Mirai's Café Story 2
※このお話はフィクションです。実際の団体や事実とは一切関係ありません。
ある日の月が綺麗な夜──
少年は天上の姫君を見た──
ある朝少年は目覚めると、己の日常が崩れ去っていたことに気づいた。
──異世界転移。
お約束の例にもれず、召喚魔法とやらで。
言語?通じる。
空気?ある。
魔法?ファンタジー? 実装されてるよ畜生め!
考えうる能力は付与されており、さらにはお約束に漏れず世界の歪みを正すために呼んだ?
嫌な予感は的中し、魔王?とやらをを倒せと。
拒否権?あるけど良いことはないよ? とか言われたら断れないわね。
しかしあれですよ。俺を呼んだ連中がやたら肥えているパターン。これはあかんやつ。
とりあえずは話を合わせて、旅立ちまでは友好的に…。
で、旅立った瞬間、監視とパーティーメンバー(笑)を首トンして、自由へ駆け出す訳ですよ。やったぜ!
さて。とは言っても別に無計画で動いている訳では無く。
大体こういう世界のお決まりは、敵対している側の長が実は良い奴で、帰る手段も知ってるんだよね。
とりあえずはそこを目指して全力疾走! 待ってろよ魔王!
───────
そうして駆け出したはいいものの、そもそも魔王ってどこにいるん?
日が暮れてきて途方にくれたそんな時、ちょうど少し大きめの街に。
宿をとり、頭を悩ませる夜。
こんなことならもう少し情報を聞いてから首トンするべきだった…
なんて思ってたら窓がバーン! あ、お月様めっちゃ綺麗。 飛び込む何か。
『うごくな』
え?なんか凄く艶やかで心をくすぐるお声! ついつい言うことききたくなるような…
そう心を奪われていると目の前に飛び出す白刃──を横っ飛びで回避ッ!あっぶねぇ!!
「!?」
慌てて目線を元の場所に向けると…
腰まで伸びた艶やかな髪──
赤く燃ゆる量の瞳──
蠱惑的なシルエットを魅せる肢体──
そんな月すら霞む美しさなのに、更にシスターの装いまでしたお姉さんが、
心底びっくりした目でこっちを見ている。
「なんで…? 『うごくな』」
またしても魅惑的なお声!凄くいい声だよこのお姉さん!!
しかもなんかとっても…目のやり場に困るよ!!
そんな思春期の少年らしいリビドーを抑えつつ、所帯なさげに目線を泳がせつつ、
まぁまぁ話し合いましょうよと現代人特有の曖昧な笑顔を向けると…
「うそ…。もしかして効かない…?」
ん?何の話?
────────
どうやら平和的に話をしてみると、窓からコンニチハしたこのお姉さんは、
「月都セレナ」さんと言うらしい。
曰く、自分が首トンした彼らが見つかり、王城から各町の貴族に
「国家に害を成す者。DEAD or ALIVE&褒賞&爵位格上げ」と通達があったそうで。
たまたまこの町の貴族が勤勉(笑)な方で、この世界有数の暗殺業を生業とする組織に仕事を依頼。
そして動いたのがお姉さんというわけらしい。
なんでもこのお姉さん──お名前聞いたし、セレナさんでいいか。が言うには。
「王城が下賜した宝物を略奪し、勇敢な戦士たちを皆殺しにした犯罪者」という形で
自分の首を狙ったらしい。
うーん物騒。誰だそんな凶悪な奴…あ、自分の事か。
とりあえず自分の身の上話をしてみると、半信半疑のご様子。そんなー。
どうにか自分がそんなことしていないと説明しようとしていると、宿屋の店主が怒髪天で乱入。
『うごくな』
あ、店主すっげぇ蕩けきった顔に。これはこれで発禁物では?
なるほどどうやらこのセレナさん、魅了魔法と音声魔法を極めた方で、
意思を乗せた声で一発で魅了して服従させる系統の技を使えるらしい。
すごい!格好いい!!
でもあまりに究めすぎて、日常生活でもほぼ常時発動しちゃってるらしくて、難儀しているとか。
そりゃ大変。
だからいつもは教会兼孤児院で、魅了の効きが悪い子供を相手に日々生活していると。なるほど。
しかしこれからどうしようかな…と考えていると、セレナさんが
「もし良ければ(監視の意味も含めて)、自分の運営している孤児院にしばらく拠点を置いて、
情報を集めてはどうだ?」と言ってくれた。
神か。この人。
断る理由もないし、まさに渡りに船。お世話になろう。
────────
そうして教会にお世話になってみたものの…。
…この教会兼孤児院、あまり財政状況良くないわ。
自分を召喚した肥えた連中に比べて、子供たちの痩せ方はダイエットにしてはあまりにもな状態。
うーんこれは許せませんな。
しかし自分にできることはそう多くない。
多くないからとりあえず飯でもふるまってやろう。
というわけで、ご都合主義スキル!時間停止付き無制限収納袋~(なんか出る音
幸い食材は旅に出るときにいっぱい貯めこんだ分がある。
それじゃセレナさ~ん台所借りますね~。
さて子供たちよ異世界仕込みの飯の味はどうだ。栄養を過剰に与えてやるぞ!ふはははは!
おっと慌てるな慌てるな。料理は逃げはしないぞ~
「ごめんなさい…っ! 世話をかけてばかりでっ…!」
セレナさん、めっちゃ良い食べっぷりですね。
お代わりはいっぱいあるからいっぱい食べてくださいね~。
そうして孤児院の食堂で鍋を振るいつつ、魔王の情報収集をすることはや幾日。
自分が出た後のことも考えて、教会の財政難もなんとかしなきゃな~って。
今は教会の裏手で育てている薬草とブドウ、それを使った薬草茶やブドウ酢を作って
生計を立てているっぽいけど、
やはり育てるのが難しいとかでなかなか安定しないらしい。
あ、ちなみに薬草茶はとっても美味しい。まろやかな旨味と鼻をくすぐる香味が両立していて、
それでいて後味もさっぱりしているから、いろんな料理にも合う。少なくとも元の世界には無い旨さ。
うーん。これはあまり使いたくなかったが…異世界物の鉄板、マヨネーズ無双か。
この世界も例に漏れず、マヨネーズは存在しない。卵の生食もなんの冗談かと疑われるレベル。
うっかり鑑定したらなんか菌の名前で目の前がいっぱいになった。
そりゃ殺菌という概念がないもんなぁ。
まずは生卵をどう食べようか…と思ったら、意外にもそれはすぐに解決できた。
なんか教会名物の聖水に30分ほど漬けてたら、鑑定した結果無菌になってた。聖水すげぇ!
それじゃ教会のもう1個の名物であるブドウ酢と…ブドウの種から取れました
グレープシードオイルと合わせまして…
できたよ!マヨネーズがっ!
最初にこれ食堂で振舞ったらあまりの旨味に子供たちもセレナさんも固まってたな。わはは。
これを売るとなると…容器が問題か? まぁ牛乳瓶式でいいか。
瓶詰めで売って、次買いたいときはその瓶をまた持ってきてもらう。
あとはパクリ対策か。他所で適当に作られたので食中毒を起こされて、
うちのせいにされてもたまったもんじゃないし。
聞くと教会には「聖印」ってスキルがあって、それを付与すると普段は見えないけど
聖水が触れると見えるようになる模様を刻めるらしい。
なにそれ最強のセキュリティじゃん。現代でいうところの赤外線インクやUVインクか。便利!
え?しかも時間制限で消える様にもできる? ほな賞味期限過ぎたら消えるようにすれば
識別もできるか…。
卵の滅菌、瓶への聖印付与…うん。教会で既得権を得て商売していくには一番良い形だな!
尚、売りに出したら飛ぶように売れた。やったね!
…予想通りパチモンも一杯出てきた。
みんな自滅していったけどね!ざまぁみろ!!
───────
そんな日常を送っていたある日。
目の前にはそれはもう見事に地に伏した土下座体制のセレナさんのお姿が。
ちょっとセレナさん!?子供の教育に悪いですって!
慌てて別の場所へ移動し、腰を落ち着けてお話を伺ってみると、
なんでも自分にかけられている嫌疑の裏が取れたようで、
完全に王国側の捏造だと分かったらしい。
調べると、皆殺しになった人たちの葬儀はしっかり国葬で行われてたらしいけど、
対象は架空の人物で存在していなかったらしい。
良かった!責任を取らされて王国に消されたとかじゃなかったんだね!
セレナさん調査では、変わらず王城勤めしているらしい。ちょっと安心。
その勢いでセレナさんが色々教えてくれたけど、どうやらセレナさん、
暗殺業では一大勢力のTOP的立ち位置らしい。
持ち前のスキルであれよあれよと組織を掌握し、気が付いたらその立場だったとか。
いいなぁ!自分もこんな美しいお姉さんにこき使われたい!!
そんな自分の願望はまぁ置いといて、そういう立場ならもう少し財政的に潤ってそうなのですが?
と素朴な疑問をぶつけると、
どうやら受ける仕事をしっかり選ぶタイプらしく、基本は悪人である事の裏をとれた人しか
対象にしないらしい。
え?自分いきなりでしたけど?と聞くと、目を逸らしながら「ちょうど支払いが重なってて…
すごく報酬良くて…」と消え入りそうな声で。
そっかーそれはしょうがないかー。結果的に何事もなかったからヨシッ!
「でもきっちり責任はとらせたから」と良い笑顔を向けてくるセレナさん。
あ、めっちゃ可愛くて破壊力高っ!浄化されるわこれ。
あまりに眩しい笑顔に、スッと目を逸らした先には広報誌。
その見出しはデカデカと「悲劇!〇〇伯爵お隠れに!」って。あっ。
現代人特有の曖昧な笑顔を返し、この話は終わりましょうか~と促す。
そうするとセレナさんは深く頷き、そして一枚の名刺を手渡してくる。
「お詫び。もしこの世界で困ったらいつでも頼って。なんでもするわ。」
な、なんでも!? というベタなやり取りは置いといて、感謝の気持ちはありがたく受け取っておこう。
しかしそうか。セレナさんには気づかれてたか。
うん。魔王の居場所が判明した。そして魔王であれば世界渡りの術が使えるという裏も取れた。
…そろそろ出立しようと思ってたところだった。
かなわんなセレナさんには。
「ねぇ。あなたさえ良ければここにずっといてもいいのよ。
私も…あなたにはいてほしい。『お願い。ここにいて』」
強烈に持っていかれそうになる意識。セレナさんや子供たちと一緒に暮らしていく…。
それはとても幸せで、甘い、甘い誘惑。
──でも、やっぱり帰りたいんだ。
そう返答されたセレナさんは、いつもの凛とした大人のお姉さんの雰囲気から、
縋るような甘えたいようなそんな表情を浮かべるが、
ふっと一つ呼吸を置いたの後に、また元の雰囲気に戻り、「そっか…」と呟き、
最高の笑顔で「いってらっしゃい! またいつか!」と送り出してくれた。
そうして、いろんな感情の整理もできた自分は、皆に別れをつげて魔王の元へ駆け抜ける。
ここで得たものすべてが自分を作り上げ、また一層強固なものにしたんだと感慨深く思いながら…
───そして元の世界へ──
────────
──ってなことがあったんすよ。
そう行きつけの喫茶店のマスターにしばらくこれなかった理由を話す。
マスターは心底興味なさそうにこちらに胡乱な目を向けながら、「…そりゃおつかれ。」と一言。
あ、これまったく信じてないわ。え?めっちゃ頑張って語ったのにひどくない?
といっても信じろというほうが無理か。
「で、そんな美女に想われてたのに、なんでこっちに戻ってきたんだ?」
お?マスター興味なさそうに思いつつもそういうところは気になるのか。
自分は、そりゃ当たり前っすよと前置きしつつ、その最たる理由を心から叫んだ。
──ネットもVTuber様もいない世界なんて無理!!
喫茶店のマスターはこちらの説明に何とも言えない表情を向けながら、
「はっ。そんなお前だから帰ってこれたんだろうな。」と言い放った。
だってしょうがないじゃん!事実なんだから!!
「まぁそういうことにしておいてやろう。──なんにせよお疲れ。」
そう言って手を差し出すマスター。労いの握手か?
手を握り、ブンブンと振り、離す。
あ、やべっ。そろそろ〇〇ちゃんの配信始まる時間だ。
じゃ、マスターまた来ますわ!!
そう言って会計を済ませて店を出る少年を目で見やりながら、
マスターは渋い顔をしつつ、先ほど握った手を見つめる。
「嘘だろ…。マジだったのか。」
────────
月都セレナは今日も日常を生きている。
あの少年が遺したマヨネーズ事業は順調。
おかげ様で標準的な肉付きを取り戻した子供たちが今日も元気に教会と院を盛り立てている。
たまに内から外からの揉め事が起きるが、少し『お話』すれば解決できる程度のものばかり。
平和な日々。
少年がここを去ってから幾日後、大規模な魔力の揺らぎが観測され、王国が少しざわついた。
私には少年からの挨拶に思えた。
きっと、無事に戻った事だろう。
ふぅ…っとため息を吐く。
少年との生活は、有体に言ってとても楽しかったし、心が満たされた。
持ち前のスキルのせいで、人とのコミュニケーションに不自由はしないが、
本心からなのか魅了の効果なのかがわからない為、自然と人と接する事を控えていた。
しかし彼はこの疎ましいスキルを全く(ではなさそうだったが)受け付けず、自然体で接してくれた。
久しぶりに心から人とのコミュニケーションを図り、その素晴らしさを知ってしまった。
贅沢を知ってしまった。
体は飢えから救われたが、心が飢えてしまっている。
そんな悶々とした日々を過ごしていたある日──。
「シスター。来客です」
そう告げる子供たち。
また何かのトラブルかと思い、誰が来たのかを訪ねると、「見たことが無いおっさん!」とのこと。
…言葉遣いを教える必要がありますね…と思っていると、更に「なんか先日までいた少年の関係者とか言っている」と告げる。
──どうやら日常は終わりを迎えそうだ。
「こんにちは。初めまして。」
そう告げる来客は、中肉中背の男性。歳は30~40歳くらいだろうか。
「こんにちは。『失礼ですが貴方は?』」
強めに言葉を紡ぐと、来客は一瞬苦虫をかみつぶした様な顔をした後、
「聞きしに勝る強い呪言だ…。不審に思わせて申し訳ない。」と頭を下げ、
2枚の名刺を取り出しこう告げた。
1枚は目の前の男のものであろう。「喫茶 Mirai's Cafe マスター」と書かれている、
そしてもう1枚は──あの少年に渡したあの名刺。
「あなたにお世話になったと少年から聞いて、その礼をしに参った次第。」
────────
「なるほど。そういうことでしたか。」
一通り客人と話し終えた私は、少年が無事に帰って日常を送っているということを聞き、
心から安堵した。
少年は、元の世界ではこの男が手掛けている喫茶店の常連らしい。
そこでこちらの世界に迷いこんでからの話を赤裸々に語って聞かせたと。
「少年は…まぁ控えめに言って大分変わった感性を持ち合わせているようでして。
《この名刺をもらったけど、結局使わなかった! なんでもしてくれるって話だから、
マスターにやるよ!》って、こっちに投げてよこしたんです。」
その時の情景が目に浮かぶようで、思わず苦笑いを浮かべてしまう。
苦労しているんだなこのマスターも。
「事情は分かりました。しかしながら、お世話になったのはどちらかというとこちらの方で…。」
そう答えを返すと、マスターは顎に手をやりながら、少しだけ笑顔になり、
ちょっとだけバツが悪そうに、
「実は…折り入ってご相談がありましてですね…」と、切り出した。
───────
「!!これは美味い!!」
そう満面の笑みで薬草茶を啜る客人は、目を輝かせている。
「いやぁ少年からこちらで今までの人生で一番美味い茶を飲んだって伺いましてね。
また飲みたいなぁというものでどれほどの物かと思いまして。つい、居ても立ってもいられず、
お礼も兼ねて伺おうって…」
急に饒舌になった客人はそう捲し立てる。
「セレナさん、是非にこのお茶を定期的に買い付けに来たいんですが!」
─少年にもまた飲ませてやりたいし…と取って付けたように最後に呟き、締めくくった。
私は少し考えた後、こう返す。
「当院としては一行に構いません。ぜひにこれで喜んでくれるのであれば。ただ…」
「ただ、そもそも私がどうやって来て、どうやって帰るのかって所ですかね?」
そう。まさしくそこが気がかりなのだ。そもそもこの方はどうやってここに…
「なに簡単な話でね。私は個人だけなら時空間を行き来できる術を持ち合わせているのですよ。」
何気なく言うが、そんな技術や魔法はおいそれと使えるものではない。
しかし、マスターが「使える」と言っているということはおそらく使えるのであろう。
そう思わせる説得力が彼にはある。
「わかりました。そういうことであれば、是非、しかし買い付けと言いますがお支払いは一体何で…」
そう私が訪ねると、マスターはこちらを見やり、何かを納得したように頷いた。
まさか私の…
「月都セレナさん。代金替わりと言っては何ですが、あなたの抱く欲求を解消できる手段があると言ったら?」
────────
思わず全力で『スケベ野郎が!!地に伏せろ!!』で言ってしまった私は悪くないと思う。
客人は気合で耐えたようだが、なぜか同日同じ時間に、街の男どもの一部が、急に地に伏せたらしい。
男ってやつは…。
説明が悪かった!!と謝りつつ説明を続ける客人が言うには、要約すると、
「僕と契約してVTuberになってよ!」という話であった。
正直訳が分からない。
客人が言うには、彼や少年の住む世界には己の姿を仮初の姿で映し、それを誰でも閲覧でき、
さらには自己と他者で遠隔での交流ができるというシステムがあるらしい。
実際にはこういったものだと彼が己の持つ四角い重厚な板を見せてくれたが…
なるほど確かに箱の中に動き回る人物と、そこに流れる沢山の文字。
「実は私の持つスキルで、世界間を飛び越えて、このシステムとつなげることができる
機器を用意することは可能なのです。」
そう告げる客人はさらにこう畳みかける。
「見たところによるとセレナさんは常時発動するタイプのスキルをお持ちで、
人とのコミュニケーションにある種の諦めを抱いている印象がある。」
さすが喫茶店のマスター。感じ取る能力が高い。
「このシステムはこちらとあちらを繋ぐときにそういった常時発動するタイプのスキルを
シャットアウトすることができまして……」
なるほど。ということは…?
「おそらく、少年との交流で他者と純粋に接する楽しさを思い出してしまい、お辛いでしょう。
…これを使えば、あなたは自身の能力の影響が全く及ばないところで人と交流でき、
それらが満たされるかと。」
これは…なんだ…。この客人は何を…。
「もちろん、活動を頑張ればよりたくさんの方と交流ができるようになります。
さらにはこれで収入を得る方法もありまして…。」
そんな…馬鹿な…。
「ぜひにお茶の代金替わりに、こちらの機器や活動の支援をs『やります!』あ、はい。」
そんな素敵な事があるなんて!!
─────────
あれ?マスターなんかお茶の種類増えた? 月静夜ってなんかいい名前だね。
え?お前のためのお茶だって?
「あぁ。初回はお試しで飲ませてやろう。」
珍しいこともあるもんだ。何?今日の天気予報雪だっけ。 …ってこの香り…。
「ほれ。飲めよ。」
恐る恐る手を付けると、少年は目を見開き意を決して呑んだ。
っ…!? マスター!これどこで…!!
「企業秘密だ。ただまぁこのお茶の生産者からは『少年によろしく』と聞いているぞ。」
少年はそれを聞いた後、なにやら神妙な面持ちでお茶を見つめ、
ゆっくりと、慈しみ愛おしそうにそのお茶を飲み始める。
時折、美味い…。本当に美味い…。と独り言を呟きながら。
「あぁそういえばこれは独り言なんだが」
ふっと意識を緩めてこちらを見やる少年。
「最近俺もVTuberとやらにハマってな。特にこの子とか…」
そうして店のモニターに映すのは、ある配信者の初配信。
その声は『なんか凄く艶やかで心をくすぐるお声』…。
その姿は『月すら霞む美しさ』…。
「どうだ? 『月都セレナ』さんって言うんだが…」
──END──
<登場人物う紹介>
【少年(主人公)】
生粋のオタクは異世界に飛ばされる夢を見続け、それが現実に。
実際に飛んだが、「今はVTuber様を追っかけるのに忙しい!さっさと帰ろう!」という精神性に。
与えられていた能力は「ALL Hero My Power(英雄憑依)」、己の知る全ての世界の主人公や英雄の力を
己の身に宿せる能力。オタクとの相性があまりにも良すぎた。
異世界転移を経て、やはり現実日本が最強か?と再認識。
実は能力は持ち帰ってきているが、「過ぎたる力は身を滅ぼす」の心で封印。
いざという時には発揮されるであろう。
異世界で味わったお茶が現実世界でも楽しめるようになり、感謝している。
最近の推しは「月都セレナ」という女性VTuber。
【月都セレナ】
主人公の転移先で教会兼孤児院を預かるシスター。
実は世界有数の暗殺組織のTOP。
義の無い対象であれば金額がいくらであれ動くが、
対象に義がある場合や痂疲がない場合はいくら積まれても動かない。
主な能力は魅了魔法と音声魔法の複合。
その麗しき姿と人を蕩かす声による魅了は、万人に通じ世界をも掌握可能。
しかしスキルはほぼ強制で発動するため、人との交流には懐疑的な部分が多く引いた感じに。
金銭難からロクに調査せずに異世界から来た主人公を暗殺しようとするが、
自分のスキルが全く効かない姿と、余りにも毒気がない姿に困惑。
監視の意を込め自身の管理する教会兼孤児院に住まわせていたが、
自分の能力が効かない主人公に心の癒しを感じていた。
そんな主人公と別れた後、空虚な生活を送っていたが、少年と同世界からの訪問者により一変。
次元をまたいだVTuber活動を全力で楽しみつつ、自身の幸せを噛みしめ前に進み続けている。
【王国の愉快なメンバー達】
国力誇示のため召喚儀式&勇者召喚の儀を行い、
魔王=悪のプロパガンダにより統治を強固なものにしようとした。
しかし、召喚の儀は成功したようで失敗しており、英雄ではなく英雄憑依が可能なオタクを呼び出した。
その結果がまさか世界有数の暗殺組織を敵に回し、魔王の逆鱗に触れる羽目になるとは夢にも思わず、
愚かしきも愉快メンバーは今日も自分の墓穴を掘る…。
【魔王】
なんか狙われてた。
実は異世界を管理する異星の神の一人で、調和と管理を司る存在。
急に出てきた主人公に対して、あのク〇国家がァ!!とマジ切れ。
動向を見張りつつ、深層意識化に魔王に会いに来る様伝えていた。
(ただし、主人公には伝わっていない。それでもオタク経験で
魔王の元にしっかり辿り着かれて、感心した。)
できることはイレギュラーを元の世界に送り返すだけで、
この世界の人間を送り込むことはできない。
主人公を送り返し、一息ついてからまた世界の管理を始めた。
【喫茶 Mirai's Cafe マスター】
今日も今日とてお茶と珈琲のこだわりのために出張。
だってしょうがないじゃん。世界一美味いお茶とか飲みたいやん?
主人公の土産話があまりにもファンタジーで、とうとう脳まで…と手を合わせようとしたが、
どうやら本当であると読み取ってしまった。
常連が世話になったなら礼を尽くさないとなと、読み取った情報からお土産を持って行った。
(尚、見事に突き刺さった模様。)
多趣味多芸で大体のことはできる。
異世界ホットラインの拡張を進めており、要望があればカフェの一室を
空間歪曲でつなぎ、リアルイベントとかもできるようにしようかと構想中。
実はセレナさんの能力には気合で耐えているだけで、セレナさんが好みドストライク。、
スキル:お茶狂いが発動していなかったら危なかった。
訪問ついでに魔王にも挨拶し、お互いの気苦労を一通り愚痴り合い。
今では呑み友であり、たまにCafeの深夜営業時間に来ている。
とある日のXのタグで、「もし悪役だったらどんな設定がありそう?3つ書いて?」というタグを見て、想像力が爆発したので。
書き散らかした第2作となります。
いかがでしょうか?
たのしんでいただけたのであれば幸いです。