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ぎゃるめがっ!!!〜ときめきが魔力になる学園で、魔力ゼロなチョロかわギャルとバディになった話〜  作者: 河津田 眞紀@5/2ゼロラブ第1巻発売!
12.メガネと水族館

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女王様の風格




「ちょっ、やめなよニセお嬢様!」

「うるさい! どうせもう後戻りできないのよ……この遠足のことも邪神徒(フェイスフル)に報告済みだから!」


 ヒメカが止めようとするが、ナキリの興奮は収まらない。

 後退りしながら、笑い泣きしている。


「今、学院の校舎には生徒がいない……つまり、本丸がガラ空きってこと! 今ごろ邪神徒(フェイスフル)たちが攻め入っているはずよ! 私のせいで、ライゼントは終わるの!!」


 首筋に鮮血が伝う。

 本気で首を掻き切るつもりらしい。


 聞きたいことはすべて聞けたし、伝えたいことも伝えられた。

 そろそろ終わりにしてあげよう。


「そう……それはどうもありがとう」

「は……? あんた、私を馬鹿にしているの?!」

「まさか。言葉通り感謝しているんだよ。僕の期待通りに動いてくれて、本当に助かった」

「このっ…………馬鹿にすんなぁあああっ!!」


 ナキリが駆ける。

 そして、僕の胸にナイフを突き立てる――

 ――ことなく、通り抜けた。


「なっ……?! このっ、この!!」


 僕の身体に、何度もナイフを振り下ろす。

 けれど、僕には当たらない。


「どういうこと? 実体が、ない……?!」

「うん。だって――僕の身体は、ずっと学院にあるからね」


 ナキリの目が、これ以上ないくらいに見開かれる。

 どうやら、完璧に欺くことができていたようだ。


「君が、生徒総出で遠足に行くことを邪神徒(フェイスフル)たちに告げる。そうすれば奴らは、自ずと学院を攻めてくる……そう予想したから、僕たちは残った。幻影を操作し、遠足に参加しているよう偽装してね」

「幻影……? ありえない! そんなもの、ミコシバの技術をもってしても実現できるわけ……!」

「できるよ。だって、蜃気楼は自然界に存在する事象だから。これは、僕の賜魔術(アコード)による術だよ」


 ナキリが唖然とする。

 僕、おかしなこと言ってる?


「ヨコハマとエノシマの距離で、これほど精巧な蜃気楼を生み出すなんて……どれだけの貰魔力(サレチカ)と想像力を有しているの? あんた……やっぱり変態ね」

「心外だなぁ」


 ……こほん。

 気を取り直して。


「とにかく、これに懲りたらもう危ない真似はしないでね。ということで――()()()()()()


 僕は呼ぶ。

 もちろん、ナキリに対してではない。


 刹那、ナキリの手から、ナイフが消えた。

 彼女は驚き、もう一度顕現させようと叫ぶ。


万象載典(ブロウシュア)! ……え? どうして出ないの?!」

「――当然ですわ」


 波音に紛れ、響く声。

 それは、ナキリの背後から。


 彼女が振り返ると、景色が揺らいだ。

 そして、海岸の風景を切り裂くようにして――本物のミコ・ミコシバが姿を現した。


「あなたの賜魔術(アコード)用に与えていた口座を凍結しました。あなたの財魔力(ザイチカ)は0ですわ」

「ミコ……いつからそこに……!」


 光学迷彩。

 周囲の景色に溶け込む透明化シールドで身を隠していたわけだが、この距離でもバレない完璧なカモフラージュだった。さすが世界のミコシバの技術。


「わたくしの姿で随分好き勝手してくれましたわね。帰ったらたっぷりお仕置きいたしましょう……ブタさんたち?」

「はっ!」


 ミコの背後から、二人の雄ブタSPが素早く現れる。

 そして、ナキリを昏倒させ……あっという間に身柄を捕えた。


「ふう。これにて作戦完了ですわ」

「ありがとう、ミコシバさん」

「それはこちらのセリフでしてよ、カミナヅキさん。わたくしの影武者の悪事を暴いてくださったこと、心より感謝申し上げます。本件の責任はすべてミコシバ家にあります。この女の処遇はこちらにお任せを」


 ご令嬢らしく、優雅に一礼する彼女。

 僕もそれに倣い、胸に手を当て礼をする。


「よろしく。でも、彼女も被害者の一人だから、お手柔らかにしてあげてね」

「お優しいですわね。もちろん、彼女だけが悪いわけではありません。彼女の人生を奪ったのは、他でもないわたくしなのですから……わたくしが最後まで面倒を見ますわ」


 切なげにナキリを見つめるミコ。

 家の意向とはいえ、『自身の影武者』という存在に対し、ミコも複雑な想いを抱いていたようだ。


「ならよかった。今後はこんなことが起きないよう、ちゃんと学校に来てね。君が雪だるまに突っ込んだことなんて、みんなもう忘れているから」


 事実を述べただけで、挑発したつもりはなかった。

 けれどミコは、お淑やかな笑顔を少しだけ引き攣らせて、


「……ええ。あの時あなたに味わわされた屈辱を三千倍にして返すためにも、明日からきちんと通いますわ」


 と、Sっ気全開で答えた。

 隠し切れない女王様気質。やはり、本物は違う。


「さて……こちらにもそろそろ動きがあるかな」


 そう呟いた直後、耳に着けているインカムにノイズが走った。

 予想通り、理事長――ツバキさんからの通信だ。


「ツバキさん?」

『リィト、終わったか?』

「はい、問題ありません。そちらは? ツバメは現れましたか?」


 ヒメカが不安気に見つめる中、僕は尋ねる。

 ツバキさんは一度息を吐き……そのまま、こう続けた。



『ああ。ツバメなら――――今、目の前にいる』



 

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