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フロアボス

勇者の誰もが言葉を失い、三層目。


どうも思わなかった奴もいるだろうがこんな空気で発言すれば、正気を疑われてしまうほどだろう。それほどまでに重い空気。


俺は空気を読んでいたさ。


しかし、魔物が現れればその空気は否が応でも壊されてしまう。


先ほどのような魔物。先の光景がフラッシュバックする。


「さぁ、勇者殿。私たちは手出しを致しません故、思う存分討伐してしまってください」


空気の読めない兵士。いや、この世界では魔物を殺すことが出来なければ死ぬだけだ。


むしろ、殺すことに生き甲斐を感じている気の狂った兵士もいない訳じゃない。


「....やってやるよ。クソ野郎」


クラスの中心的な奴らがヤケになりながら、自分を駆り立て、先陣を切ってみせた。


剣を横に一振りしただけだけでお世辞にも綺麗な剣筋とは言えないものではあったが下級の魔物にはかわすこともできなかった。ステータスが違う。


そいつは兵士にも出来なかった一振りで胴体と頭を分けてみせた。


「おい、みんな。俺たちはまだ死ぬわけにはいかねぇんだ。魔王を倒して帰らなきゃいけないんだ。こんな奴らは通過点にしか過ぎないんだ。俺が先陣を切ってやる。だから、お前らはついてくるだけでいいから、ここを生きるために戦ってくれ」


もう、こいつが主人公をやればいいのにな。

眩しすぎるわ。カッコよすぎるわ。


「オォォォォォ」


生徒の歓声。一時的な興奮状態になった彼らの獲物である魔物はあと三体。


一人の生徒が魔物の胴体を斬りつけ、絶命させることに成功する。一瞬、顔をしかめたが今の勇者たちは興奮状態による一種の洗脳された状態といってもいいかもしれない。


そんな彼らは争うようにして魔物の命を容赦なく刈り取る。


一瞬で慈悲もなく、遠慮なく。


この世界には異世界で転生ものでよくあるレベルなんてものはない。


つまりは、別に魔物を殺したところで戦闘経験と魔物の素材が蓄積されるだけで誰がやっても変わらない。


それをあいつらは知っていて、争うようにして魔物を殺したわけだ。滑稽な話ではあるが、笑えない話だ。


平和な国から来た人が殺しを肯定しているのだからな。


興奮が冷めないのか次々と魔物を狩り、階層も次々と降りて行く。


目標だった五層を越え、六層を越え、七層へと至る階段を降りたところで兵士からも停止の声がかかる。


「あの...そろそろやめておきませんと....」


その時、兵士も生徒も冷たい目で発言した兵士を見る。


発言した兵士以外に終わりにしようと思っていたのはほんの数人で他の誰もが調子にのり、増長した。


「すみませんでした」


この兵士が正しかった。がそれでも多数決の原理で間違いだということにされてしまった。


その謝罪も彼らには届かない。何か言ったことには気付いてもそれ以上に考えることをしなかった。


幸か不幸か、その兵士は無視されるだけに済んだ。


無視をされ続け既に十層を越えるところでボスフロアに出る。


だいたいのダンジョンでは十層ごとに階段前をボスが守っている。一回倒せばしばらくは現れないが、どうやら倒していなかったらしく、ちゃんと存在していた。


ファンタジー風にいうならば、大柄のコボルト。体は黒く、片手に肉切り包丁を、片手に丸盾を構えている。


流石の勇者も怖気付くかと思ったが、興奮は解けなかった。


「行くぞぉぉぉ。俺に続けぇ」


掛け声と共にコボルトに襲いかかる。


もう恐怖なんてものは存在しないのだろう。


「痛い目を見るんだろうな」


俺はその光景までしっかりと想像ができる。


魔法で爆散し、手足をぶった切られ、身動きの出来ない状態で首を落とされる。


あいつらには悪いが、こうなる未来は近いといってもいいだろう。このまま恐れを知らずに成長してしまえば。


みるみる間にコボルトには数十の切り傷と魔法が当たった痕がくっきり見え、疲れも出て、いつ倒れてもおかしくはない。


「グガァァァァァァァァァ」


最後のイタチっぺ、ならぬコボルトっぺに大きな肉切り包丁がその手から放り投げられ、一人の女子生徒に迫る。


どうやら、召喚当初の寝てた男子を起こしていた女子らしい。


助けるか、とも思ったが寝てた男子が間に入り、


反射リフレクト


ボソッと反射をさせることで包丁はコボルトの首へと吸い込まれ、見事に絶命する。


「ありがとう」


お礼を述べ、甘い雰囲気になるのかと心配したが、男子の方も女子の方もただの幼馴染なのか特に何もなく安心だ。


「ウォォォォォ」


倒したことで他の勇者どもは雄叫びをあげるが正直うるさい。


そんなバカどもは続いて、階段まで走り、その勢いのまま、勢いよく降り、十一層へと足を踏み入れるのだった。


主人公が働かない。次からもう少し、動かします。

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