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この世界で願いのために戦う僕の物語  作者: KOKOA
第六章 絶対者《ストゥルティ》
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56話 あたりまえの言葉

「ああ、おはよう」

 朝、起きて回復期から出ると士希が挨拶をしてくる。どうやらユグドラシルについてすぐに寝てしまったらしい。

 寝ぼけながらもなんとか返事をする。

「和真、今日からここに住めよ。やっと処理が終わったから、最後にご両親に挨拶だけ行こう」

 やだ、男前……。いや、まて。思考が停止する。まだ、寝ぼけているらしい。

「ん、どういうことだ? なにこの急展開」

 なんとか頭を回転させて状況整理をする。

「まあ、そうなるよな。一応、ここって極秘だから和真が外で暮らすのはよくないんだよ。だからここで暮らす処理をしていてやっと終わったっていうこと」

 ああ、確かに情報が漏れるのは怖いよな。本来、僕達は外に出ないでユグドラシルの中でのみ生活するべきだ……。

「ん? 情報守るためなら学校とかもダメじゃね?」

 それを言うと士希がコホンと咳払いをする。

「という、名目のもと処理をしただけ。外を出歩く権利は元々とってあるし。ただ、ここで暮らす理由としてそうしただけ」

 そこで納得する。外を出歩く権利は取ってるのに外で暮らすのはダメというのは変な話だ。辻褄が合わない。だからその処理をするのに時間がかかったんだろう。

 例えば、外を出歩く権利は持っているが外で生活するのはダメみたいな……。そうすると学校とかもアウトになりかねない。だから、生活の基準を決める。どこまでを生活というのか。そうやって辻褄合わせに時間を取られたんだろう。

 正直、学校はいらないが士希の頑張りを無駄にするのもあれなのでそこはグッと我慢する。

「じゃあ、準備できたら言ってくれ。僕も一緒に和真の家に行くから」

 ああ、と返事を仕掛けてやめる。

「いや、一人で行くよ。これは僕が終わらせる問題だし」

 そう言うと、士希は少しだけ笑ってから手をひらひら振って離れていく。

「わかった。じゃあ、気をつけてな。早く帰ってこいよ」

 



 家の扉を開ける。

 中に入ると咲が出てきて、袋を渡してくる。

「これに、あんたのもん入ってるから家には上がらないで」

 まあ、なんだ。最後だからといって僕の扱いが変わるわけではない。

「ああ、ありがとう」

 一応お礼は言っておく。咲は少し驚いたような顔をしたがすぐに冷めた目つきになってしまう。

「お父さんとお母さんからあんたに伝言。もう二度と家に近づくなって。あと、会う気もないから荷物を持って出て行けだって」

 それだけ言うと咲はリビングの方に隠れてしまった。

 なんだか最近は忙しかったからこの感じも懐かしい。まあ、考えてみれば咲からしたら本来はいないはずの兄がいて嫌な思いをしたのかもしれない。父さんも母さんも同じだ。子供がいなかったから引き取っただけで、生まれたら他人の子などどうでも良いのだろう。むしろめんどくさくて不快な思いもしただろう。

 だから、別にいいんだ。

 扉を開けて家を出る。

「…………。今までありがとうございました! お世話になりました!」

 少し迷ったがそれだけ言って、扉を閉める。




 ユグドラシルの中に入ると皆が待っていてくれた。

『おかえりなさい!』 

 ああ、今はこんなにも幸せなんだ。だったらいいじゃないか。

 そういえば家に帰っておかえりなんて言われたのは初めてかも知れない。

 ああ、こんな気分なんだな……。なんだか慣れてないから少し恥ずかしい。でも、凄く安心する。

 そんな当たり前のことさえ知らなかった。でも――今は知っている。

 僕はこれからここで暮らす。ここが僕の家だ。

 だったら言うべき言葉は一つだ――。

「ただいま!」

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