船内
ミナミは勤務の交代のために談話室を離れた。
宇宙船は想像とずいぶん違っていた。
幾つものドームがパイプで繋がり、またドームは層になっている。
居住区は人工太陽がある。居住スペースをさらに巨大なドームで覆っている。
ハウスは木製で、和風の家をイメージしている。
六畳のワンルームに乗客は二人または一人で暮らしている。
コンビニバイトは男女に分かれて、三人が一部屋に詰め込まれている。
乗組員のハウス中央広場の12時の位置にある。つまり、前方に当たる。
乗客のエリアは3時から9時の方角にあり、地面は土に見えるが、特殊な樹脂を土に見せかけている。
乗務員エリアの道路は、アクリルパネルを組み合わせている。オモチャのハウスの床のようだプラスチックの板が敷かれている安普請なのだ。
この船内はまさしくカースト制で支配関係がはっきりしている。
コンビニバイトなんて、地球にいた時だって底辺だから、対して気にならない。
気になるのは特別区にいる奴らだ。
現役のムロタイサオがいた。今の内閣総理大臣とお供が1人、SPが2人。
地上では国会中継にムロタイサオが出ているんだ。
どっちが本物かって、本物はこっちだ。
人気コメディアンのサカタヒデキ、今や時代の寵児なんてもてはやされてるアイツが、女優のミネラルミントとゴルフカートに乗って移動する姿を目撃した。
つまり、地上にいるのはそっくりさん?
ミナミがドームの前に立つと、扉がスゥーっと横にスライドして玄関が開く。
頭のてっぺんから少し外れたあたりにチップを埋め込まれた。
識別番号付きで、個人はすべて特定できる。
特定されたところで、底辺クラスは問題がない。
地球を出発して、1年が過ぎたが、 事件は起こらない。逃げ場がないからね。
「ミナミ、仕事上がりなの? 遅かったね」
「ジムと喋ってた」
「なんか食べる?」
「うん、タネヤさんは深夜だから今日は店で食べるらしい」