62話 《迷う鳥》と《淡い音》
――――長い間、悪夢を見ていた気がする。
出鱈目な温度を肌で感じて起き上がる。熱さと冷たさ、同時には成り立たないはずの感覚。
目をゆっくりと開ける。
――開けた瞬間に世界が歪んだ……。いや、正確にはそう感じた。
「あ、カズマやっと起きたね」
目の前には傷つき、それでもなお立っている翼と希美がいた。まるで僕を守るように――いや、僕を守って立っていた。
「ごめんなさい和真さん、出てきちゃいました」
何でもないことのように希美は言う。
でも、希美がやられたら作戦は失敗だ……。だけど、希美は全く悪くない。あのままでは確実にユグドラシルごとやられていた。そうしたらそれこそ御終いだ。
だから希美と翼は託したんだ。僕に……。
二人はもう力を全て使い切ったのだろう。体が、光となって消えていく。
でも二人は僕を信じきった目をして微笑んでいた。
皆、僕を信じて、後を託して、世界を託して、消えていった――――。
まるで今までのことが嘘のように……。全てを一瞬で失った。
もう、僕の願いは消えた。もう、成すべきことは消えた。
前からは絶望がこちらに向かって来ている。
もう、どうにもならない。
残りの力、全てを使えばもしかしたら別の世界に飛べるかも知れない。最高神は今ここにいて力を使ったはずだ。それにまだ慣れていない可能性もある。だとしたら世界は不安定のはずだ。近くの世界になら飛べる。
そうしたら、そこの生命の種を奪ってここに――。
正義と仲間。
どちらを拾う? どちらを捨てる?
頭がぐちゃぐちゃする。
僕はどうしたらいい……。




