職業Ⅲ・⑥ 突入
俺たちはアナティフへと突入した。
下の階は先に突入した冒険者たちが縛った狼人間がたくさんいて、戦闘には出られないメアテクスの人々が運び出している。
このまま上の階に突入できるな。
俺たちは階段を駆け上がっていく。
四階までくると、狼人間にやられて倒れた冒険者が運び出されてきた。
ここにも縛られていない狼人間は残っていない。
まだ上だ。
六階まで来ると、第二陣の冒険者の一部が狼人間と戦っていた。
「援軍が来たぞ!」
戦闘中の冒険者が叫ぶ。ぎりぎりの状況だったらしい。
これだけ人数がいれば大丈夫だろう。
すぐに縛って上の階の冒険者を助けに行きたい。
ポーチからカードを取り出す。
「麻痺属性カード!」
先に来ていた剣士と戦っている狼人間に投げつける。
「グォ!?」
狼人間の意識の外からの攻撃。驚く間もなく麻痺状態になる。
俺は持ってきたロープで狼人間を縛る。
「ありがとう」
この狼人間と戦っていた剣士が声をかけてきた。太刀使いのようだ。
「当然だ。カード投げただけだしな」
狼人間の斬り傷は瞬く間に修復されていく。
これでは倒すことなど出来やしない。捕獲が基本だな。
「よし、みんな上に行くぞ」
剣士が促す。他の狼人間も皆が縛ったようだ。
上では狼人間との激戦が繰り広げられていた。
こっちはほとんどが剣士。数では勝るが、いくら斬りつけても修復されてしまう。
なら俺の出番だ。
爪と剣がぶつかり合うところに、麻痺属性カードを投げた。
「グォ!?」
あとは下でやったのと同じだ。
ロープで縛る。
俺の職業がここではかなり役に立つな。
みんな武器に麻痺属性をつけてないのか?
情報は出回っているはずなのに。
俺はカードを何枚も同時に投げ飛ばして、狼人間を麻痺させた。
剣士たちが縛り上げる。
そうして上に上がっていった俺たちは、第四陣、第五陣の援軍もあり最上階までたどり着いた。
ここまで結構簡単に上がって来たから、最上階も大したことはないだろうと思っていた。
しかし、最上階での戦いは壮絶なものになる。
そんなことを、このときの俺たちは知らない。




