1.新生活
「本日のニュースをお伝え致します・・・・」
真面目なニュースキャスターの声がテレビから聞こえてくる。ソファーに腰掛け、ルーズソックスをはく少女はゆったりとした動作でテレビの電源を切った。
その直後ドタドタと隣の部屋から足音が聞こえ、ドアが開けられた。
「おかぁぁさん!なんで起こしてくれなかったの!?入学式早々遅刻しちゃうよ」
「何回も起こしたわよ。その証拠にあんたと同じ部屋の麗依は起きて準備してるじゃない。」
その言葉に妹の優衣はこちらを見て頬を膨らませる。
「ちょっと麗依!なんで起こしてくれなかったの!?どうせ私と一緒に入学式行くのに」
「起こしても起きなかったの」
これは事実だ。起きてから等間隔に三回ほど声をかけたが全く反応がなかったので諦めた。
そんな私の言葉は受け入れられず、優衣は準備する間ずっとぶつぶつ言っていた。
「はぁ、あんたたち双子なのに本当に正反対よねぇ」
小さく漏らされた母親の言葉をどちらも無視し、それぞれにスクールバックとリュックサックを持って靴を履く。玄関に置いてある刀入れとハンドガン用のホルスターを持ってドアを開ける。
「おかぁさんっ行ってきまぁぁぁす!」「行ってきます」
外に出て空を見上げる。入学式があるからかいつもよりも青空が綺麗に見えた。
「何してんの?遅れるよ!」
「うん」
「ねぇねぇ!入学式どんな感じかな!噂では生徒会の人たちが美男美女揃いって聞いたんだけど、本当かなっ?ていうか友達できるかな?」
「優衣ならすぐ友達できるよ。それより、代表の挨拶大丈夫なの?」
優衣は試験に首席で合格したため、入学式代表の挨拶があった。昨日の夜も遅くまで何やら書き物をしていたことを思い出す。
「んんん?大丈夫っ。そんなの適当にちゃちゃっとやっちゃうよ」
優衣はいつもこんな感じだ。責任重大なことにもプレッシャーをあまり感じることなく、楽しんでする。
そんな優衣だから中学校のときは、多くの生徒から慕われていた。
私は友達一人もいなかったからなぁ。心配するとしたら私の方なんだけど。
優衣に比べ、何故か私は昔から人が寄りつかない。表情が乏しいことが原因なのだと思う。
以前気にして、鏡の前で笑顔の練習をしていたら優衣にみつかり1週間ほどからかわれたため、もうしていない。
「っていうか。麗依も頭良いのに、なんで今回下から数えた方が早い点数だったの?」
「ん?合格点までは解いたから残りの時間は寝てた。」
「おいおい、相変わらずですなぁ。本当だったら麗依が代表の挨拶だったのに。」
「いやだよ。目立つの嫌いだし。」
「そこも相変わらずすなぁ。我が姉妹は」とかなんとか言われたが、鬱陶しいので歩く足を速めた。
「ちょっとぉ。ゆっくり歩いてよぉ。ぐぅえっっ」
急に止まった私の背中で、カエルの断末魔のようなものが聞こえた気がするのは気のせいだろうか。
「いたいっ!なんで急に止まるの!?」
カエルではなく妹だったようだ。
「ごめん。もうついたから。大丈夫?我が妹」
「数分しか違わないじゃんっっっっ」
朝と同じくまたもやぶつくさ言っていたが、校舎を見上げると何も言わなくなった。
「・・・大きい」
私達の通う高校は、首をかなり曲げないと全貌が見えないほど大きかった。
「さすが進学校!!!ここで学べるなんて夢みたいっっ。」
「ねぇ。二人でした約束覚えてる?」
「んん?もっちろん覚えてるよ!」
「ならいい。行こ。」
こうして私達は、新しい生活に一歩足を踏み出した。
波瀾万丈な高校生活になるとは知らずに。




