55話 世界を守る、弱き者
だが、今のは僕の全力を使った攻撃だ。今のが限界だ。――もうこの先はない。
僕に出来るのはここまでだ。
だけど、まだ僕達の攻撃は先がある。まだ限界には至っていない。
――――僕の後ろでグングニルを構えた奴がまだ残ってる。大丈夫。もう、冷静になっている。あいつが負けるわけがない。僕たちの勝ちだ。
「ロキ、これで終わりだ。僕は世界を守ってみせる!」
士希の持つ槍に光が集まる。異常なまでの力が槍に注がれている。神話で必中の特性を持つ槍、グングニル。士希はその槍に全力を注ぐ。制御するのも困難であろうその膨大な光。その光を完全に制御し、限界まで研ぎ澄ませる。
――――士希の手から放たれたその光はロキを穿った。
士希は倒れたロキの下まで歩いて行く。
「ああ、オーディン。お前のことはあの時に殺しておくべきだったな……。気分で物事を決めるのは俺の悪い癖だ……」
ロキの表情も士希の表情もここからでは見えない。
「ああ、あの時僕が死んでいればこうはならなかったな」
だけど二人の声はどこまでも穏やかで、まるで兄弟が何気ない会話をしているようだった。
ロキの体が少しずつ消えていく。
「じゃあな、ロキ……」
士希がそう言うとロキは最後に一言だけ残して消えていった。その言葉は小さくて聞こえなかったけど士希には聞こえたようだった。
士希が少しだけ離れたところに倒れている僕の横まで来て、手を差し伸べてくる。
「すまなかった……」
その手を思い切り掴み、立ち上がる。
「ああ、本当に何がさよならだ。冷や汗かいたわ」
声を張る元気もなかったが、なんとかそれだけは言葉になった。
士希はそれを聞いて小さく笑う。
「悪かったって」




