職業Ⅱ・⑧ 蟻情報
リタントを探して俺は崖を……。
いつかと同じ展開だな。
ただ、今は隣にセアがいる。
参考になるし、何より土地勘のない俺にこの辺の地形の情報は貴重だった。
「いないですね。崖の下の平地まで降りてみますか?」
「そうだな。いまさらだが、リタントってどんなモンスターか知ってるか?」
「知らなかったんですか!? 黒くて、ラグビーボールが三つ繋がったような形をしてて、脚が六本あって、柔らかい角が二本ある巨大なモンスターです。翅はないので飛びません。この辺では常識ですよ」
この辺では、だろ。
で、そんな形の生物というと……。
脚が六本。
ボールが三つ。
この特徴を持つ種類といえば、昆虫だ。
脚は六本。頭、胸、腹がある。
このゲームのモンスターは現実の生物がモデルになってるみたいだ。
現実にいる、翅のない黒い昆虫……。
蟻だ!
巨大な蟻か――。
ちょっと気持ち悪いかも。
そんなことを考えつつセアについていくと、平地に出た。
「ここにもいないな」
「いや、あれです」
へ?
俺が岩かと思っていたものが突然動き出した。
おそらく、あれがリタントなのだろう。
普通に見て、蟻だ。
巨大とはいうが、そんなにでかくない。
いや、アリというには十分に巨大なのだが。
「来ます。気をつけて!」
そう言って右前方に駆け出す。
なら俺は、反対側だな。
セアが双剣で斬りこむ。
俺は赤い棒を振って高温の空気を直接リタントに当てる。
セアは斬撃を繰り出し、俺は赤い棒を振りまくる。
セアの斬撃はかなり効いているようだが、俺の攻撃が効いているように見えない。
何故だ?
セアに高温の空気が当たってしまった。セアが驚いた顔をして振り向く。
「わるい!」
俺はとっさに謝るが、セアは首を振った。
「一旦退きます!」
どうした?
セアが言うのだから、従っておいていいだろう。
俺たちはリタントから一時撤退した。




