第七話 一.そして去りゆく日
新潟の実家へ帰ると告白したその翌日のこと。最後の日曜日を無駄に過ごすまいと、オレは日頃からお世話になり、慣れ親しんだ各スポットを散策することにした。
「山茶花中央公園」や「山百合河川敷公園」を渡り歩き、いつもの商店街や最寄駅周辺、そして、駅東口アーケードといった思い出の地を目に焼き付けながら見て回った。
たった三カ月間滞在しただけの東京の街。過去に一度も実家を離れたことがなかったオレにとって、この街が第二の故郷になったことは言うまでもないだろう。
「・・・そろそろ時間かな。」
オレは腕時計の時刻を確かめる。時計のデジタル表示は、午後5時を告げたばかりだった。
昨日の夜、親しくお付き合いしてくれた「串焼き浜木綿」にも挨拶を済ませていたオレ。するとマスターが、このままお別れじゃ忍びないからと、本日特別に営業してくれることになっていた。
貸切にしてくれるばかりか、生ビール一杯のサービス付きとあっては、このオレも断るに断り切れない。マスターの粋な計らいに感謝しつつ、オレは日暮れにはまだ早い時間に、お客が誰もいないひっそりとした浜木綿の暖簾を潜っていた。
「お、マサくん、いらっしゃい。」
「あ、いらっしゃい。さぁさぁさぁ、こっちに座って。」
マスターと従業員の紗依子さんが、照れ笑いを浮かべるオレを気持ちよく出迎えてくれた。しかしいつもと違って、声色にはわずかながらに寂しさが感じられた。
「マスター、紗依子さん。本来はお休みなのに、オレにために申し訳ありません。」
気にしない、気にしないといったジェスチャーをするマスター。それに同意するように、紗依子さんも微笑みながら頭を横に振っていた。
オレが控え目ながらもカウンター席に腰掛けると、それを見越していたかのように、マスターが小料理、紗依子さんが生ビールでこのオレをもてなしてくれた。
「マサくんが帰っちゃうの、やっぱり寂しいねー。大切な常連客が減っちゃうもんなぁ。」
「もー、マスター、またそれですか?マサくんだって、帰りたくて帰るわけじゃないんですよ。」
惜しむ思いを顔色に映しつつ、そんな言い合いしていたマスターと紗依子さん。夫婦漫才のような二人のやり取りが拝めなくなると思うと、このオレも残念な気持ちでいっぱいだった。
「でも、マサくん。住人のみんな、わたしたちよりも寂しがってるんじゃない?彼女たち、にこやかに見送ってくれそう?」
紗依子さんからの問いかけに、オレは苦笑しながら口をつぐんでしまう。それもそのはずで、答えようにも答えにくい理由があったからだ。
昨夜のギクシャクとしたあの一件からというもの、オレはここまで住人の誰一人とも会話をしていない、というよりは、誰一人として出会っていなかったのだ。
やはり気まずさもあったのだろうか、住人たちは無意識のうちに、オレと遭わないよう避けていたのかも知れない。今日一日、オレがそうであったかのように・・・。
「正直言って、みなさんに納得してもらったとは思えません。仕方がないですよね、オレの自分勝手な都合だけで決めちゃったわけですし。」
オレは困惑めいた表情でそうつぶやいた。その吐き捨てるような台詞には、もう手遅れという後悔の念が混じっていた。
紗依子さんとマスターは、戸惑いを浮かべた顔を見合わせている。慰める言葉が見つからないもどかしさに、重たい溜め息をつくしかできない様子だった。
「だけどさ、マサくんがしっかり勉強して見事大学に合格したらさ、住人たちみんなも喜んでくれるだろうね。その時は、またこっちに報告がてら遊びに来るといいよ。」
「そうそうそう。その時はここで合格祝賀会でもやりましょうよ。きっと、住人たちもみんな大賛成してくれるはずだから。」
マスターと紗依子さんの温かい心遣いで、オレの心にある傷が少しばかり和らいだ気がした。もしこれが一人きりの夜だったら、ここまで気持ちが救われることはきっとなかっただろう。
「ありがとうございます。それを実現できるよう、オレも一生懸命努力しますね。」
新しいお客がやってくることのない浜木綿で、オレたち三人は慎ましく思い出話に花を咲かせた。
ちょっぴり切なくて、それでも愉快なひと時につい我を忘れてしまい、オレは生ビールジョッキを三杯も空けてしまっていた。
後ろ髪を引かれる思いで浜木綿を後にしたオレが、真っ暗なアパートに帰ってきた時には、時刻はあっという間に夜8時に到達しようとしていた。
===== * * * * =====
ここはアパートの二階にある物干し場。オレはアパートへ戻ってくるなり、着替えることもなく真っ先にここまで足を運んでいた。
「・・・ふぅ。」
夜空に浮かぶ星の輝きを見上げて、オレはふとやり切れない吐息を漏らす。今夜は独りぼっちが身にしみる、空しい夜風が吹くそんな夜だった。
アパートは夜になってもまだ静かなままであった。いつもの日曜日であれば、リビングルームに住人たちが集い、テレビ鑑賞や世間話で談笑しているところだろう。
一部の住人たちの自室から光が漏れているので、もぬけの殻というわけではないが、人の気配が感じられない異様な佇まいを醸し出していた。
「・・・本当に、これでよかったんだろうか?」
オレは自問自答するような独り言を囁いた。もう二度と覆水は盆に返ることはない。そんな故事が頭に思い浮かぶたびに、オレの胸はえぐられるような苦痛に襲われてしまう。
実家に帰ることが、オレや住人たちにとって最良の決断だったのだろうか?オレは悩ましい葛藤に苛まれながら、暗がりに包まれる遠景に目を泳がせていた。
この時のオレは考えに耽るあまり、すぐ背後に迫りくる人物の存在に気付くことができなかった。
「わっ!」
「うわぁぁ!?」
背後から驚かされて、びっくりして慌てて振り向くと、今日一度も出会うことのなかった住人がそこに立っていた。いつもと変わらず、愛らしい笑顔を見せてくれる麗那さんであった。
「こんなところでボーっとして、すっかり星を見る青年になっちゃったわね。」
麗那さんはそう茶化しながら、オレのすぐ隣まで近づいてきた。高貴な香りがほのかに鼻孔をくすぐり、オレの高鳴る鼓動がより一層激しくなった。
「あ、あの、星を見てるというか、さっきまで浜木綿でお酒を飲んでたもので、少しだけ酔い覚まししようと思って・・・。」
「ふーん、そうだったのかぁ。」
オレは気まずさと居たたまれなさで、今すぐにでもこの場から立ち去りたい衝動に駆られていた。しかし、逃げることの惨めさに足がすくんでしまい、じっとしたまま黙り込むことしかできなかった。
そのしなやかな髪が肌に触れるぐらい、麗那さんとオレの距離は接近していた。そのせいか、オレの心音は壊れんばかりに大きくなり、彼女の耳まで届くのではないかと心配するほどだった。
「落ち込んでるみたいだけど・・・。やっぱり原因は、わたしたちなのかな?」
麗那さんにズバリと指摘されて、オレの心臓が一瞬だけ停止しそうになる。やっぱり彼女には、オレの心情などすべてお見通しだったようだ。
「住人のみなさんにもっと早く伝えていたら、きっと、こんな惨めな思いをしなくて済んだんじゃないかって。みなさんに迷惑ばかり掛けて、ただ申し訳ない気持ちでいっぱいなんです。」
大学合格に執着するあまり、身近にいた住人たちに相談もせず自己中心的に行動したこと、思い上がりな自分自身をオレはひたすらに悔やんでいた。
オレが勉強に集中できるよう、献身的に後押しをしてくれた住人たち。その心遣いをこんな形で裏切ってしまい、深いわだかまりを生んだしまったことがただ無念でならなかった。
「もう気にしないで。・・・わたしも彼女たちも、表情こそ沈んでるけど、マサくんのことを応援してることに違いはないんだから。」
麗那さんはそう言って、顔を上げて明るく元気を出すようオレのことを励ましてくれた。
オレはこの時、心の中を埋めていたもやが晴れていくのを感じた。寂しさに暮れるオレにとって、麗那さんとの会話そのものが何よりも嬉しかったのかも知れない。
そっと顔を上げて、少しでも明るい表情を向けてみるオレ。迷走していたオレの気持ちは、麗那さんとの触れ合いのおかげで進むべき道に戻ることができたようだ。
「・・・出発はいつ?」
「明後日、火曜日の朝です。じいちゃんの退院の付き添いとか、身の回りの整理が終わってからなので。」
オレの出発する日を知るや否や、麗那さんは残念そうな顔をして、謝るように両手を合わせていた。
「残念。わたし、火曜日は朝から外出だからお見送りできないな。ゴメンね。」
麗那さんの話では、明日月曜日の夜から、都内で復帰イベントの最終調整に参加するという。それを終えて帰ってくる頃には、翌日火曜日の午後になるとのことだった。
きっと近いうちに、麗那さんのモデル復帰の日がやってくるのだろう。オレは素直に喜びをあらわにして、見送ってもらえない切なさをはぐらかしていた。
それからしばらくの間、思い出の夜空を眺めていたオレと麗那さん。迫りくるお別れを惜しむかのように、じっと黙ったまま、もう一緒に観賞できないかも知れない星空を目に焼き付けていた。
「・・・わたしね、気付いたことがあるの。」
そっと沈黙を破った麗那さんは、オレの顔色を伺うことなく話を続ける。
「わたしたち住人みんな、一緒に過ごし始めてから仲良くなって、友達としてお付き合いをしてるけどね。ここ最近になって、それをより大きく感じられるようになったの。」
友達というよりは親友、いや家族のような親しみを抱いていると語った麗那さん。こうなった背景には、管理人代行としてやってきたオレの存在があったからだという。
「わたしたちはマサくんと触れ合うことで、心の奥に隠れていた大切なものを知ることができた。そしてその大切なものを、わたしたちみんな、この手に掴むことができた気がするの。」
悔しかった過去、忘れてしまいたい確執、思い出したくない苦い経験、そのすべてを振り払って、みんなが本心から喜びを分かち合えるようになったのは、紛れもなくオレがいてくれたからだと、麗那さんは優しい笑顔でそう明言していた。
「・・・そんなことないです。それは、みなさんの意気込みが強かったからこそですよ。」
「そうかも知れないけど、きっかけをくれたのは、マサくん、あなたなのよ。」
謙遜しながら顔を横に逸らすオレの肩に、麗那さんは温もりのある手のひらを静かに乗せる。
「だからね、あなたにも掴んでほしいの。あなたにとって大切なものを。」
オレはドッキリして、麗那さんの方へ勢いよく顔を振り向かせる。
麗那さんの熱視線が、オレの動揺する心をより大きく揺れ動かした。さらに彼女の手のひらから、熱意のこもった切なる思いが伝わってきて、オレの頭はのぼせるぐらいに熱くなってしまった。
「・・・今は大学に合格することが一番大切だけど、マサくんには、もっともっと大切なものを見つけて、それをその手にしっかりと掴んでほしい。」
その刹那、オレの腕に麗那さんのおでこが押し当てられたことに気付いた時、緊張感に支配されたオレの体は、ピクリとも動くことができなくなっていた。
オレの顔の火照りは頂点を極め、流れてくる夜風でさえも冷ますことができない。その発熱はついに頭上まで駆け上がり、頭のてっぺんから蒸気が吹き出すかのようだった。
「・・・れ、麗那さん!?」
ゆっくりと顔を上げると、麗那さんは照れくさそうに微笑んでいた。
「これは、わたしからの餞別だと思ってね。本当にありがとう、さようなら。」
麗那さんは別れのメッセージを告げると、オレを一人残したままアパートの中へと帰っていった。そんな彼女の消えゆく姿を、オレは真っ赤な顔で呆然と見送るしかなかった。
これまでいくつもあった、麗那さんからの慰めや励ましの言葉。そのたびに、彼女のことを一人の先輩として憧れていたが、今夜だけは、一人の女性への好意に近い感情がオレの胸に込み上げていた。
===== * * * * =====
時は瞬く間に過ぎていった。そして、とうとうオレが出発する火曜日の朝となった。
管理人室で身支度を済ませたオレは、これで見納めとばかりにリビングルームを訪れた。期待に胸を膨らませて来てみたものの、室内に住人たちの姿は見当たらず、猫のニャンダフルだけがソファの上で丸まっているだけだった。
「・・・ニャン、今日でお別れだ。これからも元気でな。」
いつもと変わらぬ仕草で鳴き声を上げるニャンダフル。コイツにしてみたら、オレの別れの挨拶など当然理解してはいないだろう。
オレはニャンダフルに最後の抱擁をしてから、後ろ髪を引かれる思いでリビングルームを出ていった。
玄関から外に出てみると、雲はあるものの穏やかな秋晴れだった。オレは上空に目を移して、しばらく見ることができない東京の空にお別れを言った。
「忘れ物はないんじゃな?」
「うん、大丈夫。」
アパートの玄関先には、オレのことを見送ってくれるじいちゃんの姿があった。
庭掃除用の箒を手にしている格好が、不思議なほどよく似合っているじいちゃん。それを見たオレは、やっぱりこれでよかったんだなと、心残りを断ち切るようにそう納得していた。
「じいちゃん、あのさ。・・・住人のみなさんって?」
もしかしてここならばと期待したが、この玄関先にはじいちゃんしかおらず、住人たちの姿は誰一人として存在しなかった。
「うむ、みなさん何かしら用事があるとかで、出掛けてしまったようじゃな。まあでも、お別れはちゃんと済ませてあったのだろう?」
「・・・まあ、そうなんだけどさ。」
事前に留守と聞いていた麗那さんは別として、他の住人たちまで見送りに来てくれなかったのは正直ショックだった。しかし、やり切れなさを引きずっていても仕方がない。オレは気持ちを切り替えて、思い出深いアパートと決別することにした。
「じいちゃん、オレもう行くよ。住人のみなさんによろしくね。」
敬礼のような仕草でさよならするオレに、じいちゃんが餞別を渡すから待てといきなり呼び止める。するとじいちゃんは、いったんアパートの中へ戻るなり、一冊のノートを持ってオレのもとに引き返してきた。
「これを持っていくがいい。」
じいちゃんから差し出されたノートに、驚愕のあまり唖然としてしまったオレ。それもそのはずで、そのノートは何と、オレの過去三ヶ月間の記録が綴られたあの管理日誌だったのだ。
この管理日誌は、じいちゃんとの引き継ぎのために渡したものだったはず。それをアパートを離れるオレに手渡すとは、いったいどういう了見なのだろうか?
「この日誌は、おまえにとって思い出そのものじゃ。楽しかったことも、大変だったことも、みんなここに詰まっておる。わしからの餞別としては素晴らしい品物だろう?」
管理日誌を半ば強引にオレに握らせると、じいちゃんは顔をほころばせてニヤリと笑った。
「素晴らしいとは思うけど、これをオレに渡しちゃって大丈夫なの?」
「案ずるな。もう最後まで目を通させてもらったよ。おまえの働きっぷりがよーくわかった。これまでご苦労だったな、本当にありがとう。」
じいちゃんのそんな褒め言葉に、オレは嬉しさから胸がジーンと熱くなった。嬉しさというよりも、これっきりアパートと関係なくなる物悲しさの方が若干大きかったような気もした。
「東京から新潟だと、さぞ電車時間も長いだろう。暇つぶしにのんびり眺めてみたらどうじゃ?」
「ありがとう、じいちゃん。そうさせてもらうよ。」
オレはちょっぴり照れ笑いを浮かべながら、思い出の管理日誌をリュックサックに片付ける。そして仕切り直すように、もう一度じいちゃんにしばしの別れを告げた。
「気を付けてな、マサ。おまえの父ちゃんと母ちゃんによろしく言っておいてくれ。」
じいちゃんに手を振るも、オレはもう後ろへ振り向くことはなかった。空しい喪失感を堪えつつ、オレは三カ月間お世話になったアパートを後にするのだった。
===== * * * * =====
アパートの最寄駅から電車を乗り継ぎ、オレは自分にとって東京最後の地となる東京駅へと到着した。
時刻は午前8時を過ぎたばかり。駅構内は平日の朝だけに、スーツを着こなす会社員たちでごった返していた。その人の流れと逆行するように、オレは地上二階にある新幹線ホームを目指す。
オレがここ東京駅にやってきたのは、以外にも三カ月前に上京した時以来であった。
丁度あの時、先の見えない生活に不安ばかりが募り、すぐにも新潟にとんぼ返りしようとしたオレがここにいた。そんな青二才のオレが、三カ月という長い期間も滞在していたことに改めて驚かされてしまう。
「朝ごはん抜いてきちゃったから、駅弁でも買っていこう。」
駅構内の売店で適当な駅弁とお茶を購入したオレは、それを手に抱えたまま、午前8時52分発の新潟行きの新幹線の到着を待った。
プラットホームの乗車待ちラインには、オレと同じく、新潟方面に向かう乗客が十数人ほど並んでいる。仕事だったのか、それとも観光だったのか、はたまたオレと一緒でこれから帰郷するのだろうか・・・。
そんなことを頭に思い浮かべているうちに、オレたちを乗せる新幹線がいよいよホームへと入線してきた。
新幹線がゆっくりと指定の位置に停車する。そして自動ドアが開いた途端、待ち望んでいた乗客たちが逸る思いで車内へと駆け込んでいった。
「よし、あの窓際の座席にしよう。」
ここは自由席車両といえど、平日のこの時間のおかげか、座席の争奪戦になるほど混雑はしていない。そのため、オレはのんびりと車両の真ん中ほどにある座席まで足を運んだ。
背負っていたリュックサックを隣に置いて、窓際の座席へと腰を下ろしたオレ。シートに備え付けのテーブルの上に駅弁とお茶を並べて、いざ発車するその時を心静かに待つ。
新幹線が出発するまでの間、車内アナウンスが繰り返し流れてくる。終点の新潟駅まで行くオレは、停車駅を知らせる放送に耳を傾けることなく、ただ車窓越しの人の動きばかり目で追っていた。
「・・・新潟に着いたら、猛勉強しなきゃだな。」
オレは溜め息交じりにそうつぶやいた。今のオレにとって、一番大切なのは大学に合格することだ。そう心に言い聞かせるも、やらなければならない使命感に、オレは心のどこかで嫌気を覚えていた。
やる気や意欲を失ったわけではない。勉強の仕方がわからないわけでもない。ただ、胸にぽっかりと空いた穴を埋める何かが見出せず、オレは戦意喪失に陥っているような気分だった。
座席に着いてから数十分ほど経過し、車内アナウンスが車掌の肉声に変わった。いよいよ、発車する時刻である午前8時52分となり、新幹線は新潟を目指して定刻通りにホームから滑り出した。
「さて、朝ごはんでもいただくか。」
東京駅を出発してすぐに、オレは駅弁とお茶で待望の朝食をいただく。お茶が程よく熱かったせいもあって、すっかり冷めた弁当もそこはかとなくおいしく感じられた。
弁当のおかずをパクパクと口の中に放り込みながら、流れゆく東京の市街地を、オレは車窓からぼんやりと眺めていた。
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