37話。※※主との再会
伏せ字の表現が難しい……
「…………」
愉しげな声色のコハクに無言で返す。
すると、予想していた反応ではなかったようで、口を尖らせた。
「つまらないなぁ……愉しい反応が返ってくると思ったのに」
「君は……君たちは……いったい」
今度こそ求める反応が来たからか、にんまりと口が大きく弧を描く。
「じゃ、改めて自己紹介させて貰おう」
声と共にコハクが腕を振ると、跪いていた者達が立ち上がる。
「ほら、コウギョクからよろしくね」
その言葉を合図に、向かって一番左側に居た一番背の低い二人が一歩踏み出し、ローブを脱ぐ。
ローブを勢いよく脱いだ下には、揃いの新緑の瞳を輝かせ、褐色の肌に焦げ茶の髪をなびかせるそっくりの双子がいた。
「アタシはコウギョク!」
元気よく片手を挙げ、真っ先に名乗りを上げた少女は、膝下くらいまでの黒いワンピースに灰色のズボンを履き、腰に大きめの白いベルトを付けているのが見えた。
白いベルトには、黒く一際太い部分になにやら刻印がなされている鞭のようなものを携えていた。
「ボクはコクギョク……」
コウギョクに寄り添うように身を寄せ、そっと名乗った少年は、灰色のワイシャツにサスペンダー付きの黒いズボンを履き、膝丈の黒いコートを羽織っている。
コートの袖から覗く手には、腕ほどの長さの蔦のようなものが絡みついている黒い杖が握られていた。
2人は、そっと顔を見合わせると、揃って軽く頷き、此方を振り向く。
「あの日、あの時……」
「狂った双子……だよぉ!」
コウギョクの元気な笑みも、コクギョクの柔らかな微笑みも、先程となんら変わりないはずなのに、なぜだろうか。背筋が冷えるような寒さを感じた。
「狂っ……た?」
(あの子達は……)
思わず漏れた僕の声を聞き取ったのか、コウギョクが人差し指を立て、唇に添える。
「アハッ! ないしょ♪」
「コウギョク……そろそろ……」
「は~い。わかったぁ~」
もう少し何か言いたげなコウギョクだったが、コクギョクに裾を引かれ、諦めたように嘆息する。
2人は揃って並び立つと、笑みを消し、互いの手を繋ぐ。
そのままズボンの裾やスカートの裾を反対側の手で摘まむと、無言のまま合わせ鏡のように揃った礼を見せ、一歩下がる。
「次はあたくし……かしらぁ?」
間延びした、優しげな声が響いたかと思うと、コクギョクの隣に居た人影がゆったりとした動きで前に一歩出てくる。
フードを脱ぐと、行き場を得た濃い青紫の髪が流れる。後ろに流れた髪の先は既に腰辺りで揺らめいている。
黒と紫を基調とした上品なワンピースを着こなし、細く白い繊手には、下に向かうほど細くなる、樹が、蔦が果実に絡みついているようなデザインの背丈ほどの杖が握られていた。
彼女は、徐にローブに左手を突っ込み、再び取り出したときには、その手には三角に尖った黒い帽子が握られていた。
帽子をそっと自分の頭に乗せると、長い睫毛を震わせて、閉じていた目を開いた。
「あたくしはヒスイ……」
現れた薄い藍の瞳は、此方をしっかりと見据えるも、哀愁に揺らめいていた。
「哀しみの末、禁忌に手を出した愚か者よ~」
「あ……館の……」
僕の言葉を聞くと、哀しげな表情は一変し、人当たりの良い柔らかな笑みを浮かべる。
「そうよぉ~お久しぶりねぇ~」
ヒラヒラと手を振ると、そのまま片手でワンピースを摘まみ上げ、そっと腰を落としつつ、軽く頭を下げた。
そっとヒスイが一歩下がったのを合図として、隣の大きい影が勢い良くローブを脱ぎ捨てる。
「俺ァサンゴってんだ! 宜しくな!」
ローブから覗いてはいたが、いざ目にすると圧倒される大槌……いや、金属の塊。鉄錆色の鉄塊から、太い金属の棒が伸び、それを軽々と持ち上げる腕は、筋肉がみっちみちに詰まっているのがよく分かる。
灰色のズボンと薄茶色のシャツ、それに申し訳程度に身につけられた軽鎧は、その肉体美を覆い隠すこともなく、筋肉の形をありありと見せつけるだけだった。
濃い茶色の短く刈られた髪のある頭を掻きつつ、闊達に笑う。
「理由つっても……俺ァ、つえー奴に着いてきただけだしなぁ……」
これまでのシリアスをぶち壊すような明るさを齎したサンゴに、思わず笑みがこぼれる。
「アイツらの無念を晴らすには……“コレ”が最適だろうしな……」
「え……?」
「ああ、気にすんな!」
一瞬眉をひそめたサンゴは、誤魔化すように笑うと、肩に担いでいた大槌を下ろして柄に両手を掛けると、一礼し、再び大槌を担いで一歩下がる。
……下ろしたときに床からメキャ、という音がしたのは気のせいだろう。
「はぁ……」
誰かが大きなため息を吐くと、向かって一番右側にいた2人が一歩前に出てくる。
楚々とした動作でローブをゆっくりと脱ぎ、腕に抱える。
ローブの下から出て来た姿に戸惑う。
彼らは、どう見ても執事とメイドだった。
「わたくしは名を柘榴と申します。」
燕尾服を着こなし、キビキビとした動きを見せる。
ふんわりとした黒髪には白髪が混じり、優しげに細められた灰色の瞳が、好々爺然とした雰囲気を作り出している。
「ただの使用人……頭の隅にすら留め置かれなくとも結構で御座います。」
柘榴が隣へ視線を向けると、メイドが軽く頷く。
「わたくしは紅榴と申します。」
落ちついた黒のドレスを着こなし、楚々とした動きを見せる。
艶やかな黒髪は、後頭部で1つの団子にまとめられて黒のキャップで覆われ、伏し目がちな茶色の混じった黒の瞳は、何故か意志を感じさせない。
2人は、一瞬黙ったかと思うと、互いを見もせずに息を合わせる。
「「わたくし共は、主君に従いし影の者」」
(見たことの無い人達だよね?)
思わず首を傾げる。
これまで二階層、三階層、四階層それぞれの主が順番に名乗っていた。順当に行くならば、見覚えこそ無いが、きっとこの人達が、五階層の主なのだろう。
紅榴は、スカートの端を摘まみ上げ、俯きがちに腰を落とす。
柘榴は、左手を腹部に当て、右手を後ろに回すと、一礼をした。
しかし、2人が一歩下がった後、誰も動く気配が無い。
「「……」」
沈黙が場を支配する。
その空気が少し気まずくなった頃、紅榴が隣の黒ローブをつついたことで場が動き出す。
「…………あぁ、我の番か」
(この……声は!?)
最期の1人は、気怠そうにローブに手を掛けると、サッと取り去った。
「我はメノウ……あぁだが……」
1度口を閉じると、愉快そうに口を歪める。
「貴殿には“魔王”と言った方が良いか? ……なあ、勇者よ」
肩まで伸びた灰色の髪の隙間から尖った耳が飛び出し、翠の瞳は諦めの感情を宿している。
鎖や紋章のような飾りが付いた灰色のローブを着こなし、細く折れそうな暗い色の肌には、細やかな装飾が成された黒い指輪が存在感を放っていた。
「なぜ……生きて……」
理解できない。1度目ならまだしも、確実に粒子となって消えていくのを確認したはず。
「我が生きていることは些末なことよ。それで……自己紹介。だったな……」
メノウは僕の疑問を軽く撥ね除けると、顎に手を当て、黙考しだした。
かと思うと、直ぐに此方に目を向け、話し出す。
「そうだな……我は、愛する者達を失い、だからこそ皆のために魔王の座を承った者だ」
短い間だが、宜しく頼む。そう言いつつも鼻で嗤った後、コハクに向けて丁寧に一礼し、一歩下がって沈黙を保つ。
問いかけか、追求か。玲谷がメノウにかけようとした声を遮るように、真横から月熾の声が被せられる。
「私はスイショウ。コハク様の忠実なる僕であり…………
…………此度のゲームで、『裏切り者』の役職を仰せつかっておりました」
“メイド”と言っておきながら、紅榴さんがエプロンやカフスを付けていないのは
「汚れるから」
だそうです。本来、エプロンはともかく、カフスは汚れやすい部分に付けるものじゃ無いんですか……?
また、ローブの上に一際大きなローブを羽織っている人が居ます。しかも複数(もう少し服装考えておけば良かった……)
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