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ぎゃるめがっ!!!〜ときめきが魔力になる学園で、魔力ゼロなチョロかわギャルとバディになった話〜  作者: 河津田 眞紀@第一回Nola原作大賞早期受賞×2作
1.ギャルとメガネ

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キスの実技演習




(…………………………マ????)



 ヒメカは、固まる。

 そして、すぐにピンとひらめく。


(あ、なんかキスって名前の魚いるよね! アレのことかな? 釣りの授業?)


「口付け。接吻。口吸い。ちゅー。海外では挨拶代わりにする風習もあるが、ここニッポンでは主に好意を示したり、性的興奮を高めるための手段として用いられるな」


(違った! がっつりKISSだった! 嘘でしょ?! そんなの授業でやっていいの?!)


「お前ら愛神(ニナヨ)科の生徒にとって、恋愛スキルは貰魔力(サレチカ)に直結する重要な力だ。キスはその最初歩。よって、バディと練習してもらう」


(うそ……大事に取っておいたファーストキスの相手が、今日出会ったばかりのメガネ君だなんて……!!)


「ただし、貞操観念や衛生的観点から粘膜接触に抵抗のある者は、今から配るビニール手袋を使え。唇の代わりに指を使って、口内のイイトコロを研究しろ」


 ヒメカは、戦慄する。

 愛神(ニナヨ)科に所属する以上、ときめきに絡む授業があることは覚悟はしていた。

 しかし、それにしたって、しょっぱなからフルスロットルすぎだ。


 配られたビニ手を取り、隣のメガネ君……リィトを見遣る。

 ここは、ギャルとしての余裕を見せたいところ。


「あ……あはっ。メガネ君、キスとか初めてっしょ? 今日は指にしとこっか?」


 からの、からかうようなスマイル。

 これならギャルの威厳を保ちつつ、リィトを気遣う優しさを見せつつ、キス回避もできる。そう考えた。


 リィトは、前髪の奥にあるであろう両の目でヒメカを見つめ、しばらく黙り込んでから……


「……そうだね。その方がいいと思う」


 やはりぼそっと、そう答えた。


 そうこうしている間にも、教室が騒がしくなってきた。

 まず、双子モデルのクルルとクロロが、躊躇いもなくディープなキスを始めたのだ。

 その美しくも艶かしい接吻に、周囲の生徒が釘付けになる。


「よ、よし。俺たちも……」

「わ、私もがんばる……!」


 感化されたクラスメイトたちも練習し始め、そこら中から『キュン』『キュン』という電子音が聞こえてくる。


 まずい、完全に出遅れた。

 ヒメカは焦りを滲ませ、リィトに言う。


「じゃ、じゃあ……あたしが先に触るね。君はじっとしてて?」


 少しの余裕を演じながら、ヒメカはビニール手袋を嵌め、彼と向かい合う。

 椅子を寄せ、膝と膝をつけて……本当は、それだけでドキドキしている。


 両手を伸ばし、リィトの頬を包み込んでみる。

 男子の頬に触るのなんて、初めてだった。

 当然だ。ギャルな見た目に反し、ヒメカには一切の恋愛経験がないのだから。


「い……いくよ? 大丈夫っ、こわくないからね」


 ごきゅっ……と唾を飲み込み、ヒメカは親指で、リィトの唇に触れた。


 ――ふにっ。


 それだけで、ヒメカは毛を逆立てんばかりに緊張する。


(んにゃぁああっ! やわらかっ! ビニ手越しでも皮膚の薄さわかるっ! でも、動かさなきゃ……まだ触っただけ。こんなの、キスの練習じゃないっ)


「くっ……口、開けてみて?」


 一方のリィトは、すんと落ち着いている。

 目が隠れてるため表情は読めないが、ヒメカに言われるがまま、おとなしく口を開けた。


 見えたのは綺麗な歯と、ピンクの舌。

 ヒメカの胸に、一気に生々しさが込み上げてくる。


 ヒメカは左手を頬に添えたまま、右手の人差し指を立てる。

 そしてそれを……リィトの口内へ、差し入れた。


 ――っちゅ。


(あっ……し、舌に触っちゃった……なんか、すごく粘膜……っ!)


「は……はいっ、とりあえずここまで! 初心者なんだし、徐々に慣れていかなきゃね!」


 やばかった。

 もう心臓ばっくばくである。


(まぁでも、初めてにしては上出来だよね? ギャルの威厳は保てたっしょ。メガネ君も緊張しちゃって『キュン』鳴らなかったカンジかな? 初日だし仕方ないよね!)


 ふぅ、と息を吐き、ヒメカは気を取り直すように言う。


「んじゃ次、君がやっていいよ。好きに触って?」


 攻守交代。ここでもギャルの余裕を演出する。


(ま、メガネ君もあたしと同じで触り方わかんないっしょ。経験なさそうだし。やっぱあたしがリードしたげなきゃね、バディとして!)


 ん、と顔を差し出し、にこっと笑ってみせる。

 リィトは、パチンッとビニ手を嵌めると、


「それじゃあ…………優しくするね」


 そう言って――ヒメカの顎を、くいっと持ち上げた。

 思わず驚くと、リィトは親指で彼女の下唇に触れ……


 ――つぅ……っ。


 羽毛でくすぐるがごとく、柔く、なぞるように、指の腹を滑らせた。


「唇の皮膚は、人体の中で二番目に薄いって言われているんだ。だからこうして、掠めるように撫でてやると……ゾワゾワってするでしょ」


 などと冷静に解説してるが、ヒメカの方はそれどころではない。

 言い知れぬ痺れが全身に走り、身体がビクビク跳ねて堪らないのだ。


(これ、まじでやばっ……こそばゆいというか、なんというか……っ)


 ――『キュン』


 リィトのバイタリストが鳴る。

 ヒメカのときめきが送られ、貰魔力(サレチカ)が溜まった音だ。

 しかし彼は、構わずヒメカの口を開かせてくる。


「次、ナカいくね。たぶんわかりやすいのは上顎……ほら、ここ。指で撫でられると……気持ちいいでしょ?」


 ――『キュン』『キュン』


「最後、舌だけど……甘みを感じるのは舌の先端なんだって。だから、舌先同士を触れさせるのもいいし……貰魔力(サレチカ)を狙うならこう、深いのもイイと思う」


 舌先を弄ばれ、かと思えば、舌の根を掻き回され……

 ヒメカはよだれを垂らしながら、目をチカチカさせる。


 ――『キュン』『キュン』『キュン』


 リィトのバイタリストが鳴り止まない。

 知らない感覚に、ヒメカはただただ身体を痙攣させ…………


「……はい、おしまい。……大丈夫?」


 ぱっと手を止められ、ようやく我に返った。


(……はっ。あれっ? あたし今、どうなってた? なんか、すごいコトされてたような……)


 リィトに顔を覗き込まれ、ヒメカは(よだれ)を拭いながら、


「ご、ごめ……なんか…………寝てたかも??」


 と、さすがに苦しすぎる言い訳で誤魔化した。


(このメガネ君……いったい何者?! こんな陰キャオーラ放っておきながら、わりと躊躇なく口のナカいじられた気がするんですけど?! ……あ、もしかして)


 ぽんっ。

 と、ヒメカはひらめいたように手を打ち、


「もしかして…………こういうの、えっちなゲームでいっぱい練習した? 最近のって没入感やばいんでしょ? 君、そういうの好きそうだもんね!」


 なんて、あっけらかんと言い放った。

 その悪気のないセリフに、リィトは……暫し言葉を失ったのち、


「…………そういう偏見は、よくないと思うよ」


 やはり控えめな声で、ぼそっと(たしな)めた。



 

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