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ぎゃるめがっ!!!〜ときめきが魔力になる学園で、魔力ゼロなチョロかわギャルとバディになった話〜  作者: 河津田 眞紀@第一回Nola原作大賞早期受賞×2作
3.ギャルとおねーさん

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感度開発作戦①




「ねぇっ、メガネ君でしょ!?」



 一限終わりの休み時間。

 ヒメカは、演習場の近くの校舎裏にリィトを連れ込み、壁ドンをかました。


賜魔術(アコード)使ってあたしを助けてくれたの! お嬢様を受け止めた雪だるま、君が作ったのにそっくりだったもん!!」


 ぐっと顔を近付け詰め寄ると、リィトは「えっと」と言葉を探した後……降参したように呟いた。


「……ごめん、勝手なことして」

「あ、謝んないでよ。むしろ感謝してんだから……助けてくれてありがとっ。つーか大丈夫だったの? 貰魔力(サレチカ)、けっこう使っちゃったんでしょ? あんなことに使わずに、とっとけばよかったのに」


 ヒメカにとっては一大事だったが、他人から見ればたかがメイクだ。そのために自分の貰魔力(サレチカ)を消費するなんて、シンプルにもったいないと、ヒメカは思っていた。

 しかしリィトは、きょとんとヒメカを見返し、


「だって……綺麗だから」

「…………え?」

「ヒメツカワさんのメイク。綺麗だよ」

「なっ……!!」


 顔を真っ赤にし、身体を仰け反らせるヒメカ。

 その手首を、リィトが掴んだ。

 そして、そのままぐいっと引き寄せて、


「保湿、下地、ベースメイク、ポイントメイク、つけま、シェーディング……ヘアメイクも合わせると、かなり時間をかけているよね?」

「へっ……?!」

「メイク時間だけじゃない。ここまで上手くなるのに何度も練習して、時間もお金もたくさん費やしてきたでしょ? ヒメツカワさんのこの顔は、努力の結晶――すごく綺麗だと思う。だから、あんな風に辱められるべきじゃないと思ったんだ」


 ヒメカの心臓が、ドッ、ドッ、と跳ね上がる。


(ちょっ、待っ……う、嬉しいっ! どうしよ、めちゃくちゃ嬉しいっ!! つーか、いつまで手首掴んでんの?! 意外と手おっきいのズルいっ……ドキドキすんじゃん!!)


 ――『キュン』


(わぁあああっ! またメガネ君に貰魔力(サレチカ)あげちゃった! ご、誤魔化さなきゃ!!)


「あ、ありがと……てゆーかっ、メイクのコトめっちゃ詳しいじゃんっ。もしかして、美容に興味あったりする?」

「ううん、自分ではしたことないよ」

「自分では……? まぁ、とにかくっ。今日は助けてくれてありがとっ。でも、これからは自分でなんとかするから! っつーことで……」


 ――ガシッ。

 と、今度はヒメカがリィトの肩を掴み、


「……ちょーだい」

「……え?」

「だからっ、あたしにも『キュン』して、貰魔力(サレチカ)ちょーだいよ! じゃなきゃあたし、いつまでたっても賜魔術(アコード)使えないし!」

「えぇ……」

「『えぇ……』ってナニ?! 今あたしのこと綺麗って言ってくれたじゃん! 『キュン』できるハズでしょ?!」


 掴んだ肩をガクガク揺らすヒメカ。

 (はた)から見れば、完全にカツアゲ現場である。


 リィトは眼鏡が落ちないように押さえながら、相変わらずぼそぼそと答える。


「ど、どうかな……僕、そういうの鈍いから」

「やっぱ不感症ってコト?!」

「……ヒメツカワさんはもう少し言葉を選んだ方がいいと思う」

「だったらあたしが感じるようにしてあげる! あの手この手でメガネ君を刺激して、キュンキュンのビンビンにしたげるよ!!」

「僕の忠告、聞いてた?」

「よしっ。そうと決まれば……メガネ君の感度開発作戦、開始だ! えいえいおー!!」




 ――ということで、二時限目。


「もはや常識ではあるが、神は現代科学によって存在が証明されている思念体だ」


 愛神(ニナヨ)科の教室に、担任ミカモの声が響く。


「思念体とは、実体を持たない精神エネルギーのこと。その神が、自らと近しい精神を持つと認めた人間のみが神律師(ハーモナイザ)となり、賜魔術(アコード)を扱えるようになる。お前らの場合は、ニナヨという『愛の神』に選ばれたわけだ」


 ミカモが講義する中、ヒメカは作戦のために動く。

 隣の席で真面目にタブレットにメモを走らせるリィト。

 そこに、ヒメカはぐいっと身体を寄せ、囁く。


「ねね。あたしのタブレット、調子悪くてさ……メガネ君の一緒に見してくんない?」


 もちろん、リィトに近付くための嘘だ。

 しかしリィトは善意から、すぐに「いいよ」と答えた。


「思念体である神は、この国の全域に意志を張り巡らせることが可能だ。つまり、どこにもいないが、どこにでも存在している。また、何らかの媒体に憑依して我々の前に姿を現すこともある。その代表的な出来事が、五百年前に起きた『邪神(じゃしん)大祓(おおはら)い』だ。ニナヨ、ミスミ、シラヤの三柱が人の姿を借り、人民を導いて邪神を封じた。その戦いがきっかけとなり、このライゼント学院の前身が設立されたわけだ」


 リィトが綺麗な字で書き留めるのを横目に、ヒメカはくすっと笑う。

 そして、


「はぁ……あっつ」


 小声で言いながら、ブラウスのボタンを一つ外し、


「なんか教室暑くない? あたし、汗かいてきちゃった」


 胸元を扇ぐフリをして、胸の谷間をリィトに見せつけた。


(ふふーん、胸にはけっこう自信あるんだ。形も大きさもグラドル並み。パッドなしでこの谷間なんだから! メガネ君のことだからゲームでは見たことあるかもしんないケド、生の谷間なんて見たことないっしょ? ほらほら、どう? ドキドキする?)


 などと、ニヤニヤしながら『キュン』が鳴るのを待つが……


「………………はい」


 ――ぽんっ。

 ヒメカの机の上に、何かが出現した。


 それは……昨日見たのと同じ、小さな雪だるまだ。

 雪の結晶を振り撒きながら、冷気を放っている。


「これで少しは涼しくなるかな。あまり襟元をパタパタしない方がいいよ。そんな綺麗な身体、簡単に見せたらもったいないから」


 と、リィトが囁くように耳打ちするので……ヒメカは、耳まで紅潮させる。


(き、『綺麗な身体』って……! つーか、またあたしのために貰魔力(サレチカ)消費してくれたの? 優しっ……ダメだって、ンなコトされたら……!)


 ――『キュン』


「こら、ヒメツカワ。うるさいぞ。授業中に胸キュンすんな」


(だってだって! メガネ君がぁっ! うぅっ、こんなハズじゃ……えーい、次つぎッ!)



 

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