20話 二人の自分
とりあえず時間を稼ぐことに集中しよう。そうすれば雪も戦いにまた加われるはずだ。
「~~~~~ウィルトス」
そうつぶやきペルソナに斬りかかる。
「セイッ!」
気合とともに剣を振り下ろす。だが避けられてしまう。が、そんなのは想定済みだ。そのまま剣を打ち上げる。これは予想外だったらしくペルソナに少し傷を与えることができた。そこから更に蹴りを繰り出す。だが、これは避けられてしまう。
『ハァッ!』
今度はペルソナが攻撃を仕掛けてきた。まずは横から来る剣を避ける。そして次に来るであろう追加攻撃を意識しつつ呪文を唱え始める。
「~~~~~――」
ペルソナが拳を繰り出してくるのでそれを避けつつ魔法を発動させる。
「アルキュミア!」
これは錬金術だ。炎と風を作り出し呪文を唱えながらその二つを合わせる。そうすることによって通常より強力な合わせ技ができる。
大きくなった炎の玉はペルソナを襲う。これは流石によけられないだろう。だが、そんな僕の考えは甘かった。
『サード・アクセル!』
その一言と共にペルソナは玉を大きく迂回して避ける。
これでようやくわかった。コイツのは僕のコピーではない。実際、コピーだったら僕の出していない技は使えないはずなのだ。なのにコイツは僕のまだ使っていないサード・アクセルを使った。だけど戦闘能力が同じということはない。戦闘能力は明らかに相手の方が上だ。
要するに今の僕では歯が立たない。
それを意識してしまうとどっと疲れが押し寄せてきた。
雪の方をチラと見ると心配そうな顔でこちらを見ていた。まあ、雪が回復するまではなんとか持ちこたえよう。
「ハアアアァァッ!!」
気合とともにペルソナとの距離を詰め斬りかかる。だが――
『何度やっても無駄だ』
――避けられる。そこまでは今までと変わらなかった。だが違ったのはそこからだ。ペルソナは避けた後、僕に剣を深々と突き刺したのだった。
「ガッ!」
そして僕はそのまま地面へと落ちていった――。
――目を開けると雪が戦っていた。
なんとか動こうと体に力を入れようとする。が、動かない。
自分の体を見下ろすと傷は治っていた。恐らく雪が治してくれたのだろう。
さて、これからどうしたものか。体は動かないし戦況は絶望的だし。
とりあえず、さっさと体が動くよう休もう。
空を見上げるとペルソナと雪が戦っていた。だが、なんだろう? 違和感がある。普通の戦いは互の戦い方が分かっていないだがあの二人の戦い方は互いに相手の相手の戦い方を知っているかのような戦い方だ。だが、まだ違和感がある。考えろ……考えろ……。
そうだ、ペルソナは僕の技を使えているだけではない。戦い方も似ているんだ。つまり違和感の正体はペルソナと雪の戦いが僕と雪の戦いに似ていることにあるんだ。そしてたどり着いたひとつの可能性。
[士希、アンノウンって未来から来ることってあるか?]
[……あるよ]
ここで一つの疑問が生まれる。それはアンノウンとは何か? ということである。 まあ、それはこの戦いが終わった後に聞こう。それよりも――
[じゃあ、あいつが僕という可能性は?]
[……十分ありえるだろうね]
「そうか……。親を殺したのは自分自身だったってわけか……。で、今雪を傷つけてるのも僕ってわけか……」
頭が一瞬真っ白になる。だがその直後僕の頭の中は一つの考えでいっぱいになった。
あいつは僕が殺らなきゃ。
[おい、和真しっかりしろ!]
「あいつは僕が殺らないと! 僕一人でやらないとダメなんだ!」
[和真! まだお前回復してないだろ! 無理だ引き返せ!]
何か喋っているのはわかったが頭に入ってこなかった。
「雪、こいつは僕が殺る!」
「和真君まだ無理なんでしょ!? 早く休んでて!」
「士希から聞いたのか……。でも大丈夫……。下がっていてくれ」
そう言うと雪は心配そうな顔をしながらも素直に下がってくれた。
『お前はもう戦えないはずだ! 邪魔をするな!』
「おいおい、自分に何を言ってるんだ?」
『何?」
「お前、本当は俺なんだろ?」
「………」
長い沈黙の後ペルソナは仮面を取る。そしてよく見慣れた顔が出てくる。
「……気づいてしまったか」
「何故お前は俺達に攻撃してくる?」
「……それは生命の種を手に入れるためだ。俺の世界では生命の種が壊されてしまった。だからこの世界の生命の種を手に入れるため残りの力を全て使ってこちらの世界に来たのだ。まあ、こちらでしばらく休んだら力は回復したのだがな」
クソ、こいつも目当ては生命の種かよ……。
「だったら何故最初に攻めてきた時に生命の種を奪わなかった?」
「もうあの時はあれ以上戦えそうになかったからな」
「あれ以上? もう戦えるやつはいなかっただろう?」
「…………。もうお喋りはおしまいだ」
「まあ、僕達も生命の種を渡すわけにはいかないな」
『ならば、力ずくで奪い取るのみよ』
もうこうなったら何が何でも倒すしかない。が、斬りかかろうとするとペルソナは少し距離を取った。
そしていきなり呪文を詠唱し始めた。
「~~~~~~~~~~デウス・エクス・マキナ」
そして次の瞬間光が視界を満たした。




