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ぎゃるめがっ!!!〜ときめきが魔力になる学園で、魔力ゼロなチョロかわギャルとバディになった話〜  作者: 河津田 眞紀@5/2ゼロラブ第1巻発売!
8.メガネと遊園地

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25/50

なんか、むかつく




 ――ヒメカの希望で最初に乗ったのは、ジェットコースターだった。

 ……そう。いきなり絶叫系に乗らされた。


 僕は苦手ではないので問題なかったけれど、ヒメカの方は大変だった。

 乗る前はハイテンションではしゃいでいたのに、急降下した後はずっと泣き叫んでいたし、最後の方は吐き気を催していた。


「……ジェットコースター、苦手だったの?」

「おぇ……そーいえば苦手だったカモ……お腹ん中が浮くカンジが無理で……忘れてた」


 忘れるとかある?

 たぶん、嫌なこともぜんぶ楽しい記憶に上書きされるタイプなんだろう。羨ましい。


「ヒメカちゃんが絶叫系苦手なのはちょっと意外だったよ。大丈夫? はい、お水」

「ふふ……ギャップ萌えでしょ? 『キュン』とキた? おえ」


 いや、キュンより心配の方が勝るよ。


 グロッキーなヒメカの様子を見つつ、次は平和なアトラクションをいくつか回った。

 鏡の迷路とか、人形が動いているのを見るだけのゴンドラとか。


「っしゃ、ふっかーつ! 次、お化け屋敷行こ!」


 すっかり顔色が戻ったヒメカに連れられ、お化け屋敷に入る。

 薄暗い部屋の中、機械仕掛けの幽霊が驚かせてくるチープなやつだ。


 結論を言えば、これもジェットコースターの二の舞だった。

 最初こそ気合い十分だったヒメカだが、次第に僕の手を握る力が強くなり、


「……ど、ドキドキすんね!」

「そうだね」


 ごめん、全然しない。

 バイタリストの心拍数、間違いなく正常値。


「大丈夫だよリィト、あたしがついてるからね! お化けが襲って来たらあたしが護って……ギャーッ!!」


 あ、君が護る側なんだ。早速ビビってるけど。

 っていうかめっちゃ抱き付いてくるじゃん。胸ぐいぐい当たってるけどいいの? これ。


「ボサボサの白髪(しらが)……シワシワの肌……ボロボロの歯っ……セルフケアを怠った女のユーレイ、まじ怖い!!」

「そういう恐怖?」


 怖がり方はよくわからなかったけれど、なんとかゴールに辿り着くことができた。

 明るい外の空気に触れ、ヒメカは深呼吸する。


「っはぁー……シャバの空気うんま!」

「それはよかった」

「次、あれ行ってみよ! なんかシューティングできるやつ! リィト、昔ゲーセンでやってたんでしょ? 腕前見せてよ!」


 怖がっていたのも束の間、ヒメカは再び僕の手を引いて駆け出す。


 遊園地に来てから、彼女はずっと僕と手を繋いでいた。

 最初は無意識なのか、友達感覚なのかと思っていたけれど……握る手はどこか遠慮がちで、汗ばんでいた。


 ……たぶん、いや、間違いなく緊張している。

 僕にときめきを思い出させるために、頑張って手を繋いでくれているのだ。

 やけにはしゃいで見えるのも、恥ずかしさを誤魔化すため。


 なんて健気(けなげ)でいじらしい。

 君の初デートを奪うのが僕なんかで申し訳ないくらい。


 僕は、ヒメカの手をしっかりと握り返す。

 その途端、彼女はぴくんっと身体を跳ねさせ、僕を見る。


「ど……どしたの?」


 ほらね、頬が赤い。

 僕は面白くなってしまって、思わず笑みを浮かべながら、


「手……こうやって繋ぐんだよ」


 いつか教わったみたいに、指と指を絡め、きゅっと握り締めた。

 所謂(いわゆる)、恋人繋ぎってやつだ。


 その途端、僕のバイタリストが『キュン』と鳴る。

 本当に、チョロすぎて心配になる。


「ま、待って! あたし、いま手汗やばくて……!」

「いいよ」

「え……」

「ヒメカちゃんの汗なら……いいよ」


 これも経験済みのセリフ。

 案の定、


 ――『キュン』『キュン』『キュン』


 鳴り響く電子音。

 耳まで真っ赤になるヒメカ。

 それを可愛いと思いながら、僕は自己嫌悪を募らせる。


 甘いセリフを並べて、無垢なヒメカから貰魔力(サレチカ)を稼ぐなんて……これじゃあ、僕を弄んでいたツバメと同じじゃないか。


 だけど、ヒメカの方は違う。

 ツバメの言いなりになって溺れていたあの頃の僕とは違う。


 ヒメカは喉を鳴らすと……

 僕の顔を怪訝そうに見つめ返し、こう言った。



「リィトって………………もしかして、汗フェチ??」



 ……ほらね。僕のネガティブな思考ごと蹴散らしてくれる。

 そんなところにいつも救われている。


「……うん、そうかもね」

「わ、ヘンターイ。まっ、セーヘキは人それぞれだもんね。んじゃ、この後もいっぱい汗かくから、今度こそあたしに『キュン』してね!」


 そうして、また走り出す。

 無邪気な笑顔を振り撒いて。


 ……もし、あの日出会っていたのが、ツバメじゃなくてヒメカだったなら。


 そんな無意味な想像をしそうになる脳を、精一杯無視して。


「……善処するよ」


 少しのワクワクを感じながら、彼女と駆けた。




 * * * *




「――これこれ! シューティングバトルフィールド!」


 辿り着いたのは箱型の屋内施設。

 レーザーガンで互いを撃ち合う対戦型のアトラクションだ。


「こういうの、サバゲーっていうんだっけ? 一度やってみたかったんだよね!」

「僕もこれは初めてだ。楽しそうだね」

「ふふーん。お互い初心者ならいい勝負できるんじゃない? あたしの華麗なガン捌きで撃ち抜いてあげんよ!」


 ばきゅん、と撃つ真似をするヒメカ。

 ウィンクも完璧。撃たれた演技でもした方がよかっただろうか。


 中に入って受付をして、ルール説明を受ける。

 制限時間は十分。センサー付きのベストを着て、互いの胸や背中を狙ってレーザーガンを撃つ。

 命中するとポイントが貯まり、終了時に最も点数の高かった人が優勝。

 他の参加者もいるから、計六名で対戦することになりそうだ。


 ベストを着けて、銃を持ってフィールドに入る。

 隠れるための壁がいくつもあり、まるで迷路だ。

 ポップな模様がブラックライトに照らされて、蛍光色に光っている。


「三、二、一……バトル、スタート!」


 アナウンスが響き、ゲームが始まった。


 僕は壁に身を潜め、足音を探る。

 ふいに近付いて来た一人にレーザーを当て、ポイントを獲得。

 すぐに逃げて行くので、僕は別ルートから移動した。


 続けて、鉢合わせた別の人と撃ち合い。

 これも難なくポイントをもらう。

 中学時代、学校にも行かずゲーセンでシューティングゲームをやっていた経験が活きているようだ。


 ヒメカは大丈夫だろうかと考えた、その時。

 元気な足音が、背後から聞こえた。


 姿勢を低くし、振り向き様に撃つ。

 案の定、ヒメカが「ぎゃーっ!」と叫んだ。


「もー! ぜったいヤれると思ったのに!」

「ごめん。ヒメカちゃんの足音、わかりやすくて」

「ガサツってコト?!」

「聞き馴染みがあるってことだよ」


 などと言い合っていたら、声を聞きつけた別のプレイヤーが狙って来た。


「……! 危ない!」


 僕は咄嗟にヒメカちゃんを背に隠す。

 そして、急所を一発で撃ち抜き、撃退した。


「ふぅ……危なかった。あまり騒がない方がいいかもね」


 ――『キュン』


 予期せず鳴った電子音に振り返る。

 ヒメカは、顔を紅潮させながら震えていた。


「あ……ありがと。助けてくれて」


 ぼそっと、照れたように呟くヒメカ。


 今のは、ときめかせようと思ってやったわけじゃない。

 ただ、ゲームプレイの一環として護っただけ。

 なのに、ヒメカは……こんなにも簡単に『キュン』としてしまう。


 胸を押さえ、弱々しく俯く彼女。

 その可愛らしい姿に、僕は……


 何故か、妙な苛立ちを感じてしまい。


「…………チョロすぎ」


 ヒメカの顔をぐっと覗き込みながら……囁く。


「……誰にでもそうなの?」

「へっ……?」

「僕じゃなくても……相手が誰でも、ヒメカちゃんは……こんな簡単にときめくの?」


 ……僕、何を聞いているのだろう。

 何に苛ついているのだろう。


「り……リィト……?」


 ヒメカの瞳が、ネオンを反射して揺れている。


 ……ほら、困らせている。

 早く、謝らなきゃ。


 と、我に返った……その時。



「――あぁっと! イチャついてるカップル発見! オレへの当てつけか?! 撃退撃退ー!!」



 そんな賑やかな声――且つ聞き覚えのある声が近付いて来た。

 レーザーガンを片手に、首から下げた小型カメラに向かって実況をする男……


「……って、アレ? ヒメちゃむに、カミナっち?」

「まじ……? ホトヤンじゃん!!」


 ……そう。

 現れたのは、ユーウォッチャーのホトヤンこと、財神(ミスミ)科のホトギ・クラガノ。


 思いがけない遭遇に、ヒメカは興奮気味に叫んだ。



 

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