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⊿∂-Ⅲ-

蒼、藍、黒、紫……暗く青い世界に、無数の星々が(きらめ)く。


広大な宇宙に、生身のままでは生命は存在しえない…………


その宇宙の摂理を覆すように、ごくごく自然体で宙に佇む人影があった。


だぼっとしたパーカーを着込むごく一般的な子どもに見える■■は、そうあるべきというように、自然体で宇宙を漂っている。


淡い黄緑の光を纏い、無機質な瞳で星々を睥睨するその姿は、神秘的という言葉ですら言い表せないほど……


数秒後かはたまた数日後か……■■は一つの星を見つけ、にんまりと目を細める。


もし、この場に人間(只人)が居れば、その笑みに本能で歓喜し、全てを投げ出しても■■の喜びを求めるだろう。


だが、幸いなことにここは宇宙…………生身の人間など、存在しようはずもない。


■■はいっそう満足げに微笑むと、茹だるような暑さに爽やかさを与えてくれる夏の風のような声を零す。


「人が数十人消えたとしても、世界は変わらず回っている……………………無事に戻ったのなら尚更ね。」


クスクスと鈴の音が転がるような笑い声を立てつつ、一つの水と緑と生命と……()に溢れた惑星を見つめる。






朗らかな笑みを浮かべていた■■の顔が急にサーッと青ざめる。


冷や汗をたらし、惑星から視線を外すと、小さく「もう? 早くない?」と呟いた。


暫くう゛ーあ゛ーと唸っていたが、観念したのか不満げな表情を隠すこと無く気怠そうにナニカに向けて言葉を発する。


「なに急に」

(……)

「え~やだよ」

(……)

「まだ見切れてない!」

(………………)

「そうだけどぉ……」

(…………)

「はぁ~い」


はあ……


何を言われたのか、大きく嘆息すると、渋々といった様子で右手を掲げ、淡い黄緑の光を生み出し、集める。


「もうちょっと遊びたかったな~」


駄々を捏ねる幼子のように不満そうな顔が、何処かを捉え、輝く。

ハッとしたように目を見開くと、愉悦の笑みを浮かべる。


「どうせ戻るなら()()()()を見てからでも良いよね!」


手のひらに集めていた黄緑の光の塊を、ぎゅっと握りしめる。


途端、拳から光が溢れ、■■を包み込んだ。


後に残されたのは、特筆すべきことは何も無かったとばかりに蒼が、黒が永遠と広がる宇宙空間(空の果て)


認識していなかったのか、従順なのか……一部始終を見ていた星々(彼ら)は、ただこの静かな世界を保たんと、沈黙を選ぶ。






ーー此処は闇。

(心の支え)を失い復讐に燃え、そして今に悲願が達されようとしている彼らが蠢く闇。


僅かに光る光源が、彼らの姿をぼんやりと現していた。


7つの揺らめく影は、ひとところに集まり、1つの箱を覗き込んでいる。


箱には、美しい布が敷かれ、そっと包み込まれるようにして、数十個の()が収められていた。


彼らは……いや、コハク達は、愛おしげに……懐かしげに……そして哀しげに……その石を見つめている。


収められている石達は、色も形も、大きさも、何一つ共通するものは無かったが、全てどこか柔らかい多種多様な光を纏っている。


そんな異様な静けさが芝居する暗い闇が…………………………揺らいだ。




闇から滲み出るように、人の目には見えないほど僅かに発生した黄緑の光が、人型を形作る。


「見えるから良いけどさ~暗すぎじゃない?」


宙に浮かんだままの■■は、部屋? を見回し、不満げに零す。


堂々としており、存在を隠す気のない■■だが、なぜかコハク達が気づく様子は無い。




(やっと……やっとだよ!)


……声変わりしたばかりの少年のように幼さを感じさせる少し低めの声が、部屋に反響する。


不思議なことに、誰も口を開いていないにも関わらず、声が耳朶を打つ。

……方向からして声の発生源と思われる一番小さな人影の辛うじて見えている先程まで固く閉ざされていた口が、ほんの少し開く。


「……コク…………も……うれしそう」


(そりゃそうだよハク! だってこれで僕らの悲願が果たされるんだから!)


コクと呼ばれた彼の声は、ハクと呼ばれた彼と■■にしか聞こえていないのか、熱を帯びた声色で応える声に反応する者は居ない。


……隣で蹲っていた同じ身長、フードからは同じ髪が覗く2人が揃って感慨深げに呟く。


「長かったね!」「だね…………」


……1つの影が、そっと手を伸ばし、小ぶりな石に手を触れ、慈しむように表面を撫でる。


「あの子を…………取り戻せるのね……」


……一際大きな図体を持つ者が、嗚咽を漏らす。


「かえって来るんだなっ! アイツら……がっ!」


……少し後ろで片膝をついていた2人の、冷静な声色がほんの少し熱を帯びる。


「「主様……奥様っ…………」」


……最後の1人が、己に問い掛けるように、砕けんとばかりに拳を握りしめる。


「家族をっ……取り戻せるんだな?」




ーー闇に包まれた空間が、期待と緊張に彩られ、揺さぶられた。


「……あぁ。あの狂おしくも愛おしいぼくらの世界を……………………救おう」
















「ふふっ…………これにてめでたしめでたし。かな?」

「彼らがその後どうなったのかを知る者は居なかった……ってね♪」

「まあ確かに、知る“者”は居ないわねぇ……」

「巫山戯ている暇があるなら仕事して下さいね?」

「まあまあ、良いじゃねえかたまの休息くれぇ」

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