エピソード9
空の声の片瀬さんが、昔、薬で眠っていた私と結ばれていた事がある、というのでした。
エピソード9
夫・・・・・・この地球上で僕がいたいのは妻の隣だけだ。
妻・・・・・・こうして、私の人生に片瀬さんへの片思いが訪れた。そして、ある日、ボーとしていると空から片瀬さんの声が聞こえてきて、また私の事を教育するのかと思ったら、片瀬さんは
「昔、僕と結ばれていたのを貴方は覚えていますか。」
と言ってきた。かつてのイケメン職員にそんな事を言われて、物凄く驚いて
「えぇー。」
と心の中で叫ぶのでした。
「どういう事ですか。」
と声に聞くと、
「僕が田舎から出てきたばかりで、まだお洒落を知らなかった頃、薬で眠った百合子さんとしたんですよ。」
「そして、再会してからずっと百合子さんが好きでした。」
と片瀬さんが言ってくるのです。片瀬さんはイケてない時、女上司に自分の悩みを相談して、その女上司は夫の許可をとって、眠っている私を差し出したとの事でした。
それより、ずっと教育係と思っていた人が私を好きだなんて・・・と思いつつ頭は片瀬さんの事で一杯になるのでした。そして、病院のお別れ会の時、写真を取らしてもらわなかった事を物凄く後悔したのでした。
更に私の空の世界は忙しく、羽根さんと野谷さんとも会話の日々でした。
きっかけは何だか分からないけど、ついに私は羽根さんと野谷さんに自分の気持ちを言うのでした。そんな私に野谷さんは優しく
「そうか・・・。」
と身を引いてくれたのですが、大変だったのは羽根さんで
「百合子どうしてだよ。俺の事もう忘れたのかよ。」
と声で詰め寄ってきたのでした。私は一生懸命
「ごめんなさい、ごめんなさい。」
と誤り片瀬さんとの恋を祝福してもらおうとしたのでした。
そして、季節は夏から秋になったが、片瀬さんのラブ・ストーリーなんて現実にはなく、あの羽根さんと野谷さんとも病院に行かなくなったので会う事はなくなりました。
空の声は何時も現実にはならない・・・なのに何故私は恋する事を止める事は出来ないのだろうか・・・。現実に裏切られながらも、私は今日も恋をするのでした。さよなら、私はどの人もそれぞれ、愛してた・・・。何時か息を引き取る時、私は貴方達の事を思い出すのでしょう。さよなら・・・。
夫・・・・・・あれから4年の月日が流れた。妻は2年前に心臓の病で他界している。僕の今は妻とともにいる。妻のいた日々を抱えている僕と妻を知らない今を生きている人々とどちらが本当の世界なのだろうか。
今でも、彼女を僕は愛している。
片瀬さんを好きになった私は、羽根さんと野谷さんに自分の気持ちを言うのでした。