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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

"キャンドルパーティーは盛大に"

掲載日:2025/12/09

「死蝋に、恋なんか出来るもんか」


そう言うと骸骨が嗤う

一切の音が無い、仄暗い地下管理庫の中で、その声は耳障りに響き渡った



「あんまり笑うなよ」


僕は握った拳で骸骨を叩く

一介の壁掛けに過ぎない彼は、哀れにも僕の拳を頭蓋に受けてぐらぐらと揺れた



「動けないヤツを叩くのは卑怯過ぎないか?」


抗議する骸骨を今度は蹴飛ばす

彼が大袈裟な音で振り子のように揺れるのが面白過ぎて、つい蹴飛ばし過ぎてしまった


骸骨はすっかりしょげて、言葉を話す元気さえ失った様だった



「死蝋にだって」


「恋は出来るんだ」


保管庫には旦那さまの趣味で、様々な『人間で作られた変なもの』が保管されて居る

僕もそうした『変なもの』の一つであり、簡単に言えば『死後に全身が蝋と化した少年の亡骸』だ


この様な屍体は稀らしく、僕は基本的にはガラスケースに保管され、定期的に躰をメンテナンスされて居る



僕が恋をして居る相手もまた『死蝋』であり、『少年』だった


いつも彼は、僕の向かい合うような陳列のガラスケースに保管されていて、今みたいな『誰も視てない、動いても大丈夫な時間』にすら動こうとしない


意思自体はちゃんと存在するらしく、考えの読み取れない視線で僕を視て居る時がある


彼の眼で視られると、僕はいつも胸がむずむずして眼を逸らしてしまう

いつの頃からか、僕はそれが『恋』だと解り始めて居た



「ねえ」


「隣、良いかな?」


ガラスケースの中で物憂げに、椅子に座って居た死蝋の少年の隣に、僕は無理矢理に腰掛けた


無理に腰掛けた事もあり、ほとんど僕は椅子になんて座れて居なかった

それに気が付くと少年は「座りなよ」と、少し自分の座る位置をずらして場所を空けた


それでも座ると躰同士が触れ合って、僕は在る筈も無い心臓が溶けてしまいそうな程にすら思えた

少年の肌はしっとりとして居て、でもはっきりと、氷より冷たかった



その時、管理庫に通じる階段から慌ただしく騒ぐ声が聞こえた

声達は口々に「火事だ」という内容の事を騒ぎ立てて居た



「逃げよう」


僕は少年の手を握ると、立ち上がった

しかし、少年はきょとんとした顔で「何処へ?」と僕を視る



「階段、ないし階段の上が燃えているなら」


「普通の生き物ならまだしも、僕たち蝋細工は助かる事が出来ないよ」


握っていた手がこちらを強く握り返して、僕を椅子に座らせた



「それよりも話そうよ」


「僕たちは、どれくらい視つめ合って居たと思う?」



「………二百三十年」


「正確には二百三十二年と、六十五日だよ」



この部屋の唯一の扉が、勢い良く開く


そこから顔を視せたのは上の階からの助けなどでは無く、激しい炎と、それによって起こる熱い風、そして死だった



「ずっと好きだった!」


時間的猶予が無い事を感じ、僕は少年に端的な気持ちだけを話した

少年はふふっ、と笑うと「知ってるよ」と答え、僕の頬に触れた



炎が、部屋の総てを芥に変えていく


僕たちは溶け始めた手を繋ぐと、少しでもお互いの躰が絡み合う様に、きつく抱き締め合った




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