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この世界で願いのために戦う僕の物語  作者: KOKOA
第四章 願い《ホープ》
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17話 残酷な現実

「ああ、ああぁぁぁっ!!」

 美久の叫びが響く。

 空は胸を刺し貫かれたあと地面にゆっくりと置かれた。そして美久は敵の前なのにすぐに空のそばに行き回復をする。

 だがいくら回復魔法を使っても空が目を覚ますことはなかった。

「嫌だ、嫌だよぅ空ー!! 死んじゃやだよー!!」

 血が溢れ出す胸に顔を押し付け尚も叫び続ける。

 美久は立ち上がると敵をまっすぐ睨みつけ剣を握り直す。

「~~~~~ウィルトス!!」

 先ほどの様に長い呪文詠唱を終え魔法を発動する。

 魔法は呪文が長いほど魂は削られやすくなる。だが美久は戦い始めて二回目なのに長い呪文を既に二回も唱えている。いや、僕が知らないだけでもっとかも知れない。恐らくは生き抜くことを諦め相打ちを狙っているのだろう。

 美久の周りが光で満たされる。先程使った魔法は自分の力を底上げする魔法なのだろう。

「はあぁぁぁっ!」

 気合とともに斬りかかる。

 だがそれはよけられ逆に敵の蹴りを腹に受けてしまう。

「うっっ」

 顔を歪める美久。

 こんな戦い方ではもう数分と持たないだろう。だが、まだ美久は諦めていなかった。

 腹をさすりながら剣を構える。もう回復する力も残っていないのだろう。

「ロスト・タイム!」

 その瞬間時が止まる。だが、敵は止まらない。そのまま敵と美久は互いに突っ込んでいきつばぜり合いが始まる。そのつばぜり合いは敵の勝ちだった。そして美久は剣を吹き飛ばされてしまった。そして敵は美久の腹に剣を深々と突き刺すのだった。

「かはっ……」

『美久といったか、強かったぞ』

「そう? あり……が……と……」

 ――もう既に美久の目に光は宿っていなかった。ただ虚ろな目で虚空を見つめていた。

 敵は美久を空の隣に並べ虚空に消えた。

『さらばだ、美久、空』

 ――敵が去った後、美久と空だけが残されていた。音もない悲しい世界だ。でも美久は満足そうな顔をしていた。空も苦しそうな顔ではなく安らかな顔をして眠っているようだった。

「ねぇ、空これで良かったんだよね……。私は人生に満足してるよ……。ただ和真のことは心配かな……。頑張って生きてね……和真……」

 ――それだけを言い残して美久も永遠の眠りに就いた。




 ――朝日が差し込んでくる。目を開けると視界が霞んでいた。

「泣いていたのか僕……」

 目元をグシグシと拭って学校に行く準備をする。

 士希にあわなくては。

 今日見た夢はこの前見た夢の続きなのだろう。そしてあの夢が本当だった場合僕の親はアンノウンに殺されたことになる。

「おはよう和真」

 後ろから士希に声をかけられる。

「おはよう、士希聞きたいことがあるんだけど、いいか?」

「…………。分かった、でも放課後にしよう」

 僕達の様子を後ろから心配そうに雪が見ていた。

「その話って私が聞いてもいい話?」

 雪が真剣な顔で聞いてくる。

「ああ、別にいいよ」

「とりあえず放課後ね」

 その後席に着き作業をするようにテストを終わらせる。

  ――放課後になった。あんまり集中出来なかった。

「和真、行こうぜ」

「ああ」

 ユグドラシルまで無言で歩いていく。

 ユグドラシルに入り勉強などでお世話になった部屋に入る。

「で、話ってなんだ?」

「……士希、16年まえアンノウンとの戦いで死んだ人っているか?」

「……答えなきゃダメか?」

「ああ、頼む」

「……いるよ。天野空と天野美久、和真のご両親だ」

「……そうか」

「なんで分かったんだ?」

「夢で見てな。で、僕の親を殺したアンノウンは倒したのか?」

「いや、まだだ」

 ということはまだ仇を取るチャンスがあるということだ。

「和真君?」

 雪に声をかけられハッとする。どうやら少し呆けていたようだ。

「ありがとう士希」

「いや、ごめん最初に話しておくべきだった」

「いやいいよ。今聞けただけでも十分だ」

「じゃ、ちょっと図書室行ってくるな」

 それだけを言い残して部屋を出る。

 テクテクと一人で図書室に向かう。 

 図書館に着きこの前読みたかった本を探して本を開く。

 呪文の本だ。

 とにかく今は強くなりたい。この前、雪が使っていたような強力な魔法が必要だ。

 とりあえず一ページ目から読んでいく。本にはこう書いてあった。

「まず、魔法を使うにあたって。魔法は様々な種類があり自分に合うものそうでないものに別れる。自分に合うものは大きな力になるが合わない魔法は自分を不利な状況に置きかねない。

 次に自分に合う魔法の見つけ方だが、兎に角様々な魔法を試して一番合うものを見つけろとしか言えない」

 はぁ、最初の数行を読んだだけだが魔法は練習あるのみなのかもしれない。まあ、兎に角読み進めれば何かわかるかも知れない。

「ね、和真君」

「うわぁ! なんだ雪か」

 驚いて後ろを向くと雪がいた。かなり長いあいだ本を読んでいたらしい。

「何回読んでも返事してくれないんだもん」

 頬を膨らませながら雪が言ってくる。

「ごめん、ごめん。で、なんか用か?」

「あ、うん。ちょっと外行って話さない?」

「いいよ。じゃあ、行こうか」

 二人で無言のままユグドラシルの外に出る。


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