18話 家の探索
夜風が心地よい。腕時計を見るともう一八時だった。
「で、外に呼び出すってことは何かようなのか?」
「う~ん、特別な用はないんだけど少し話そうと思って」
「そうか……」
「和真君は死ぬのが怖い?」
「えっ?」
「私は怖いんだ、すごく怖い。でもねそれ以上に嬉しいの、皆と戦えることが、皆を守れることが」
「僕も戦うのは少し怖いけど、この力を持てるのは嬉しいかな」
「やっぱ特別ってなんだか嬉しいよね!」
さて話もこれぐらいにしないとな、もう夜遅くだし帰らなくちゃな。
「そういえば和真君、天野さんの家って見たくない?」
「えっ!?」
「さっき士希に聞いたんだけどまだ家があるんだって」
「……明日連れてってくれ」
「分かった、また明日ね」
放課後、雪と歩いて天野家を目指す。
天野家は学校から少し離れている。その長い距離を今日は二人で歩いているのだ。嫌でも緊張してしまう。だが雪の方はそうでもないようで淡々と歩いていた。
そんな緊張の時間をしばらく過ごした後、雪が声を上げた。
「あれだよ」
雪が指を指した方向には人気のない家があった。
「あれが……」
家の敷地内に入りすぐのところに扉があった。だが、ここまできてなんだが鍵はかかってないのか?
ドアノブに手をかけ引くとやはり鍵がかかっていた。
「何やってるの?」
「いや鍵がかかってて」
「え、そんなの……」
そう言いつつ雪はドアノブに手をかけ――そのまま開けた……。
「……え?」
「こんなの魔法で開けられるよ?」
なんかこの子やたらといい顔でとんでもないこと言い始めましたよ……。
とりあえず中に入る。すると靴箱の上に一枚の写真立てがあった。それを見ると赤ちゃんの写ってる家族写真が収まっていた。
「これ僕か……?」
「多分そうじゃないかな? それより中に入ろうよ」
「あ、うん。お邪魔します」
「お邪魔します」
歩くたびギシギシと音がなる。だいぶ古い家なのだろう。まあ、少なくとも一五年は放置されてるんだしな。
中に入ってみて分かったが、きちんと家具など整理されていて基本僕の親は綺麗好きらしい。まあ、ほこりはすごいんだけどね。
なんとなくだけど記憶がある気がする。ここは魔法で思い出そう。
記憶をたどっていく。たしか今の親に引き取られたのが一切の時だからそれ以前まで記憶をたどればいいはずだ。
ああ、そうだ思い出した確かこの階段を上がっていくと僕の部屋になるはずだった部屋があるはずだ。
部屋の中に入ると小さい頃遊んだおもちゃなどがあった。まあ、おもちゃといってもガラガラとかなんだけどね。
次に二回にある両親の部屋に入る。
ここは何かあるだろ。そう思いガサガサとタンスなどを漁るが服などしか出てこない。
だが、ふと机の上にある本が目に入った。本を手に取るとなんとなく分かった。これは魔術書だ。中を見ていくと見たこともない魔法がたくさん書いてあった。多分これは両親が生み出した魔法なのだろう。とりあえずこれは持ち帰ろう。
次はリビングを見てみるかな。
今度はリビングにあった本棚を探索することにする。しっかしラノベばっかりだな。何? 僕のラノベ好きは親譲りなの?
「見事にラノベばっかりだね」
「なんか恥ずかしいなこれ」
「和真君もラノベ好きだもんね」
なにこれ滅茶苦茶恥ずかしいんだけど! 親の趣味全開じゃないこの部屋?
しばらく探索を進めると一冊のアルバムが見つかった。中にはやはり三人の家族が写っている写真が何枚も入っていた。
「父さん……母さん……」
「和真君……」
アルバムの最後のページを開くとパサリと何かが落ちた。
「ん? これなんだ?」
「どうかした?」
「なんか手紙が挟まってた」
手紙を開くとそこにはこう書かれていた。
「和真へ。今この手紙を見ているということは私たちが死んでいるということでしょう。そして和真がユグドラシルのメンバーに加わっているということなのでしょう。できれば私たちはあなたに戦って欲しくはありません。ですがあなたのやりたいことなら止めません。頑張ってください。母と父より」
そしてもう一枚手紙があった。
「インペリウムについて――」
ん? インペリウム?
「雪これって!?」
「インペリウムについてだ!」
続きにはこう書いてあった。
「――インペリウムを使うには自分を信じること以外にもう一つ条件がある。それは自分の願いを明確に持ち、それを叶えようとする意思を持つことだ」
なるほどどうりで使えないわけだ……。そもそも条件が満たされていなかったわけだし。だが願いを明確に持つとはどういうことだ? ただこうなればいいな、と思っているだけではだめなのか?
……まあいい、とりあえずユグドラシルに戻って練習をしよう。こんだけ色々なものが見つかれば上出来だし、アルバムだけでも十分だ。
「早速ユグドラシルに戻って練習しようぜ」
「もう探索はいいの?」
「うん、アルバムだけでも十分だ」
「じゃあ、行こうか」
また玄関まで戻りドアノブに手をかけ、家とさよならをする。
まあ、またいつか来よう。




