19話 ペルソナ
家を出るとすぐに違和感を感じた。
「雪これって……」
「アンノウンだね」
正直またかと最初は思った。だが今回は何かが違う。
[和真、雪アンノウンだ! すぐに向かってくれ! 多分今回のやつはかなりやばい……」
[識別名はなんだ?」
[それがわからないんだ]
[アサシンと同じパターンか?]
[いや、あれは姿が見えれば識別名が写った。でも今回は姿が見えているのに識別名が見えないんだ]
「で、それがあいつか……」
走っていると黒いコートに身を包み仮面をつけたアンノウンが見えてきた。
「ん?あいつどこかで見たことあるぞ……」
記憶をたどると夢に出てきたアンノウンだという事が分かった。
「おいお前、谷道空と美久を知っているだろ……」
『ああ、知っている。俺が殺した戦士達だ」
「僕はその戦士達の息子、谷道和真だ。お前は?」
『俺は……そうだな、ペルソナとでも呼んでもらおうか』
「そうか、ならペルソナ! 仇討たせてもらうぞ!」
「和真君行くよ!」
「おう!」
まずは、僕から突っ込んでいく。大きく振り被り、渾身の力を込めペルソナに叩き込む。
だがあっさりと避けられてしまう。だがそこに雪が斬りかかる。これは当た――
『リーヴ』
――え?
攻撃は当たらなかった。だが驚いたのはそこではない。奴が持っている剣だ。あれは僕と同じ剣だ。そんなことはありえない。
雪の方を見ると雪も目を丸くしていた。
何なんだこいつ……。
[おい、士希どういうことだ!?]
[…………]
[おい、士希!]
「悪いがこいつの正体はわからない……]
[クソッ! なんなんだこいつ……]
[とにかく戦いながらこいつの正体を探ろう。そのためにもこいつの弱点を探ろう]
コイツの弱点……。ってなんだ?
『かかって来ないのならこちらから行くぞ!』
迫ってくる剣先を避けながら尚も考えを巡らせる。
そうだ! 剣は同じでも技まで一緒ということはないだろう。
「ファースト・アクセル!」
『ファースト・アクセル!』
嘘~ん。もうダメなんじゃないかな。倍以上になったスピードの中で若干諦めモードに入る。
ペルソナと打ち合っていると、不意に寒気が訪れた。そして一瞬の間にそれは痛みへと変わった。
「和真君避けて! 絶対零度!」
直ぐにその場から離れる。
振り返ってみると周りにあった家などが全て凍っていた。そしてペルソナも凍りづけとなっていた。
だが――ピシピシと氷に亀裂の入る音がする。
そしてペルソナは何事もなかったかのように動き始めた。
「本当何なんだコイツ!」
少し苛立ってくる。流石にこうも強すぎると話にならない。
絶対零度は雪の奥の手なのだ。それをこうも簡単に壊すとはどうかしてる。
「クソッ! 何か手はないのか……」
ん? そう言えばなんで雪の技は真似しないんだ? 僕の技は使えても雪の技は無理なのか? まあ、なんにせよ試す価値はある。
[雪、何かオリジナルの技を使ってみてくれ]
[わかった]
「シレオ・ソル!」
そう雪が唱えると急に冷えてきた。ペルソナを見るとペルソナの周りだけ吹雪となっていた。おそらく絶対零度が一撃必殺の魔法ならこれは徐々に相手の力を削る魔法なのだろう。
だが、吹雪が止むとまたもや何事もなかったかのようにペルソナは姿を見せた。もう嫌こいつ……。
だが少し分かったことがある。まず一つ目、僕の技は使えても雪の技は使えないということ。そして二つ目、雪の技は使えなくても効かないということ。……多分あっているはずだ。
それにしても絶望的すぎんだろこれ。
『この程度か? 和真、雪』
「まだま……おい、お前今なんて言った?」
おかしいぞコイツ。
「お前の前で雪の名前を出した覚えはないが?」
「あ、確かに」
『…………』
そう、こいつの前で「雪」と呼んだ覚えはない。現にこいつは黙ってしまった。
「お前はなにものだ?」
『…………』
「答えろ!!」
『…………』
「答えるつもりはないようだな。だったら倒した後にゆっくりと調べさせてもらう!」
『倒せるのだったらな!』
再び剣を打ち付け合う。そしてつばぜり合いへとなった。だが時間が経つにつれて少しずつ押されて来ている。
クソッこのままだとやられる! だがどうすれば……。
ふと一つの魔法が頭をよぎった。魔術書では見たことがないが夢の中では見たことのある魔法だ。
「~~~~~ウィルトス!」
急いで呪文を詠唱し魔法を発動させる。すると力が溢れるような感覚が訪れる。
「うおおおぉぉ!!」
ギリギリ押し返すことができた。
再び離れ間合いを取る。相手の剣が届かないギリギリの位置だ。その位置を保ったままウィルトスを解除し、荒くなった息を整える。
「今度は私の番よ!」
雪がペルソナに向かって行く。
「セイッ!」
気合とともに放たれた雪の刀は目で追うことができなかった。
しかし、それでもペルソナに当たることはなかった。
『ッ!』
そしてペルソナは無言の気合とともに雪のことを蹴り飛ばした。
雪は地面に叩きつけられ苦悶の表情をする。
「雪大丈夫か!?」
「うん……大丈夫……」
雪は立ち上がると敵をまっすぐと見つめていた。だが――
「雪は少し休んでいてくれ」
雪はだいぶ疲れてきている。それはそうだ絶対零度まで使ったのだから。それにシレオ・ソルもおそらく禁術だ。だとしたら、もう魔力はもうゼロに等しいはずだ。だったらこの辺で休んでもらったほうがいいだろう。
「でも!」
[もう魔力ないんだろ]
「……ごめん、ありがとう。少し休ませてもらうね」
「おいペルソナ、こっちに来い」
雪に被害が及ばぬよう空に誘導する。
『……いいだろう』
さて、これからどうするかな……。




