8話 勉強と訓練
ふぅ、ギリギリ間に合った。
それから五分後ぐらいに教師は入ってきて授業が始まった。
授業も終わりやっと帰れることとなった。なったのはいいがどうするべきか……。家に帰って勉強するか、ユグドラシルに行って訓練するか……。よし! 勉強やだし訓練しよう。それに赤点回避は出来るはずだ。
そうと決まれば--
「天野君今日暇だったらテスト勉強一緒にやらない?」
--はいオワター。流石にテスト期間中に訓練するとは言いにくい。まあ、やってたら知与川にはばれんだけどね。
「いいよ、どこでやる?」
「ユグドラシルでやってもいいよ」
うわぁ、知与川さんいきなり後ろに立つのやめてもらえませんか?
「ユグドラシルでいい?」
「あ、いいよ」
まあ、断る理由もないしいいだろう。
「えーとねここはこの公式を使うんだよ」
「あ、そっか。なんか教えてもらってばっかで悪いな」
「いいよー、僕達が誘ったんだし」
開始してから一時間知与川は教える側に徹していた。
そして意外なのが白金さんだ、理系科目はできているのだが文系科目がそんなに得意ではないらしい。
ちなみに僕は全教科がダメダメです。てへぺろ!
てか、知与川頭良すぎだろ、こいつ開始三十分で提出物全部終わらせたし。
それから更に一時間ほど勉強して今日はお開きとなった。
「知与川ちょと訓練室貸して貰ってもいい?」
「今日は頑張ったしいいよ」
「ありがとう」
「あ、あの天野君良かったら一緒に訓練しない?」
「いいの? じゃあ模擬戦してもらってもいい?」
「もちろん」
ところで知与川さんなんでニヤついてんですか?
「じゃあ、始めるよ」
「おう!」
開始と同時に走り出し剣で斬りかかる。しかしよけられてしまう。
「だったら、ファースト・アクセル!」
加速して一気に迫る。--が。
「ロスト・タイム!」
時が止まる。だが自分の周りに結界を張り呪文を跳ね返すことで対処する。そして結界の範囲を広げ白金さんも中に入れる。あとは自分の領域だ、一気に詰め寄り斬りかかる。それでも白金さんは剣を受け流し続ける。
明らかに実力が違う、こっちは二倍の速さで動いているのになんで受け流せるんだ? 答えは簡単だ白金さんは普通の状態で僕の二倍速く動けるのだ。
「くそ、セカンド・アクセル!」
でも意識まで二倍ということはないはずだ。だったらこっちは意識も二倍にする。
「ッッッ--」
無言の気合とともに雷球を投げつける。それを白金さんが避ける、その避けた場所を今度は爆破する。
「よしっ!」
「甘いよ!」
完全に当たったと思ったがよけられていたらしい。
今度はこっちが避ける番だった。しかし白金さんも追ってくる。さらにまずいことにセカンド・アクセルも切れてしまった。……だったら。
「アルブス・アーラ!」
「え、使えたの!? だったらこっちも--アルブス・アーラ」
驚いてくれるのはいいが使うのは辞めて欲しかった。まあ、驚くのも無理はないだろう、この技は図書館に入り浸りテスト期間中なのに練習して使えるようにしたのだから!
ちなみにこの技、翼が生えて飛行速度が上がるだけなので白金さんの有利に変わり無い。
さて、どうしたもんか……。
「ハアッ!」
気合とともに白金さんの剣が迫ってくる。避けることには成功したが体勢を崩して蹴りを食らってしまう。
「ッ――」
鋭い痛みが体を突き抜けるが痛みを治す前に距離をとる。
「やるようになったね天野君」
「そりゃどうもっ!」
すぐに痛みを消し再度斬りかかる。
「アクア・アルマ」
白金さんがそう囁くと水で武器が形成される。更に力を加えているのだろうだんだんと水が氷っていく。
氷の剣を炎をまとわせた剣で砕く。しかしもう一方からリーヴスラシルが迫ってくる。
「セカンド・アクセル!」
ギリギリのところで技を使い受け止める。そして空いたほうの手に雷をまとわせ殴りかかる。
しかし白金さんも同じことを考えていたようで、拳同士がぶつかり激しい火花が散る。
そして雷に感電して数秒両者動けなくなるが僕のほうが技のこともあり早く回復する。
一気に距離を詰め大きく剣を振りかぶる。――しかしそれが間違いだった。当たる少し前に白金さんは回復しよけられてしまう。
もうこうなってはなかなか決着はつかないだろう。そして長くなれば経験の薄い僕が負けるのは分かりっきっている。
――だったら最後の手段を使うしかあるまい。出来ればもうちょと秘密にしておきたかったが……。
「サード・アクセル!」
最後の加速技だ。効果は自分の限界までの速さを実現させること。時間は今の僕では五秒くらいだ。
音を置き去りにし斬りかかる。これには流石の白金さんも完全には避けきれず少し服が破ける。
しかし服が少し破けただけで白金さんに当たったわけではない……。
だったらもっとスピードを上げればいいだけだ。
本当の限界までスピードを上げ光速で迫る。本来物体は光速では動けない。しかしスキエンティアを使うことで体をエネルギーの塊にし、光速での動きを可能にできる。
「ッ――!」
だがそれは体に大きく負荷がかかる。体がさけそうに痛い。
だがなんとかこらえ、そして剣を白金さんの首めがけて剣を振る。
――結果は僕が白金さんの首の少し手前で剣を止めて終わった。ただ僕の勝ちではない、白金さんの剣もまた僕の首のすぐそばにあったからだ。このまま行けば二人共首が落ちる。だからいいとこ引き分けだろう。