表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢リリアナ断罪されたので旅に出ます 『悪役令嬢観光録』 ―文化を巡り、文明を繋ぐ旅―  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/92

Scene9「黒幕構造暴露」

オルビス・ハーモニア中枢――

 世界霊脈統合管制室。


 無数の霊脈航路図が、空間投影で広がっていた。


 だがその光は、ところどころ歪んでいる。


 流れが滞り、渦を巻き、まるで呼吸を乱した生命体のようだった。


「統合同期率……七十四%で停止」


 管制官の声が震える。


「このままでは霊脈循環が分裂します!」


 会議層には各国代表が集結していた。


 緊迫した空気の中――


 重い扉が開いた。


 そこに現れたのは、監察局の制服を纏った一団だった。


 その先頭に立つ男。


 カルディオンの補佐官として知られていた人物――

 特務監査長ヴァルセイン。


「騒がしいですね」


 静かな声が室内を貫く。


 護衛兵が動こうとするが、彼はゆっくり手を上げた。


「抵抗は無意味です」


 背後の術式結晶が一斉に起動する。


 霊脈管制系統の一部が、彼らの制御下に移行した。


 どよめきが起こる。


■黒幕の告白


 ヴァルセインは霊脈航路図を見上げた。


「統合霊脈ネットワーク……」


「実に美しい幻想です」


 彼は淡々と言う。


「我々は、この統合を失敗させるために動いていました」


 会議室が凍り付く。


「各地の同期障害」

「航路暴走」

「転移遅延」


「すべて――我々の誘導です」


 アルヴェルが怒声を上げる。


「なぜだ!」


 ヴァルセインは振り向きもせず答える。


「文明統合は文化消滅を生むからです」


■監察局残党の思想


「霊脈統合は、文明の均質化を招く」


「交通が統一されれば」

「文化は効率に従い」

「地方性は消える」


 彼は指先で航路図を撫でた。


 航路がすべて中央へ集中するモデルが浮かび上がる。


「歴史を見なさい」


「統合された文明は、必ず中心文化に吸収される」


「文化は守るものです」


「だから我々は――」


 冷たい声が続く。


「文明の分断を維持する」


 会議層から怒号が上がる。


「それは停滞だ!」

「文化を閉じ込めるだけだ!」


 だがヴァルセインは微動だにしない。


「違う」


「文化は孤立することで純粋を保つ」


「交流は、文化を摩耗させる」


■霊脈破壊計画


 彼は管制結晶を操作した。


 世界航路図の複数地点が赤く染まる。


「統合失敗により霊脈網は再分断される」


「各文明は独立交通体系へ回帰」


「結果――文化純度は保たれる」


 静寂が降りた。


 それは、あまりにも整った論理だった。


■リリアナの前進


 その沈黙を破ったのは――


 リリアナだった。


 彼女は一歩、前に出る。


「あなたの言う危険は……理解できます」


 会議層がざわめく。


 ヴァルセインが、初めて彼女を見る。


「だが」


 リリアナは静かに続けた。


「文化は、閉じることで守られるものではありません」


■シリーズ思想対決


 彼女は航路図を指さした。


「統合が危険なのは――」


「文化を一つにまとめようとするからです」


 彼女の操作で、航路図が変形する。


 中央集約型から――


 網状循環型へ。


 無数の小さな交流路が重なり合う構造。


「旅は」


 リリアナは、はっきりと言った。


「文化を均すのではなく」


「繋ぐんです」


 ヴァルセインの眉が僅かに動く。


「文化が出会うことで」


「新しい文化が生まれる」


「それは消滅ではない」


「進化です」


■霊脈文明の本質


 エルナが前に出る。


 瞳が淡く発光していた。


「霊脈は……」


 静かな声が空間に響く。


「循環装置」


 霊脈航路図が、鼓動のように明滅する。


「閉じた流れは、必ず腐る」


 彼女はヴァルセインを見つめた。


「流れるから……文化は生きる」


■最終暴露


 リリアナが証拠結晶を掲げる。


 投影された記録。


 監察局残党による操作ログ。

 統合障害誘発術式。

 航路誘導アルゴリズム改ざん。


 証拠は、否定の余地がなかった。


 各国代表の表情が変わる。


■思想の敗北


 ヴァルセインはしばらく黙っていた。


 やがて、静かに呟く。


「……文化は、争いを生む」


 リリアナは頷いた。


「はい」


「でも」


 彼女は真っ直ぐに答えた。


「文化は――」


「人を出会わせもします」


 沈黙が降りる。


 霊脈航路が、再び安定し始めていた。


 護衛隊が動き出す。


 ヴァルセインは抵抗しなかった。


 ただ最後に、航路図を見上げる。


「……もし統合が成功すれば」


「世界は、どんな姿になる?」


 リリアナは微笑んだ。


「旅人が、自由に行き交う世界です」


「文化が競争ではなく――」


「交換される世界」


 彼が連行されると同時に。


 霊脈統合率が再上昇を始める。


 航路光が、世界地図を優しく包み込んだ。


 リリアナは、静かに呟く。


「文明は、繋がることで生きる」


 エルナが頷く。


「流れ……戻ってる」


 世界霊脈は、再び脈打ち始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ