職業Ⅳ・⑥ 頼み
「……来てくれ!」
今度は笛を吹かない。繋がることができるなら、笛でなくても伝わるはずだ。
思ったとおり、鳥が飛んできた。魚も寄ってくる。
「俺を、助けてくれ」
命令ではない。俺と動物たちの間に、上下関係はない。俺がするのは、依頼だ。
彼らが了解したように聞こえた。
鳥がカラマロの頭というか顔というか、に向かって突進していく。
俺は彼らを襲うカラマロの足に使い捨てナイフを投げ、彼らを助ける。
狼少女もカラマロの足に噛み付き、攻撃を防ぐ。
魚たちは水中で攻撃を繰り出す。
防ぎきれなかった鳥の突進を顔に受け、カラマロが痛みにあえぐ。
やはり顔、頭はモンスターの弱点か。
鳥の群れには二つに別れ、横から攻撃を加えてもらった。
繋がっている。そんな感覚がある。口に出さずとも、伝わる。
鳥たちは空に上り、群れで周り風をを起こす。
魚たちは海を下り、魚群が回る水流を起こす。
上下二つの流れに巻き込まれたカラマロ。もう、動けなかった。
俺の乗っている船をカラマロに近づけてもらう。
「最後だ」
短剣を振りかぶり、カラマロの顔へ振り下ろす。
だが、俺は斬れなかった。
カラマロとの繋がりがそれを拒んだ。
カラマロとの通路が開かれ、意思が通じる。
カラマロが人を襲ったのは、守るためだった。
自分の身を。そして、わが子を。
ありがちな話ではある。だが、これを聞いて無視できるやつがどこにいる。
俺は人々にカラマロや子供を襲わないように伝える。
だから、お前も船を襲わないでくれ。
こう伝えた。
カラマロは、仕方なく、という様子ではあったが了承した。
これで、大丈夫だ。
俺は撤収を船員に伝え、カラマロに向き直る。
ありがとう。また会おう、カラマロ。
この世界を生きていれば、また会う機会もあるだろう。
クエストクリアにはならないかもしれないが、別に、それでも良かった。
俺とカラマロは離れていく。
「称号取得:繋がる者」
この職業の称号を獲得した。さあ、帰ろう。
街を出たときにはまだ朝だった。もう、空が赤く焼けていた。
予定よりこの職業の話が短くなってしまいました……。




