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アイス食べようぜ

 図書館のソファーで爆睡を1時間ほどかました俺は、帰路についた。


 校門ではほとんど人はおらず、誰かに声をかけられることもなかった。




 学校を出て、少し歩いたところにある公園の横を通ろうとしたところ数人の男達の声が聞こえてきた。




「おい、成田! タバコ盗ってこい」




「タバコなんてやめた方が良いっすよ。先輩」




「あ? 生意気なこと言ってんじゃねえよ」




 声が聞こえた公園に目をやると、そこには俺と同じ制服を着た男達がいた。


 明らかにチャラそうな3人に囲まれている1人の坊主頭の男。


 俺はチャラそうな3人組は知らないが、坊主頭の男の名前は知っている。


 今日のホームルームでは同じ教室で受けていたクラスメイトである。




 成田寛司(なりたかんじ)


 1年の時は違うクラスだったが、お調子者で目立ちたがりな性格から廊下などで騒いでいるところを度々目撃したことがある。


 野球部の次期エースとして期待されていた。




 だが、1年の3学期から誰かと騒いでいる所を見なくなった。


 その理由はおそらくあの噂が原因だろう。


 あの噂とは、友達を作っていない俺でも聞いたことがある。


 成田寛司は不良の先輩と仲良くつるんでいる。


 さらに野球部をやめたなんて噂まで聞いた。


 噂なのでどこまでがほんとでどこまでが嘘かはわからないが、見た感じ仲良くつるんではいないと思う。




「早く行ってこい」




 そう言われると、成田は公園を出て歩き始めた。


 成田がいなくなった公園を見ると不良3人組が笑いながら話していた。




「あいつ、ほんとに野球部辞めたらしいぜ」




「まじかよ、ちょっと脅したら辞めるなんてバカにも程があるだろ」




 俺をそれを聞き、少しの苛立ちを覚え成田の後を追った。




 成田は公園の近くにあるたばこ屋に入って行った。


 そのたばこ屋は少し古びた建物で外の看板にはたばこの文字だけ書かれていた。


 外から窓の中を見る感じタバコ以外にもお菓子や飲み物なども売っていた。


 タバコが置いてある駄菓子屋といったところだろうか。




 俺も成田の少し後から店の中に入った。


 中には成田以外にも他のお客さんが何人かいた。女子高生2人組がアイスの入ったケースの前で何を食べるか悩んでいたり、お爺さんがレジ横に置かれたたばこを見て悩んでいた。


 お爺さんはタバコを3つ程手に取り、レジに足を向けた。


 年老いた優しそうなお婆ちゃんがレジをしながらそのお爺さんと話をしていると、成田がその隙にレジ横のたばこを一つ手に取り、ポケットに入れた。


 そのまま成田は入口付近にいた俺の横を早歩きで通り過ぎ、外へ出て行った。




 俺も急いで外に出て、走って追った。


 下を向きながら早歩きをしている成田に追いつき呼び止めた。




「ちょっと待てよ」




 成田は驚き振り返ると目を逸らして口を開いた。




「え、なに? 俺になんか用すか? 」




 呼び止めたは良いもののどーすれば良いかわからない俺は、とりあえず適当な理由をつけて会話をすることにした。




「特に用ってことはないんだけど、2年1組の成田寛司だよな。同じクラスなんだけど、俺のこと知ってる? 」




 成田は少し黙り込んで答えた。




「えっと、わりい。わからないや。誰だっけ? 」




「そうだよな。喋ったこともないもんな。佐野藍人、窓側から2列目の1番後ろの席に座ってたんだけど」




「そ、そうか。悪いな、俺急いでるから、また明日学校で」




 そう言ってから前を向いて、また歩き始めようとするが俺は口を開いた。




「タバコ」




 成田はその言葉を聞いて、再度振り返り焦りながら口を開いた。




「た、タバコ? タバコがなんだって言うんだよ」




「返して来いよ」




 成田は俯いたまま少し黙り込んでから観念したのか口を開いた。




「なんだ。見てたのかよ……。俺さどーしたら良いのかわからなくて」




 そう言って話を続けようとした成田に対して、俺は少し微笑んでから口を挟んだ。




「話ならあとで聞くから。たばこ屋戻るぞ」




 そう言って俺がたばこ屋の方に歩き始めると、後ろから悲しそうな顔でついてきた。


 きっと罪悪感で押しつぶされそうなんだろうな。成田の顔をちらっと見るとそう感じた。




 店に入るとほとんど客はいなくなっており、先ほどアイスを悩んでいた女子高生2人組くらいだった。


 てかこいつらいつまで悩んでるんだよ。なんて思いながらも成田とレジにいるお婆ちゃんのところへ向かった。




「ごめんなさい。実はこれ……」




 先に口を開いたのは、成田だった。


 タバコを持った手を差し出し、泣きそうな顔で言葉が詰まる成田を見て俺はため息をついてから口を挟んだ。




「実はこれ、こいつが父親に頼まれたみたいなんですけど、高校生だけじゃまだ買えないですよね? 」




 成田は驚いてこっちを見てきたが、俺はできるだけ自然に振舞った。


 するとお婆ちゃんはなにも疑わず、「ごめんね。未成年だけじゃ買えないのよ」と言って、タバコを預かった。




「じゃあ代わりにアイスでも買おっかな」




 と言って女子高生がいるアイスが入ったケースに近づき、カップに入ったバニラアイス2つを取り出し、レジに戻った。




「これください」




 俺は会計を済まし、お婆ちゃんに軽くお礼を言ってから成田を連れて店を出た。




 店の外に置いてあるベンチに腰掛け、アイスを袋から取り出す。それを慣れない笑顔を作ってから差し出した。




「一緒にアイス食べようぜ。時期的には少し早いかもだけど」




 なぜここまでしているのか自分でもはっきりとはわからないけど、おそらく今の成田が今の俺に似ていたから。


 自分を見ているようで苦しかったのだろう。




 成田は小さな声で礼を言ってからアイスを受け取り、俺の隣に座って口を開いた。



読んでいただき本当にありがとうございました。

「面白かった」とか「続き早く読みたい」と思っていただけましたら、モチベーションにもなりますので評価とブックマークをよろしくお願いします。

また明日もお楽しみに!


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