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ぎゃるめがっ!!!〜ときめきが魔力になる学園で、魔力ゼロなチョロかわギャルとバディになった話〜  作者: 河津田 眞紀@第一回Nola原作大賞早期受賞×2作
6.メガネと彼女

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20/27

戦う理由




 ――神律師(ハーモナイザ)となった僕は、ツバキさんの元で賜魔術(アコード)の訓練を受けた。


 中学に通いながらツバキさんを手伝う形で、邪神徒(フェイスフル)を追跡・捕縛する任務をこなした。



 邪神から人々を救う、愛の神の使者。


 空っぽだった自分がヒーローになれたような錯覚に陥るけれど……本当は違う。

 僕を突き動かす原動力は、そんな崇高なものではなかった。




 * * * *




 中学を卒業し、僕は特待生としてライゼント学院に入学した。

 父親の元を離れ、寮生活も始めた。


 明日はいよいよ入学式。

 というタイミングで、


「――リィト。君に、伝えておきたいことがある」


 ツバキさんが、不敵に笑いながら言った。


 彼女の下に就いて九ヶ月。互いの為人(ひととなり)はだいたい把握している。

 ツバキさんは真っ直ぐで熱い人だが、時々ギャルらしい破天荒な一面を発揮する。

 彼女がこういう笑みを浮かべる時は、大抵後者なのだ。


 またとんでもない無茶振りをされるのではと少し警戒していると、ツバキさんはニッと笑い、


「君のバディが決まった。先に情報を渡しておく」


 そう言った。

 バディとは、在学中に行動を共にしながら貰魔力(サレチカ)を高め合う相棒のこと。

 僕が籍を置くことになる愛神(ニナヨ)科独自の制度だ。


 その情報を、こんなに楽しそうに発表するなんて……ますます嫌な予感しかしない。

 僕の視線に宿る疑念を感じ取ったのだろう、ツバキさんは手をヒラヒラと振り、


「安心しろ。私と同じ、メッカワなギャルだぞ? 扱いには慣れているだろう?」

「そんな自覚はありませんが」

「名前はヒメカ・ヒメツカワ。筆記試験の結果は最下位。これまでに蓄えた貰魔力(サレチカ)の数値は……0だ」

「………………え」


 ……聞き間違えか?

 筆記試験の結果はともかく、貰魔力(サレチカ)が0はありえない。

 そういう適性のない人間は神に認められず、賜魔術(アコード)を扱えない――つまり、この学院に入学できないはずだから。


 僕の疑問に答えるように、ツバキさんは「ふふん」と鼻を鳴らし、


「だが……別の数値が常人のそれを遥かに上回っている。見てみろ」


 そう言って、タブレットを差し出した。


 受け取った僕の目に飛び込んできたのは、満面の笑みでピースをする女の子の写真。

 ピンク髪に派手なメイクの、ギャルだ。


 その下に、これまでの経歴と入試の結果、そして神律師(ハーモナイザ)としての数値が記されているのだが……その内容に、思わず目を見張った。



[Accord Scale:0]


[Anti Accord Scale:999999]



「……アンチ・アコードスケール……?」

「そう。賜魔術(アコード)は他者を攻撃する力。対して(アンチ)賜魔術(アコード)は、他者を絶対的に受け入れる力。つまり、そこに表示されているのは『愛する力』の強さ――通称『与魔力(スルチカ)』だ」

「スルチカ……そんな概念があるだなんて知りませんでした」

「普通なら知る必要のない数値だからな。賜魔術(アコード)を使うには己の貰魔力(サレチカ)だけ把握していればいい」

「しかし、こうして記録している以上、(アンチ)賜魔術(アコード)にも使い道があるということですよね?」

「その通り。与魔力(スルチカ)による(アンチ)賜魔術(アコード)には……邪神アメノを無力化する力があるんだ」


 僕は目を見開く。

 その反応を見て、ツバキさんは口の端を吊り上げる。


「知っての通り、アメノは人間の憎しみや怒りを糧とする。だからこそ、それら負の感情を受け入れ愛する力が天敵となるのだ」

「なるほど……だから五百年前、ニナヨ神がアメノを封じる切り札になったのですね」

「そういうことだ。つまりヒメカは、私たちの希望になり得る人材。だからリィトのバディとして側に置くことにした。仲良くなれるよう、上手く立ち回ってくれ」


 ニカッと笑うツバキさん。

 まったく、簡単に言ってくれる。

 ただでさえあの一件以来女性不信気味なのに、ギャルという対極な人種と仲良くなれだなんて……やはり無茶振りだ。


「ちなみに、この与魔力(スルチカ)の数値は正確ではない。カンストしてこのように表示するしかなかっただけだ」

「なっ……」

「例年の新入生の与魔力(スルチカ)平均値は約200……それを考えれば如何に異様な数値かがわかるだろう。もっとも、貰魔力(サレチカ)が0であることも充分異様だがな」

「何故、彼女にそのような特性が?」

「わからない。こればかりは生まれ持った才能としか言えないだろう。或いは……別の可能性も無きにしも非ず、だが」

「……まさか」


 含みのあるセリフに、面白がるような視線。

 ツバキさんの言わんとしていることは、僕にもわかった。

 しかし……それを口にするのは、あまりに畏れ多い気がして。


「……ま、それも追い追いわかるだろう。とにかく、バディとしてしっかり頼むぞ。何せ貰魔力(サレチカ)0だからな。いろいろと助けてやってくれ」


 けろっと笑うツバキさんに、僕は明日からの学院生活を不安に思いつつ……「わかりました」と答えた。




 * * * *




 ――そうして僕は、ヒメカと出会った。


 実際に対面した彼女は、やはりギャルだった。

 服装もメイクも振る舞いも、まごう事なきギャル。


 けれど……知れば知るほど純粋無垢な、普通の女の子だった。


 そして、恐らく……いや、間違いなく恋愛経験はゼロ。

 そのせいか、誰にでも簡単にときめいてしまうようで、バディである僕も例に漏れずその恩恵に預かった。


 ヒメカに齎される貰魔力(サレチカ)の数値は異常に高かった。

 通常、一回の『キュン』で貯まるのは1ポイントなのに、ヒメカの場合は50から100ポイント。

 これもカンストする程の与魔力(スルチカ)を有していることに起因するのか。


 貰魔力(サレチカ)を貯める器が大きいとされる僕にとっては、この上なく相性の良いバディだ。

 無論、ツバキさんはそこまで織り込み済みだったのだろうけれど。



 ヒメカの明るく人懐っこい性格のお陰で、僕たちは想定を遥かに上回る早さで距離を縮めた。

 そうして、彼女の部屋に招かれるまでになったわけだが――




「…………あたしが、変える」


 ヒメカが、僕の目を見つめる。


 

「あたしが、リィトに『ときめき』を思い出させてあげる! 元カノのことなんか忘れるくらい……めっちゃくちゃに、キュンキュンさせたげるよ!!」



 そう言って、笑う。

 夏の日の向日葵(ひまわり)みたいに、眩しく笑う。


 ……確かに、ヒメカは魅力的だ。

 メイクを抜きにしても可愛いし、何より純粋で嘘がない。

 明るく正義感の強い、最高の女の子だと思う。

 こんな子と付き合うことができたら、きっと幸せだろう。


 けれど……僕にはもう無理だ。

 知ってしまったから。

 愛に溺れる怖さと、裏切られた時の絶望を。


 どんなに素晴らしい相手でも、僕は……

 もう、誰とも恋をする気にはなれない。


 それに、僕ではヒメカに釣り合わない。

 ツバキさんに憧れて、誰かを護るために神律師(ハーモナイザ)になったヒメカと僕とでは、根本的に違うから。


 僕が邪神徒(フェイスフル)と戦うのは、正義のためなんかじゃない。

 僕を突き動かすものは、ただ一つ。



 ――復讐心。



 いつかツバメと対峙し、復讐する。

 そのためだけに生きている。


 だから……



「このまま、ヒメカちゃんの部屋に泊まらせてもらうしかないけど…………僕のこと『キュン』てさせられるかどうか、試してみる?」



 君のときめきは、いつかの復讐のために貯めさせてもらう。


 それまで……どうかよろしくね。

 ギャルで初心(うぶ)なヒメカちゃん。



 

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