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ぎゃるめがっ!!!〜ときめきが魔力になる学園で、魔力ゼロなチョロかわギャルとバディになった話〜  作者: 河津田 眞紀@5/2ゼロラブ第1巻発売!
14.ギャルとメガミ

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理事長とテロリスト




『――こちらクルル・イスルギ。裏門付近より邪神徒(フェイスフル)の侵入を確認。これよりクロロ・イスルギと排除に向かいます』



 インカムから次々に聞こえてくる戦況報告。

 一斉に仕掛けられた邪神徒(フェイスフル)の襲撃に、学院の外を護る生徒たちはしっかり対応してくれているようだ。


 そのことを頼もしく思いながら、私はあらためて、目の前の妹――ツバメを見る。


「ヨコハマ中の絶望を集める? 随分と大それた作戦だな。残念ながらお前たちの行動は予測済みだ。引き返すなら今の内だぞ?」

「ふふ……相変わらずお姉ちゃんは前しか見ていないのね」


 見下したような、諦めたような目で、ツバメが見つめ返す。


「『引き返す』なんて言葉は、前進している者にする忠告よ。私は前になんて進んでいない……『堕ちている』の。私が居るのは、清も濁も併せ呑む心地良い底なし沼……今さら蜘蛛の糸を垂らされたって、掴んだりしないわ」


 そこで、ツバメは言葉を止める。

 そして、再び笑って、


「……そう。やっぱりリィトもここにいたのね。お姉ちゃんは主戦力を残したつもりなのだろうけど、私としても好都合よ」


 どうやらツバメの別の幻影が、リィトたちと邂逅したらしい。

 遅かれ早かれバレることだ、問題はない。


「リィトを捨ててもうすぐ一年……私への憎しみは、さぞ膨れ上がっているでしょうね。あの子は並外れた『心の器』を持つ逸材。生み出されるゾウオウラも桁違いの量になる……余すことなく収穫して、アメノ様への供物(くもつ)にしなくちゃ」

「そんなことには絶対にならない」

「ふっ。状況がまだわかっていないようね、お姉ちゃん? 私たちを(おび)き寄せるため、上手く罠を仕掛けたつもりでいるんでしょうけど、私はそれを理解した上でここに来たの。つまり――」


 ……刹那。

 部屋中の窓ガラスが割られ、外から邪神徒(フェイスフル)たちが飛び込み――


「――お姉ちゃんの罠を逆手に取れるビジョンがある、ということよ」


 現れた邪神徒(フェイスフル)は六人。

 内三人が銃を、残りがナイフを手にしている。

 中央に座る私を囲むようにして、ジリジリと距離を詰めてくる。

 気配からして幻影ではなく、生身の人間のようだ。


「ほう……確かに、空中からの侵入は想定外だったな」

「ふふっ。キングを気取って最上階に胡座(あぐら)をかいているからよ。さぁ……これでチェックメイト」


 邪神徒(フェイスフル)たちが武器を構える。

 全員の殺気が私に集中する。

 うん……()()()()()()()だ。


「――やれ」


 私は短く言う。

 と、



「冷え冷えアイスバーンッ!!」



 愛らしい声と共に、二人の邪神徒(フェイスフル)が氷漬けになった。


 目を見開くツバメ。

 その瞳に、ツインテールを靡かせた少女――メルリ・エンジュが映り込む。


 彼女は、ずっとこの部屋にいた。

 ミコシバ製の光学迷彩シールドに身を潜め、ずっとこの機を窺ってくれていた。


 タイミングと威力は完璧だったが、離れた位置にいた邪神徒(フェイスフル)が咄嗟に飛び退き、凍結を免れた。

 そして、すぐに反撃しようと武器を構える……が、


「遅いッ!」

「……たぁっ」


 (ひらめ)く二筋の光と、その速さに置き去りになる声。

 残りの邪神徒(フェイスフル)が弾けるように吹き飛び、壁にめり込んだ。


 別の光学迷彩シールドの左右から光速で登場した二人の生徒――ソウマ・ソーマとヒグレ・ユサ。

 彼らもまた、この部屋に配置した優秀な生徒だ。


「ふん……遠足の欠席者は、思ったより多かったみたいね」


 沈黙した仲間を眺め、ツバメがつまらなそうに言う。

 だが、焦りは見られない。

 それどころか、再び妖艶に笑い、


「でも、人選を誤ったんじゃない? 新入生をいくら残したところで……無駄な犠牲を増やすだけよ?」


 言うと同時に、割れた窓から強風が吹き込む。

 バラバラというプロペラの音……邪神徒(フェイスフル)の乗ったヘリが屋上へ着陸しようとしているようだ。


「さぁ。秘密を教えて、お姉ちゃん? でなければ、今から降りて来る連中が、この可愛い駒たちの心も身体もぐちゃぐちゃに犯すわ」


 興奮気味に囁き、舌舐めずりをするツバメ。

 どうやらヘリから降りて来る連中は、精神汚染の賜魔術(アコード)を扱うのに()けているらしい。


「それは困ったな……ここにはこれ以上の戦力を用意していない。強力な増援を送り込まれたら、なす(すべ)がない」

「ふふ。いくらお姉ちゃんでも、生徒を人質に取られたら手出しはできないでしょう?」

「それはそうだ。命よりも大事な生徒だからな。だから……」


 ……そこで。

 インカムの向こうから、こんな声が聞こえて来る。



『――さんだーぼると・らいじんぐぶれーど』



 ――チュドォオオオンッ!!



「……()()()()()は、全力で生徒を護るんだ」


 頭上から響く、けたたましい爆発音。

 天井の一部がパラパラと落ちてくる。


「なっ……何……?!」


 ツバメが警戒を高める。

 邪神徒(フェイスフル)の乗ったヘリが爆発したことを、否が応でも察したのだろう。


 と、そこへ、割れた窓からひらりと降り立つ小さな人影。

 栗色の艶やかな髪を振り上げ、顔を上げたのは……

 愛神(ニナヨ)科一年の担任にして私の先輩、ミカモ・ナナカマドだ。


「み、ミカモ先生……?!」

「よう、ツバメ・エンビィ。久しぶりだな。昔すっぽかした補習を今さら受けに来たのか?」

「なんであんたが……遠足の引率に行っていたはずじゃ……?!」

「そうだ。さっきまで生徒たちとイルカショーを見ていた。けど、こっちで別のショーが始まったと聞いて、仕方なく戻って来たんだ――超音速戦闘機を顕現してな」

「せ、戦闘機……?!」

「マッハで飛べばエノシマからヨコハマなんて一分半だ。屋上に降り立とうとしたら邪魔くさいヘリがいたから、ついでに斬り刻んでおいたぞ」


 言って、雷で錬成した太刀(たち)を肩に乗せるミカモ先輩。


 先輩は愛神(ニナヨ)だけでなく財神(ミスミ)にも認められた神律師(ハーモナイザ)だ。

 財力の出所は不明だが、昔から豪快な財魔力(ザイチカ)の使い方をする人だった。

 小学生が考えたような技名を好むところも、ギャルサーのトップを張っていた頃から変わりない。


「ちなみに、他の先生方と優秀な三年生を一緒に乗せて来たから、補習を受けたいなら全力で相手するぞ?」

「くっ……」


 歯を軋ませ、後退りするツバメ。

 その背後にメルリ、ソウマ、ヒグレが立ちはだかる。


「もう一度言う――引き返すなら今の内だぞ? ツバメ」


 さぁ、この不利な状況で、どう動く……?


 ツバメの一挙手一投足に注視していると……

 彼女は、何故か「ふっ」と笑った。

 直後。


 ――ズズン…………ッ!!


 建物に響く、突き上げるような振動。

 屋上からではない。

 これは…………まさか、地下?


「ふふ……あはははっ! どうやら上手く時間を稼げたようね」


 勝ち誇ったように笑うツバメ。

 スーパーコンピューター・デイドリームのある地下へは、この部屋の隠しエレベーターからしか降りられない。

 一体、何をしようとしている?


「学院が隠しているものが何なのか、だいたい予想はついているのよ。さぁ、形勢逆転ね。引き返すなら今の内よ、お姉ちゃん……?」


 そう言って、ツバメの幻影は、ふわりと姿を消した。

 そのタイミングで、リィトとヒメカが部屋に入って来た。


「ツバキさん、今の衝撃は……?」

「恐らく地下に侵入された。すぐに向かおう」

「えぇっ?! 激ヤバじゃん!!」

「メルリ、ソウマ、ヒグレ。ミカモ先生の指示に従い、ここを防衛してくれ。先輩、生徒たちを頼みます」

「わかった。あとで経費の申請したいから、早く戻って来いよ」


 ……もしかして、音速戦闘機で消費した財魔力(ザイチカ)分の額を学院に請求するつもりか?

 そう考えると俄然戻りたくなくなるが……生徒の前で弱気な顔は見せられない。


 私は理事長らしく堂々と頷き、リィトとヒメカの方を振り返って、


「……行こう。ここからが正念場だ」


 自らを奮い立たせるように、そう言った。



 

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