私の王子様/俺の王女様
今は昔、二つの王国が栄えていた。両王国はとても仲が良い。
王室も仲がよくどちらも相手を招いてのパーティーなどがあった。
王と王、王妃と王妃。親友のような関係を築いていった。ただ二人を除いて。今回は王子の国でのパーティがあった
「あら、ジャック王子ご機嫌麗しゅう」
「あぁ、エリーゼ王女今日も麗しい、時に王女?」
「はい、何でしょうか?」
「その恐縮なのですがそのおみ足で踏まれているのは?」
「あぁこれですか?黒いゴミです」
「私には自分の足に見えるのですどうしてでしょう?」
「まぁ!それは大変ね!いいお医者様がいらっしゃるわ!ご紹介しましょう」
「いえ平気です、王女こそ一度神父様に懺悔なさっては?汚れた心も綺麗になるでしょう」
この有様である。これでも幼少期には・・・
「こんにちは!じゃっくおうじ!」
「えりーぜおうじょ!こんにちは!」
「いっしょにもりであそびましょ!」
「はーい!」
と微笑ましいのだが。同年同月同日に生まれた双子の様な二人であったから婚約をしようと両国王は考えていたのだが十三の時よりどちらとも無くこのような態度になり始めたのだ。
それが五年も続いている。しかしパーティーを終え、王女は国に帰り王子は自室に帰ると・・・
「あぁ!!なんであのような態度を取ってしまうのだ!俺のバカ!この大馬鹿者め!」
「あぁ!!なんであんな態度を取ってしまうのかしら!私のバカ!この大馬鹿者!」
二人ともじたばたと暴れる。そう二人ともパーティーが終わるとこのような感じなのだ。
「「はぁ・・・あの方に会いたい」」
分かる人は分かるのだが十三を超えると異性と距離をとろうとしてしまうのだ。
双子のような二人だったから感性が同じなのだろう。同じ時に離れ始めた。
しかし離れれば離れるほど、態度が酷くなればなるほど、心は惹かれていった。
あの人の前だと素直になれない。病院にいくのはあの人と子を授かった時だけ。
神父様に会いに行くのはあの人と誓い合う時だけ。なのにあのような態度を取ってしまう。
「ジャックよ」
「父上!いや!これはその!」
「何も言うな隣国のエリーゼ王女なのだが」
「は、はい!」
「別の者と婚約するそうだ」
「!・・・そうですか」
「あぁそれだけだ、明日向こうでパーティーがある・・・分かるな」
「・・・はい」
「エリーゼ」
「母上!いえこれはその!」
「何も言わないで下さい、隣国のジャック王子なのだけど」
「は、はい!」
「別の者と婚約されるそうよ」
「!・・・そうですか」
「はいそれだけです、明日こちらでパーティーがあります・・・分かりますね」
「・・・はい」
勿論真っ赤な嘘なのだが二人に効果は抜群だ。両王と両王妃は話し合っていたのだ。
「ジャックなのだが・・・」
「エリーゼなんだが・・・」
両陛下とも切り出し方がこれだった。まったく親ばかである。
「そちらの王女を悪からず思っているのだしかし恋慕の裏返りとでも言おうか・・・」
「エリーゼもそうだあいつなんかジャック王子との写真を見てはため息をつくほどだ」
頭を悩ます両国王。それを傍でみていた両王妃は声をそろえて、
「別の婚約をしたと嘘をついたらいかがでしょうか?」
「「別の婚約?」」
「そうあの二人を別れさせようという感じで嘘をつくのたぶん二人とも素直に言うんじゃないかしら?」
「中々に非道な事を思いつくものだな・・・しかし」
「あぁやってみる価値はあるやもしれん」
国の安寧以上に我が子の幸せを祈る四人が行動した二人にとっては拷問のような嘘。
さて効果の程は・・・
「エリーゼ王女ご機嫌いかがでしょうか?」
「あまり優れません・・・黒いゴミがいるせいでしょうか」
「バルコニーで話したい、来てくれないか」
「え、えぇ・・・」
パーティーの喧騒から離れ夜風に当たる二人。胸は昂っているのに何もいえない沈黙。
「大人になればこうして二人一緒に夜風に当たる、なんてことできないのだろうな」
「・・・そうねいつかは二人とも離れ別の家庭を持つ事になるのね」
「やっぱりか本当は祝福するのがいいのだろうが俺には到底出来そうも無いんだ」
「奇遇ね私もよ幸せになって欲しいのに喜べないなんて」
「俺達は同じ時に生まれたって憶えているか」
「えぇ双子の様に育ったわあなたの考えが分かってしまうぐらいに」
「今の俺は何を考えている?」
「分からないのよ、ただ分かる事はあなたがいるって事ぐらい」
「俺は悲しみでいっぱいなんだよずっと前から」
「・・・ねぇ最後に抱き締めてくれないかしら」
「あぁそれがお前の願いなら」
「温かいわすごく・・・」
「お前が」
「あなたが」
「「結婚するって」」
「は?」
「え?」
「お前が結婚するって聞いたから・・・」
「あなたが結婚するって聞いたから・・・」
「・・・ははは」
「・・・ふふふ」
「「あははは!」」
「これは父上の罠だな!」
「母上もそうみたい」
「・・・結婚してくれないか」
「えぇ元からそのつもりよ」
「十三の時から、いやもっと前からお前を好きになっていた」
「双子ね私達私もそうずっとあなたが好きだった今なら死んでもいいわ」
「それは一大事になるな、でもこれからはずっと」
「えぇずっと」
「「一緒に」」
「よろしく俺の王女様」
「よろしく私の王子様」