26話。独りよがり
色々変えてみましたが、見にくいとかあれば教えて頂きたいです!
ドサッ
前方で、誰かが倒れる音がした。
「しっかりしろ!!」
古梓さんの声がしたかと思うと、先に行っていた人達がざわめく。
慌てて駆け寄り、見てみると……男性が倒れていた。
「えっ……?」
うつ伏せに倒れたのを返されたのか、ところどころに土が付いている彼は、静かに目を閉じていて、僕には寝ているようにしか見えなかった。
しかし、近づくと“違う”のだと分かる……いや、分からされた。
喪失に身を焦がされながらも血色のよかった彼の肌は今やほんのりと青白く、どこか顔ものっぺりしているように感じる。
「つっ……!」
慌てて駆け寄り、声を掛けようとして……男性の名前すら知らないことに気づく。
(……それほどまでに、僕の“皆を守りたい”という思いは薄かった……いや、独りよがりだったのか……)
(きっと、ただ思うだけで行動に移しもしない僕は、空回り……してたんだろう。
こんな僕に……勇者という称号は……きっと……相応しくない)
男性の前でただ項垂れていると、突然腕を強く引っ張られ、引き上げられるようにして立ち上がる。
「感傷に浸るのは良いが、この状況では感心しないぞ」
古梓さんが周囲を警戒しながら諭すように言うやいなや、またあの不思議な声が聞こえてきた。
「おや……? まだいらしたのですか……」
相変わらず姿は見えず、低く落ちついた声色ながら、聞いていると胸がザワザワとし、不安に駆られるようで……思わずゴクリとつばを飲み込む
「……では、折角ですし……もうお一方“頂いて”行きましょうか」
途端に声は不穏さを増し、心臓がバクバクとはねる
(僕も……この人みたいに……殺される?)
そう思うと、今にも逃げ出したいのに、足が竦んで動けなかった。
(逃げなきゃ……逃げなきゃ……逃げなきゃ……)
「玲谷! 行くよ!」
咲の声がしたかと思うと、グイと強く腕を引かれる。
見ると咲が見たこともないような真剣な顔をして、必死に僕の手を引いて、走ってくれていた。
足が何度ももつれそうになりながら、必死に付いていく。
少しでも背後の嫌な気配から逃げようと、ただひたすら足を前に動かす。
……気がつくと視界が開け、僕らは森から出ていた。
嫌な気配はもうしなかったけど、後ろを振り向くと、昏く暗い森の木々が残念そうにざわめいている。
(僕は……あの中で……あの人を……あの子を……見殺しにっ……!)
その恐ろしさにか、罪悪感か、僕自身にも分からないまま思わず震える手を押さえ、顔を背けたとき……背に暖かいものが触れた。
「玲谷……玲谷、大丈夫だよ。もう……森は抜けたよ……だから……ね?」
カヒユッ……フッ……
咲の声と共に、ゆっくりと背を撫でられ、知らず知らずのうちに止めていた呼吸を戻し、酸素を貪ることで、なんとか息を整える。
「すみません……ご迷惑をおかけして……」
(こんなことここまでいくらでもあったのに……取り乱して、皆の足を引っ張って……)
罪悪感に苛まれていると、俯いた視線の先に手が差し出された。
「……大丈夫ですよ。皆、最初はそんなものです。……“こんなこと”慣れるべきでは無いんですよ」
手を取り、促されるまま顔を上げると、いつもの優しげな笑みを浮かべた栗出さんがそこにはいた。
月熾さんや古梓さん、咲や凛も、僕を責めるような様子ではない。
そのことに、ただただ救われた。
「ありがとう……ございます」
「では、そろそろ此処を出るとしましょうか。俺もですが、皆さんお疲れのようなので……」
そういう月熾さんの指し示す方には、森の中で僕らを導いてくれた光があった。
未だに薄暗いこの中では、一際異彩を放っている。
近づくと、想像もしなかった光景がそこに広がっていた。
一際大きな木が2本、枝と枝が干渉し合ってしまいそうなほど近くに並べられ、濃い緑の葉が生い茂っている。
2本の木の枝と枝、根と根が絡まり合い、間に人一人分くらいの丸い空間をを浮き上がらせている。
その空間は暖かい光が溢れ、まるで僕らを誘っているようだった。
「これが……扉ですかね?」
そう言うと月熾さんは足早に歩を進め、
「ちょ、待てっ!」
古梓さんの制止も聞かずに光の中に腕を突っ込んだ。
月熾さんの腕は何の抵抗もなくするりと光の中に入り、戻した腕にも何の変化もなかった。
「大丈夫そうですね。」
何事もなかったかのような平然とした顔で笑顔を向けてくる月熾さんに、古梓さんが溜息を吐いてその肩を押さえた。
「お前なぁ……危険性があったらどうするつもりだったんだ?」
「まあ、これまでの様子ですと、致死性のある罠を仕掛けては来なさそうだな……と思ったので」
「はぁ……ったく、しちまったもんは仕方ねぇ」
呆れた。とばかりに額に手を当てている古梓さんと、あはは……と事の重大さを理解していないような月熾さんに、恐る恐る声を掛ける。
「あの……ずっとここに居るわけにもいけませんし、大丈夫そうなら進みませんか……?」
「「……」」
(え?僕何かマズいこと言ったのかなぁ……)
無言になったことに不安を覚えていると、古梓さんが笑い出す。
「ハハッ……そうだよな。いちいち気にしていても仕方ない。か」
そう言うと、無造作に光の中に入っていった。
暫くすると、光の中から声がした。
「おぉぅい! 大丈夫そうだぞ!」
そして、誰からともなく顔を見合わせ、頷き合うと、一人ずつ光の中に入っていく。
僕も……!と意を決して光に飛び込むと、眩しさに思わず目を閉じる。
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「さて……」
私以外に誰もこちら側に残っていないことを確認してから、ジッと森を見つめていると、出口の辺りに2つの人影が現れた。
「想像通りと言えば想像通りですが……」
人影はそれぞれ執事服、メイド服を着ているようで、此方からはよく見えないが、どこか称賛するような雰囲気を纏っているように思える。
軽く1度目を閉じて集中する。……スキルというものはまだ慣れない。
ゆっくりと目を開くと予想外のことに思わず目を見開いた。
(まあ、想像通りとは行かなかったものの、最低限の結果は得られましたね)
満足げに頬を緩めたのを見て取ったかのようなタイミングで人影は揃って一礼すると、霞のように消え去った。
「あぁ、やはりあのお二人がこの……いえ、そろそろ他の方にも怪しまれそうですし、合流するとしましょうか」
「しかし、良い収穫でした。残った甲斐はありましたよ……紅榴さん、柘榴さん」
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一瞬で光は収まり、目を開けると見慣れた白い部屋で、正面には椅子に座ったマネキンと簡素な扉があり、そこには先に進んでいた古梓さん達がいた。
「あれ?栗出はどうした?」
古梓さんが僕と咲の方を見るのにつられて後ろを振り向くが、栗出さんが来る様子は無かった。
(どうしたんだろう?)
心配で、探しに行けないかと扉の方に向かったとき、栗出さんが出てきた。
「いやぁ、すみません……お待たせしました」
「栗出……お前、何してたんだ?」
「別に、少し“手間取った”だけですよ」
「……まあ、そういうことにしといてやるよ」
不機嫌そうな古梓さんが、終始笑顔の栗出さんとどこか含みのある会話をしたかと思うと、軽く舌打ちをして、休憩所の扉の方へ向かっていく。
休憩所に入るかと思い、咲の手を引いて着いていくと、古梓さんが足を止めたのは、予想に反してマネキンの前だった。
(なんで人形の前に?)
不思議に思う4人を他所に、人形は無機質なガラスの目を開き、カタコトで話し出す。
「スキル ノ カイホウ モシクハ ヤクショク ノ ショウリセンゲン ドチラ ヲ ゴキボウ デスカ」
「……勝利宣言を」
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「逃げていただけて安心しました」
「あれでもしぼーっとされたら、●●様の作戦が崩れますからね。」
「もう少し残していただいても良かったのですが……」
「私たちは最後の人数調整役ですからね。仕方がないことです。一応、後で□□□様にご相談させて頂きますが……」
「それと、先程の男性の件ですが」
「恐らく大丈夫でしょう。●●様ならきっと、想定内でしょうから」
「そうですね。失礼を致しました」
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ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
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これからも更新は不定期ですが、恐らく時間に関しては8:00頃固定になると思います!……多分




