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ぎゃるめがっ!!!〜ときめきが魔力になる学園で、魔力ゼロなチョロかわギャルとバディになった話〜  作者: 河津田 眞紀@第一回Nola原作大賞早期受賞×2作
5.ギャルとギャル

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迷探偵☆ヒメカ




 ――ライゼント学院の寮は、世間一般の学生寮に比べ、実に自由だ。


 部屋は清潔で、広さも充分。

 食堂の食事は美味であると評判。

 そして……隣接する男子と女子それぞれの寮は、生徒間の了承と受付の申請さえ通せば、互いの部屋を訪問可能。

 さらに言えば、宿泊までできてしまう。


 それもすべて、愛神(ニナヨ)科という愛に溢れたクラスを抱えるが故の特性だ。




 ということで。

 それぞれの寮で夕食を食べた後、


「――おじゃまします」


 ヒメカの部屋に、リィトが訪ねて来た。

 自ら招いておきながら、ヒメカは(ほ、ホントに来た……!)と身体を強張らせる。


「テキトーに座って! 今お茶いれるから!」


 緊張を誤魔化すように言うと、リィトがスッと紙袋を差し出し、


「……これ」

「ん?」

「プリン。よかったらデザートに」


 と、手土産を提示した。

 ヒメカは動きを止め、唖然とする。


(ウソでしょ……急に誘ったのに、手土産まで持参するとか、高一男子のすること?! この異常なまでの気遣いの良さ……間違いない。メガネ君って、やっぱり……!)


「あ、ありがと! プリン超好き! スプーン持ってくるね!」


 ダメダメ、動揺するな。いろいろ確かめたくて、彼を呼んだのだから。

 そう言い聞かせながら、ヒメカは水出し麦茶をコップに注ぎ、ローテーブルに置く。


「はい、お茶! わ、プリンおいしそ! いただきまーす!」


 向かい合わせに座り、プリンを食べ始める二人。

 暫し、咀嚼音だけが部屋に響く。


「………………」

「………………」


(……いや、気まずっ!! まぁ、あたしが誘ったんだし、あたしから話切り出さなきゃ始まんないか……)


 などと、ヒメカが考えていると、


「……ぬいぐるみ、好きなの?」

「へっ?」

「部屋にいっぱいあるから」


 先に、リィトが口を開いた。

 恐らく、気を遣って話を振ったのだ。


「う、うんっ、めっちゃ好きっ。このブタのぬいぐるみは『らぶたん』! ちっさい時からずっと一緒で、ここはあたしが縫い直したんだ! こっちのコはお店でひとりだけ売れ残ってたから、お小遣いはたいてお迎えしたの! こっちはゲーセンで一目惚れして……」


 ……はっ。

 と、ヒメカは一方的に話していることに気付き、切り上げる。


「あ……あはは。あたし、何にでも愛着持っちゃうから、部屋中モノだらけなんだよねぇ。もらったものとか思い出のものとか、なかなか捨てらんなくて」


 その言葉通り、ヒメカの部屋はモノで溢れていた。

 ベッドやソファーの上はぬいぐるみだらけ。

 壁には写真や、誰かからの手紙、カラフルなメモや手描きの絵が飾られている。

 棚の上にはピアスにリング、ネイルチップや化粧品がずらりと並び、まるで小洒落た雑貨屋のようだった。


 それらを見回し、リィトは感心したように言う。


「物を大事にするのは良いことだよ。それに、綺麗に片付いてる」

「そ、そおかな?」


 ぎこちない笑顔を返すヒメカ。

 そこでまた、会話は途切れてしまった。


 こんなはずではなかった。

 せっかくリィトが部屋に来てくれたのに。

 彼を誘ったのは……伝えたいことがあるからなのに。


(なにビビッてんだ、ヒメカっ! ギャルならビシッと、言いたいコト言わなきゃ!!)


 ……こほん。

 ヒメカは意を決し、一度咳払いをする。


「……あ、あのさ」


 そして、少し声を上擦らせながら、リィトの顔を遠慮がちに見つめ、



「い、今さらなんだケド…………『リィト』、って呼んでもいい?」



 用意していたそのセリフを、なんとか絞り出した。

 直後、ヒメカの顔が、ぶわっと紅潮する。


「ほらっ、あたしらバディだしさっ。その……あたしのことも、名前で呼んでいいからっ。そんくらい、当たり前でしょ?」


 余裕の笑みを浮かべているつもりなのだろうが、思いっきり引き攣っている。

 心臓の高鳴りが、表情から丸わかりだった。

 

(うわ、うわ、言っちゃった! でもでも、おねーさんにもらったアドバイス、ようやく実行できた! さっきメルりんに名前呼ばれた時、やっぱ嬉しかったもんね。仲を深めるには、名前くらい呼び合わなくちゃ!)


 唐突なヒメカの言葉に、リィトはまばたきをしてから……少し笑って、こう答えた。


「じゃあ…………僕も『ヒメカちゃん』、って呼ばせてもらうね」


 ……瞬間。

 ヒメカの鼓動が、ドッ! と停止する。


(ちゃ……『ちゃん』付け?! ギャルに向かって、まさかの……『ちゃん』付け?!)


 ――『キュン』


 途端に鳴る、リィトのバイタリスト。

 ヒメカはときめきを誤魔化すため、バタバタと手を振る。


「ちがっ、今のは……なんつーか、逆に?!」

「なんの逆?」

「とにかくっ。……リィト。そのまま……動かないで」


 ……そして。

 ヒメカは、リィトを招いたもう一つの目的を実行する。


 リィトは、言われた通りにじっとしている。

 もしかすると、ヒメカが何をしようとしているのか、勘付いているのかもしれない。


 ヒメカは、おずおずと手を伸ばすと、リィトのメガネを静かに外した。

 それから、ゴクッと唾を飲み込み……リィトの前髪を、ゆっくり上げた。


 初めて出会う、リィトの瞳。

 ……否、初めてではない。


 何故なら、そこに現れた顔は――入学式の朝に出会った、あの男子生徒のものだったから。


「やっぱり……あたしら、入学式の朝に会ったよね? 屋上緑地から降って来た男の子、リィトだったんでしょ?」


 露わになった顔を見つめ、尋ねると……リィトは観念したように頷いた。


「……うん。いつかこうなるとは思っていたけど……思ったより早かったね」


 リィトの返答を聞き、ヒメカは確信する。

 そのまま、神妙な面持ちで身を乗り出し……リィトに、こう言った。


「つまり、リィトって…………留年生なんだね??」


 ぱちん、と指を鳴らすヒメカ。

 リィトが「ん?」と聞き返すと、ヒメカは続けて、


「だって、おかしいコトだらけだったもん! キスのテク異様に詳しいし、賜魔術(アコード)使い慣れてるし、あたしの色仕掛けにぜんぜん『キュン』してくんないし! ホントは二年目の留年生だから慣れてたんでしょ? だから配布前にバイタリスト持ってたんだ! 前髪とメガネで顔隠してるのも、二年生と校内で鉢合わせた時に気まずいからっしょ? でなきゃ、こんなイイ顔面を隠す理由がないもん!」


 恐らく、こういうのをドヤ顔と言うのだろう。ヒメカは胸を反らし、「名推理」と言わんばかりに鼻を鳴らした。

 そのままリィトの言葉を待ってると……彼は、目をぱちくりさせた後、


「えっと…………留年はしていないよ」


 申し訳なさそうに、答えた。

 ヒメカはこくこくと頷き、


「うんうんっ、やっぱりそうで…………って、え?! してない?!」

「うん。君と同じ一年生で間違いないよ」

「は?! じゃあ、なんで入学式の前にバイタリスト持ってたの?! 賜魔術(アコード)も使いこなしてたし……!」

「それは……」


 前髪を分けたため、リィトの目線がよく見える。

 青みがかった綺麗な瞳が、言葉に迷うように揺らいでいた。

 

「……そうだね。予定より少し早いけど……いい機会だし、ヒメカちゃんに教えることにするよ」


 リィトは、少し姿勢を正してから、


「……九ヶ月前、僕は救われたんだ。理事長のツバキさんに」


 そう、切り出した。



 

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