職業Ⅲ・⑦ 最上階到達
最上階は暗かった。
光が全くないというほどではないが、突然夜が来たかのようだ。
そしてその奥に、一匹の巨大な狼がいた。
ここまでで捕獲してきた狼人間は、狼が立ち上がって二足歩行になった形だ。四足歩行の狼ではない。
それにここまで巨大ということは……ボスか。
「グロォォォォォォォォォォォォォォォォォ」
かなり低い声で吼える。仲間を捕まえられた怒りの声か。
飛び掛ってきた。
先人を切って突入してきた剣士たちは左右に避ける。避けきれず狼の前足に引っ掛けられた者もいたが、運よく軽症で済んだ。
俺は麻痺属性カードを投げつける。効果が出ない。ラオンのときと同じで、何度も攻撃しないと効果が出ないのか。
剣士たちが狼の左右から斬りかかる。狼が跳びあがって避ける。
そのまま後衛の魔術師に飛び掛ってきた。魔術師は剣士より守りが薄い。
「防衛盾!」
魔術師は身を守るために盾を出現させた。負傷者はまだ出ていない。
「火炎!」
「雷撃!」
盾を消して、狼の下から火炎攻撃をする。狼は飛び上がるが、魔術師はそこを逃さずに雷を落とした。
「グォォ!?」
これでは俺が何も出来ないじゃないか……。
とりあえず、ギャンブラーの代名詞、ダイスを投げる。20面ダイスで1が出ると全く効果がないように見えるが、20が出れば一撃で怯む。少しずつでもいい。ダメージを与えていこう。
雷に打たれて地面に落ちた狼に、剣士が斬撃を繰り出す。ダメージは大きい。
魔法と、ダイスと、斬撃。弓や銃での射撃も入る。
狼人間のボスは傷だらけで動けそうになかった。
ボスだって大したことない。
そう思った。
俺たちは、狼人間との戦いの基本を忘れていた。




