金表が壁に貼ってある。
なんと300種類も持ち込んだのだ。