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この世界で願いのために戦う僕の物語  作者: KOKOA
第五章 雪解け《クレスクント》
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31話 死神

 その言葉を聞き、吉良が鎌を構えたまま立ち止まる。

「あら、どこかで会いましたか?」

「ええ、だってその鎌は十年前、私のお父さんとお母さんを殺していた人が持っていたもの」

「十年前……。ああ、あの時気まぐれで殺さなかった子供があなたなんですね。あの時のあなた、ただ震えるだけで泣きもしないいんですもの、つまらなかったですよ。今度は楽しませてくださいね?」

 吉良はそう言って嗜虐的な笑いを浮かべると鎌を一振りし、向かってきた。

 それを何とかかわす。クソッ! 雪を抱えたままでは戦えない。雪の方をチラリと見るとガタガタと震えていてとてもじゃないが戦える状態ではない。

 そこに吉良が鎌を振り下ろしてくる。それを避けきれないと判断し剣で受け止める。 

 しかし思った以上に吉良の力は強く、ジリジリと押されてしまう。

[和真! 今の状態を知らせてくれ!]

 そこに士希から頭の中に声が届く。

[吉良がいきなり現れて攻撃されている!]

[わかった。一旦雪とユグドラシル内へてレポートしてくれ!]

「ウィルトス!」

 力を底上げし、押し返す。そのまま吉良を吹き飛ばし、それとほぼ同時にテレポートする。




「ふぅ、何とか逃げ切れた……」

「大丈夫か?」

 ユグドラシル内のトレーニングルームにテレポートすると士希が駆け寄ってくる。

「ああ、何とか。それよりもなんで世界は止まらなかったんだ?」

 士希は一瞬思案した後、口を開いた。

「世界が止まるのはユグドラシルがアンノウンの出現を感知して結界を張るからなんだけど、今回は感知出来なかったんだと思う」

「そうか。ところで雪、怪我ないか?」

 治せることは知っているが、一応確認する。

「あ、うん……大丈夫……。ありがとう……」

「…………」

 僕はそれ以上何も聞けなかった。それを誤魔化すため、士希に話を振る。

「ところで今日呼ばれたんだが何か用事でもあったのか?」

「ああ、そうだった、吉良のことでいくつか分かったことがある。まず一つ目、あいつ自身がアンノウンというわけではなくて、アンノウンが吉良に寄生しているということ。次に二つ目、あいつは普段から力を使っているということ。最後に三つ目、一週間に最低一人は殺しているということ」

「一週間に一人って、そんなの大きな事件として報道されないのか?」

「いや、報道する前に報告が来たから、アンノウンの仕業だろうって言ったら隠蔽するって言ってた」

「言っちゃ悪いけど、ただの殺人事件でユグドラシルに報告が来るもんなのか?」

「いや、今回が特殊な事件だったから、報告が来たんだよ」

「特殊っていうと、体ごと消えているとか?」

「いや、むしろその逆で体はあるだ。何一つ傷の無い体が。まるで魂だけが消えてしまったような感じなんだ」

「まんまタナトス……死神ってことか」

「よく知ってるな」

 士希が驚いたように言う。

「まあ、ゲームとかによく出てくるしな」

「ああ、なるほど」

 僕がそう言うと士希は得心いったように頷く。

「まあ、今日は危ないしこっちに泊まっていけよ」

「ああ、ありがとう。そうさせてもらうよ」

 明日、僕は休みだが親は仕事なので起こしに僕の部屋まで来ることはないのでいなくても大丈夫だろう。しかも家に居たら家族も危なくなるかもしれない。ここは素直に泊まらせてもらおう。

「じゃあ、空いている個室を好きに使ってくれ。場所はわかるか?」

「ああ、大丈夫。その前に大浴場借りていいか?」

「ああ、いいよ。じゃ、お休み~」

「おう、ありがとう。お休み」

 トレーニングルームから離れ大浴場へ向かう。

 脱衣所で服を脱ぎ中に入ると広いのがよく分かる。存在は知っていたが使うのは初めてだ。

 とりあえず突っ立ててもしょうがないのでで体を洗う。流石にあんだけ動いた後だし汗を流したい。まあ、風呂もあるから一応浸かっとくか。決して大きい風呂に入るのワクワクとかそんな理由ではない。

 ザパー。とまでは行かないが少し溢れて溢れる水を見やりながら、しばらく風呂に浸かりシャワールームを後にする。

「ふぅ~、さっぱりした~」

 能力で着ていた服を綺麗にし、着替え、設置されていたドライヤーで髪を乾かし脱衣所から出る。

「あれ雪どうした?」

 外に出ると雪が壁に寄りかかっていた。

「あの……今日一緒の部屋で寝てもいい……?」

「あ、うん……」

 あ、やばい。思わず「うん」と言ってしまった。

 しかし、これはしょうがないことだと思う。同じくシャワーに入っていたのだろう、少し濡れている髪。何かに怯えたような潤んだ目。不安そうに軽く握られたパーカーの袖。これで断れるやつは人間ではない別の生物だ。

「ありがと……。じゃ、私の部屋に行こ」

 雪は少し明るく笑い、僕を寝室まで連れて行った。その部屋には大きいベッドが一つあった。雪は枕を右に寄せ、魔法で作った枕を左に置く。

「じゃあ、もう寝よっか」

 ん? 一緒の部屋とは言ってたけどベッドが一緒とは聞いてないよ? 

 だがここまで来て「あ、やっぱ他の所で寝るわ~」とは言えない。

 覚悟を決めて小さく「おじゃましま~す」と言いながらベッドに入る。

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