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見える

 最近既視感が酷い。いや、既視感というよりは少し先の「未来」が見えると言った方がいいのだろうか。それも強制的に、だ。未来が見えるなんて便利じゃないか、と人はいうかもしれない。しかしそれは自由に見えるから便利なのであって強制的に見えてしまったら何も面白くない。人生がつまらなくなってしまうのだ。全く便利でないわけではない。最近はそれを利用してたりもする。しかし友人と話したり遊んだり、どうなってしまうかわかってしまうから価値が半減してしまうのだ。そんな人生面白くない。

「はぁ……」

 最近は溜め息が増えた。口を開けば溜め息ばかりというのはこのような状況をいうのかと客観的に見ずとも思うようになってしまった。

「……ッ?!」

 無意識的に一瞬浮かんだ未来はテレビでよく見かける砂嵐。

(未来が……見えなかった? まさか……そんなことが……)

 有り得ない。今までこんなことは一度もなかった。

(とにかく、俺は今何を考えたんだ……)

しばらく逡巡してから思い出した事は、

――――――学校に行く――――


 時刻は夜。先まで着ていたジャージ類は脱ぎ黒いTシャツに薄手の黒いジャケット、黒っぽいジーンズに着替えてある。まだ夜は少し寒い春先。高校生が一人で外出していい時間を当に過ぎた12時近く。少年は自分が通う入学したての学校へと向かっていた。ようやく慣れ始めた杉並木通りは昼間とは打って変わって寂しげな雰囲気を発している。

 遠くに学校が見え始めたころ、ある異変に気付く。学校が薄いピンクのもやがかかっているのだ。しかも少しばかり発光しているようにも見える。

 未だに見えない未来に若干の不安を覚えつつのこの光景に少年は更なる不安と恐怖心を覚え始めた。しかしその感情も好奇心には勝らず、少年はそのまま歩き続けた。

 それから数分、少年はもやのふもとにたどり着いた。正門のわきには人が一人通れる通路があり、そこからもやを突き抜けた。もやの中の視界は開けていた。もやは覆われていた形である。それにピンクのもやは発光しているせいか中はやけに明るかった。気味悪さを感じながら少年はグラウンドの方に足を向けていた。

 グラウンドには二つの人影と何に使っているかわからない大きさの違う装置が二つ。もしかしたら一つはこのもやの発生装置かもしれない。

「お、本当に来やがった。ボスの戯言かなんかだと思っていたがな」

 気配に気づいたのか、少年から遠く、朝礼台に座っていた二人は乾いた笑みと汚い笑い声をあげた。

「さあ、お仕事開始といきますか」

 瞬間、一人は高速で上に飛び上がり、一人は少年に向けて駆け出した。少年は何を言っているかわからないようで、その場に立ち尽くしている。困惑しているそのコンマ数秒の間にその一人は少年の目の前に立っていた。そのたった一瞬の出来事に少年は目が零れ落ちそうになるほどに見開いた。

「お前には何の罪もないがボスの命令でね、死んでもらうから」

 骨ばった顔に髪をツンツンに立たせた青年は表情一つ変えずに死んだような一重の目で少年を見下し言った。この吐き出された言葉は少年を更なる混乱に陥れる。

(……? 何言ってやがんだこいつ……? 殺す……だって? いきなり、そんな馬鹿なっ……)

 危機感なんて当然あるわけがない。いくら特異な状況だからと言っていきなり殺されるなんてさすがに思いはしないだろう。しかしそれが本意だということはすぐにわかってしまった。何故ならそいつはいきなりナイフを取り出したからである。

「ちょ、ちょっと待て。な、なんで俺がいきなり殺されなきゃならないんだ!!」

 体の震えと全身から湧き出す冷や汗が止まらない。今の台詞なんてよく喋れたものだ。

「そんな事知らなくていい。とっとと、死ね!」

 ナイフは振り下ろされた。少年の心臓めがけ。恐怖のあまり目をつぶる。流れる時間がとてもスロー。ドラマであるようなそんな感じ。あれはやりすぎた演出だと思っていたが本当に起きるようだ。

 ――流れること数秒、痛み、感触、音、それらが何も変わらない。恐る恐る目を開けてみるとそこには見たこともない世界が広がっていた。


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