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ぎゃるめがっ!!!〜ときめきが魔力になる学園で、魔力ゼロなチョロかわギャルとバディになった話〜  作者: 河津田 眞紀@第一回Nola原作大賞早期受賞×2作
4.ギャルとアイドル

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見覚えのある背中




「学校お疲れ様、メルリちゃん。時間になっても来ないから迎えに来ちゃったよ。さぁ、みんな待っているよ。早く行こう」


 スーツ姿の男が、ニヤリと笑いながら言う。

 口ぶりからして、例の撮影会の関係者のようだ。


 こんな下衆な笑みを浮かべる奴の元に、メルリを行かせるわけにはいかない。

 ヒメカはスケーターの車輪を起動させると、メルリに背を向け、

 

「メルりん、逃げるよ! 乗って!」


 背中に乗るよう、呼びかけた。

 メルリは一瞬迷うが……すぐにヒメカの背中に飛び乗った。


 そのままおんぶする形で、ヒメカは逃げ出す。

 スケーターの車輪が、急発進にギュルルッと唸る。


「あぁっ!? テメ、待ちやがれ!!」


 後ろから追いかけて来る男。

 人間の足でスケーターに追い付けるわけがない。


 そう、ヒメカは余裕をかましていたのだが……


「……あり? なんか、いつもより遅くない?」

「これ……体重設定とか大丈夫なの?」


 ……そうだった。

 普段、ヒメカの体重で快適に走れるようカスタマイズしているため、二人分の体重がかかると動作不良を起こすのだった。


 それでも、しばらくは走れるはず。

 男を撒くまで、なんとか耐えてほしい。


 そう念じたが、スケーターはみるみる重くなっていき……

 やがて、ガガガッとストッパーがかかり、


「わわっ……うわぁっ!」


 ついに動作が停止して、前に倒れ込んだ。

 おんぶしていたメルリごと、地面に転がる。


「いたた……メルりん、だいじょぶ?」


 手を伸ばすヒメカに、暗い影が落ちる。

 男が、二人に追い付いたのだ。


「ったく、手間かけさせやがって……みんな高い金払って待ってんだよ。ほら、早く来い!」


 言いながら、メルリの腕を乱暴に引っ張る。

 ヒメカの頭に、一気に血が昇る。


「やめて! メルりんを離して!!」

「あぁ? 部外者は黙ってろ! いや……なんならお前も来るか? なかなか良いカラダしているからなァ」


 投げ出されたヒメカの脚を、いやらしい目で見下ろす男。

 ヒメカは奥歯を軋ませる。

 こんな時、賜魔術(アコード)が使えたら……そしたら憧れのツバキのように、みんなを護れるのに。


「ライゼントのガキは貰魔力(サレチカ)集めに必死なんだろ? まったく、いいカモだぜ。いま仲間を呼んでるから、お前のことも連れてってやる。楽しみにしてな。ガッハッハ!」


 男の魔の手が、ヒメカに迫る。


(くっ……誰か、助けて……!)


 目を瞑り、そう祈った――その時。



「――そこまでだ」



 聞き覚えのあるセリフ。

 目の前に降り立つ黒い髪。

 ふわりと蘇る、桜の香り。


 ヒメカと男の間を隔てるように現れたのは、ライゼント学院の制服を着た男子生徒。


(もしかして……あの時の先パイ?)


 そう思い、ヒメカは胸を高鳴らせるが……


「二人は僕のクラスメイトだ。危害を加えるのなら学院と警察に通報する」


 ……そのセリフと声に、ぎょっとする。

 まさか……


「め……メガネ君?!」


 そう。現れたのは、リィトだった。

 珍しく背筋を伸ばしているため、気付かなかった。意外と背が高いことに、ヒメカは驚く。


「はっ。ヒーロー気取りのクソガキが。これは合意の上での取引だ。大人の仕事に口挟むな!」


 リィトに対し、ヤクザのような剣幕で怒鳴り散らす男。

 しかしリィトは、冷静にヒメカの方を見て、


「こう言ってるけど……実際どうなの? ヒメツカワさん」


 そう聞いてくるので……ヒメカは大声でこう答える。


「ぜんっぜん合意じゃない! あたしたちのことひん剥いてマワすつもりなんだよ、コイツ!!」


 ……それを聞いた途端。

 リィトの空気が、変わった。


「……そう。なら――手加減する必要はなさそうだね」


 ――直後。

 リィトが、わずかに手を振るった。


 一瞬だった。生み出された緑の蔓が男の両足をぐるぐる巻きにし、そのままぐいっと宙に持ち上げたかと思うと……

 ビルの壁に生やした木の枝に引っ掛けるようにして、逆さ吊りにした。


 さらに、ばたばたと暴れる両手首と、うるさい悲鳴を上げる口を氷漬けにして固める。

 男はあっという間に、高いビルの横で吊し上げの刑に処されてしまった。


「す、すごいコントロール……」

「二人とも、怪我はない?」


 呆気に取られるヒメカたちに、リィトが手を伸ばす。

 ヒメカはぽかんと口を開けたままだが、メルリはぽっと頬を染めた。


「う、うん……ありがとう、リィト君」


 メルリが手を掴んだ時、リィトのバイタリストが『キュン』と鳴った。

 もしかしなくても、メルリのときめきだ。

 メルリはますます顔を赤らめ、恥ずかしそうに目を逸らした。


「まさか、おんぶしたままエアスケーターで走ったの? そりゃあ転ぶよ……大丈夫?」


 メルリを立ち上がらせた後、リィトはヒメカにも手を差し伸べ、呆れたように言った。

 ヒメカは「あはは」と笑いながらその手を取る。


「だって、夢中だったからさぁ。でも、こんくらい全然ヘーキ……って、いたぁっ!?」


 立ちあがろうとした途端、膝に激痛が走る。

 よく見ると、派手に擦り剥いていた。


「うぅ、やっちゃった……あ、でもヘーキだから! とりあえずここから離れよ?」


 無理やり笑っているが、本当はものすごく痛い。唇を噛み締めないと耐えられないほどだ。

 そんなヒメカを見つめ、リィトは小さく息を吐くと……


「……はい」

「えっ?」

「おぶってあげるから乗って。寮まで送るよ」


 そう言って、背中を向けてひざまずいた。

 思わずヒメカは、「へっ?!」と素っ頓狂な声を上げる。


(ちょ……男の子におんぶしてもらうとか、経験ないんですケド! そんなんしたら、めっちゃ密着して……ドキドキしちゃうじゃん!!)


 ――『キュン』


「や、これは違くて……別に、恥ずかしいとかじゃなくて……!!」

「いいから。あの人の仲間が来る前に、早く逃げるよ」


 有無を言わさない冷静な声に、ヒメカは「うっ」と唸ってから……意を決して、リィトの背中にしがみついた。




 * * * *




 ――撮影会の男を宙吊りにした現場を離れ、ヒメカたちは学院の寮の前まで辿り着いた。

 メルリの家は、ここからそう遠くないらしい。


「……じゃあ、ここで」


 メルリが足を止め、言う。

 どこか吹っ切れた笑顔に、夕焼けが反射している。


「これ、リィト君のブレザー。遅くなっちゃったけど、返すね」

「わざわざありがとう。送らなくて本当に平気?」

「うん。さっきマネージャーに連絡したから、迎えに来てくれると思う。本当にありがとうね、リィト君。それから……ヒメカも」


 急に名前を呼ばれ、ヒメカはドキッとする。

 そして、嬉しさと照れ臭さが混じった笑みを浮かべながら手を振り、


「ど、どーいたしましてっ。気をつけてね、メルりん。また明日、学校で!」

「うん。明日からまたがんばろうね。足、お大事に」


 そう言って、メルリは夕日の沈む方へ去って行った。


 その後ろ姿を見送り、ヒメカは息を吐く。

 一時はどうなることかと思ったが、メルリが無事でよかったと、胸を撫で下ろす。

 それから、隣にいるリィトに笑いかける。


「ありがとね、メガネ君。助けてもらった上、寮まで運んでもらっちゃって……まじ感謝」


 まさかおんぶされることになるとは思わなかったケド。

 と、先ほどまでの密着を思い出すとまた『キュン』が鳴りそうなので、無理やり考えないようにする。


 リィトは夕日を背負いながら、静かに首を振る。


「ううん。僕も寮に帰るところだったから。気にしないで」

「そっか。メガネ君も帰るついでで……って、え?」


 理解が追いつかず、目を点にするヒメカ。

 リィトは、眼鏡のブリッジをすっと押さえ、


「僕も学院の寮に住んでいるんだ。足、痛いでしょ? 中まで送るよ」


 そう、優しく言うものだから、ヒメカは……嬉しさと緊張と、少しの恥じらいを感じたのち、


(……はっ。これって……もしや、チャンス?!)


 きらんっ、と目を光らせ、リィトの腕をガシッと掴み、


「……来て」

「……え?」

「あたしの部屋…………来て」


 という、大胆な誘い文句を放った。



 

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