26話 怪我
「あ~れ~白金さん今日はどおしたんですか~? てかあの人に勉強でも運動でも負けてんじゃん」
松田が嘲りながら言う。
「おい、松田! お前いいかげんにしろよ!」
僕は基本めんどくさいので人に切れることはない。だが今回は別だ。
「はぁ? お前調子に乗ってないか?」
「あぁ!?」
松田が拳を振り上げ殴りかかってくる。突然のことだったので反応が遅れる。だが、スキエンティアさえ使ってしまえば――だが使う必要はなかった。なぜなら飛び込んできた雪に拳はあたり僕に当たることはなかったからだ。
そのまま雪は黒板の角に頭をぶつけてしまう。雪の額には血が流れていた。
「松田!!」
僕は拳に力を溜め殴りかか――
「和真君やめて!」
――ギリギリのところで拳を止める。
「クソッ! 雪保健室に行くぞ。おぶうから捕まれ」
「うん、ありがとう……」
「僕もついていくよ」
教室からとりあえず出て行く。教室の中はざわついていた。
保健室に続く階段まで行く。ここなら人もいないしいいだろう。そこで一旦雪を下ろす。
「士希、スキエンティア使ってもいいよな?」
「ああ」
士希の承諾を得ると同時に雪の傷を治す。これなら傷も残らないだろう。
「……ありがとね」
「こんぐらい別にいいよ。よし治った。後は不自然にならないよう一応保険室行っとくか」
「でも傷治ったしなんで来たの? ってならない?」
「実は最近、僕は幻術の特訓もしてたんだ」
「ああ、保健室の先生にかけるんだな」
士希が呆れたように言ってくる。
「他に方法無いだろ」
「ま、まあな」
「じゃあ、もっかいおぶうから捕まって」
「ホントごめんね」
「いいって」
保険室に入ると薬品の匂いが鼻を満たす。
「あらどうかしたの?」
「ちょっと怪我しちゃって」
先生が僕達に目を向けた瞬間。まず先生の目線を僕に一点集中させる。そしてそこから先生に僕のイメージを送れるよう魔法をかける。後は簡単だ雪が怪我をしているイメージを送り続ければいい。
にしてもまだイライラが収まらない。何なんだ松田のやつ。
そんなことを考えていると保健室の先生がしゃべりだした。
「とりあえず病院行きましょうか」
ん? 病院? あ、それもそうか頭から血が出てるんだし……。
でも病院まで行ったらお医者さんと看護師さん二人は最低いるし保健室の先生にもかけ続けなければならない。正直きつすぎる。
チラと士希の方を見ると何かを考えていた。て言うか冷や汗垂らしてた……。
[おい士希どうする?]
[ど、どうしよう……?]
まじか……。戦闘の時はすごいのに……。これは解決策出きないパターンだ……。僕がお医者さんにも魔法をかけよう。
「じゃあ、白金さん行くわよ」
ちなみに保険室の先生は女です。まあ、どうでもいいんですけど。
「あの、僕たちもついて行っていいですか?」
[おい和真、僕たちがついて行ってどうすんだ?]
[僕が医者に魔法をかけるよ……]
[わかった、お願いするよ]
よし! これでなんとかなるかもしれない。
「え~とでは頭見せてもらいますよ」
診察室にもなんとか入れてもらえたので早速先生に魔法をかけたいと思います。ちなみに先生は男です。以上どうでもいい情報をお伝えしました。
え~と、まずはさっきと同じように僕に視線を一点集中させる。そしてまたイメージを送る。
次にお医者さんの後ろにいた看護師さんにも急いでイメージを送る。
頭に巻いてあった包帯が解けるギリギリのところで魔法がかかる。ギリギリ間に合った……。
「あ~ちょっと額切っちゃってますね。一応縫っときましょう」
「「「え!?」」」
驚いて三人の声が重なる。
だが保健室の先生も同じぐらい驚いて言ってくる。
「なにを驚いているの? 額切ったんだから当たり前でしょう」
ですよね~。
「まあ、痛くないようにするんで安心してください」
お医者さんが苦笑しながら言う。そうじゃない。そうじゃないんです、先生。
[ゆ、雪どうする?]
[しょうがないから素直に縫われるよ」
[なんかごめん]
[大丈夫だよ。ありがとね」
そして全てが終わったあとぐったりとして一応学校に戻ってきた。
ちなみに雪は今度抜鈎することになっているが、もう抜鈎を自分の手で済ましており。今度行くときはまた魔法をかけることになっている。それに僕たちもついて行こうとしたが断られた。
まあ、とりあえず傷跡も消したしこの事件のことは早く忘れよう。
教室に戻ると松田がいた。
「あの、白金さん……」
「ん? なあに?」
「あの……ごめんなさい!!」
松田が深々と頭を下げる。
「それから天野もごめん」
今度は僕の方を向いて頭を下げてくる。
驚いて僕と雪は顔を見合わせる。まあ、答えは決まっている。。
「うん、いいよ」
「僕も別にいいよ。僕も怒鳴って悪かったな」
「ありがとう」
それだけを言うと足早に松田は帰って行った。
あ、そういえば僕も雪に謝らないといけないな。
「雪、庇ってくれてありがとう、それからごめん」
「ううん、事の発端は私だもん。こっちこそありがとね!」
そう言って雪は優しく微笑むのだった。




