職業Ⅲ・③ 武具強化
メアテクス――。
ユキナラリ街に比べてもかなり栄えている街のようだ。
一般的に港町は栄えるものだからそんなものか。
武具職人や、雑貨店、魔法書店などが立ち並ぶ通りがあり、その先に赤く塗られた良く目立つ建物がある。あれがギルドだ。
何度か依頼を受けたせいで、ポーションなども残り少ない。
ここで買って補充しておいたほうが良いだろう。
それに、武器や防具の強化も必要だ。
……とまあ、やることはいろいろあるのだが、まずは帰還報告だ。
別の街に来たのだから正確には帰還とは呼べないのだが、その辺は気にされていないらしい。
帰還報告を済ませ、買い物に行く。
ここの受付嬢はなんというか機械的な感じで、あまり好きになれない。
来る人が多いために分業されていて、仕事さえしておけばいいといった感じだ。
職業が変わると武器も変化するから職業ごとに武器を変える必要はないのだが、そろそろ新しい武器を作ってもいいだろう。
武具店の入り口から声をかけてみる。
「リタントの素材で武器を作って欲しいんだが、お願いできるか?」
「リタントか! 兄ちゃんなかなかいい腕してんじゃねぇか?」
そう言って出てきたのは、その過去を語るような傷だらけのおっちゃんだった。
昔は冒険者やってたけど、引退した――といった感じか?
「まぁな。これで新しく武器を作りたいんだが」
「おぅ! 任せとけ。麻痺属性の付く武器がつくれるぞ」
麻痺属性――?
今までの武器でもいろいろ使えたじゃないか。
そのあたりを聞いてみる。
「そういう職業はいろんな属性をまんべんなく使えるんだが、その分全ての属性で威力は低めになるんだ。麻痺属性の武器を多属性職業で使うと、麻痺が一番強くなって、代わりに他の属性の威力は低くなる」
うーむ。
要は全部あわせたら同じくらいってことだな。
で、リタントの武器は麻痺属性というより麻痺特化ということだ。
「じゃ、お願いします。あと防具も作りたいんだけど」
「リタントの素材が少し余るから、それで作ろうか? いや、これだけでは足りないか……」
ドラグモやラオンの素材がまだ残っていたから、出す。
「これでどうだ?」
「よし、防具も一式揃えてやる」
料金は……まあ少々高めではあったのだが、武具の強化は命にかかわる問題だ。そう思ったら安いものだろう。
「明日の朝には完成してるから取りに来い」
「わかった」
今日は移動に一日使ったから、明日から新しい武具を使ってクエストに行こう。
宿屋……どこだ?




