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23話。別離

そろそろ……

~~~~~~~~~~

皆が眠りにつき、休憩所が静かな暗闇に包まれた頃、闇から溶け出すようにして、人影が現れた。

「……!」

「ん……なんや……?」

ウチが微かな気配を感じて起きると、そこにはあいつがおった。

「……。……」

「……そか。あんさんやったんやな……〝暗殺者〟は」

「……?」

聞く耳も持たない様子に、自分の終わりを悟る。もうちょっと生きたかったんやけどなぁ

「いや……なんでもあらへん。そんでウチの番か。…ええよ。あいつがおらんなら、生きてても死んでても一緒や。あぁでも凛のことは心配やなぁ。ま、芯は強い子や。なんとかなるやろ…」

「……」

ふふっ……今からウチを殺す人に言わんで欲しいわ……

「まあな。なんでか体は動かんし、抵抗してもしゃーないやろ。」

「……。……、……。」

やっぱ……ウチは……笑顔で終わりたいんやわ。ごめんな……凛。約束、まもれ……んで……

~~~~~~~~~~


……朝起きると、いつかの焼き増しのように隣の部屋から悲鳴が聞こえ、飛び出す。

これは……凛の悲鳴!?

普段は物静かな彼女の、聞いたこともないような悲痛な叫びに、焦って扉を開けた勢いで部屋に飛び込む。

部屋に入ると、女性達が一カ所に集まっている。しかし凛の声はすれど姿が見えず、疑問に思って恐る恐る近づく。


……その瞬間目に飛び込んできたのは、静かに微笑んだままピクリとも動かない色奈と、そんな彼女を抱きかかえて泣き叫ぶ凛の姿だった。

「え……?」

なぜだろうか。現実を受け止めきれず、思考が止まっているのを宙から見ている自分がいる。僕は色奈の心臓に手を当てる。確認するまでもなく……彼女は亡くなっているのに。

「色奈! 色奈! 目を覚ましてよ! また……一緒に帰るって……約束したじゃん……」

必死に色奈に声を掛ける凛を見て気づく。これ以上、部外者の僕らが親友の2人を邪魔しちゃいけない……


僕の後から入ってきた皆も、これまでとは違った亡くなり方に驚いたのか、亡くなると思っていなかった人が亡くなっていたからか、ハッと息をのんでいる。

でも……彼らの表情から、“自分では無かった安心感”や“次は自分かもしれないという不安”などを感じ取って、思わず目を逸らす。

これまで誰かが死んでも、“そういう場所だから仕方ない”と割り切り、心の何処かで“自分でなくて良かった。友人じゃなくて良かった。”と思っていた僕に、そんな権利なんて無いのに……


改めて2人を見ると、なんで?とかだれが?とか、誰に聞いても答えのない問いが僕の頭の中をグルグル回る。

休憩所で誰かが消えるのはもう分かっていたのに、頬を熱いものが伝う。

そんな僕の無意識の涙を、咲は拭い、背をさすってくれた。……暖かい。

あの時……蘭雨が死んでから、誰かが死んでも悲しみはするけど、どこか他人事に捉えていた節があった。でも……僕は思っていたより色奈を、自分の壁の中に入れていたのかも知れない。

あの明るい声がもう聞こえないのかと思うと、ほろほろと涙が零れるのを止められない。


小さな嗚咽と様々な思いが重なるこの静かな部屋に、一転して嘲るような明るい声が届く。

《毎度お馴染みルリによる朝のお知らせだ~ぁ~だりぃ……》

こんな時に相も変わらずっ……!

胸が張り裂けそうになるくらいの悲しみの中、全ての元凶の一員が現れたからか、今すぐ怒鳴りつけたくなるような怒りを感じる。

……ダメだ。コイツに何を言おうと、仲間は帰ってこない……コイツにぶつけるくらいなら、今の怒りを溜め続けて、全てを仕組んだやつ……裏切り者と、魔王にぶつけてやるんだ……。そう思っても、この怒りはなかなか収まらず、ルリに怒鳴っても届くはずがないのに、怒鳴りそうになる。

皆もそう思ったのか、部屋が剣呑な空気を纏ったが、ルリは何も気づいていないかのように続ける。

《え~と? 昨夜の犠牲者は……まあ、見たとおり1人だな。……もう少し頑張ってくれよな……》

え? 最後に何か……言った?

呑気な話し方に、一気に気が抜ける。

《んで、ヒントは、あのさいが……ん?非公開?……了解しました。……非公開だってよ。》

!? さいが……?

ルリが途中まで言いかけた言葉は、誰かに制止されたようで、それ以上聞くことは出来なかった。ただ……それを聞いた栗出さんが、険しい表情をしてるのが気にかかる……

それに“あのルリ”が敬語を使う相手……その命令には従っているハクにもタメ口だったのに。

色々と問い詰めたいことはあったが、既に放送は途切れ、いくら呼びかけても応答は無い。

でも……これで良かったのかも知れない。この怒りをぶつけるべきはアイツらで、散っていった皆のためにも僕は……僕らはこんなところで止まっていてはいけないんだ……


「取り敢えず……次に進みましょうか」

情報量の多さに皆黙りこくっている中、栗出さんが口火を切った。しかし、凛は納得していないようで、色奈を抱きしめて話さない。

「やだっ!……色奈も一緒に行く……!」

人一人抱えて、凛が上手く動ける保障は無い。どう説得したものかと頭を悩ませていると、古梓さんが、凛に近づいて、優しく頭を撫でだした。

「辛いのは分かる。心の内に入れた親友を亡くしたんだからな……でも、冬野の顔を見てみな。」

その言葉に凛は、色奈を見下ろす。

色奈は相も変わらず穏やかな笑顔を浮かべている。

「……満足そう……」

「こいつがどんな思いを持って亡くなったのか私は知らねぇ。だけどな……こいつは、氷瀬なら託せると……皆を救い、自分を救ってくれると信じているんじゃぁ無いのか?」

凛が再び上げた顔は、もう悲しみに曇ってはいなかった。

「色奈……待っててね……私がきっと……」


その時、頭の中に声が聞こえた気がした。

「まったく……“ぼく”の手を煩わせないで欲しいね」

その瞬間、凛の腕の中の色奈は、光となってはじけて消えた。

「「え……?」」

目の前で起きたことが信じられない。夢でも見ているのかと自分の目を疑う。しかし、何度目をこすっても、色奈が消えた事実は変わらなかった……

「え……?なんで?色奈!色奈!」

声の主が色奈を消したことは明らかだったが、誰もそのことを言わずに、光の話ばかりしている。もしかして……?

「ねぇ、咲……あの光って……」

「うん……人を消しちゃうなんて怖い……」

やはり僕以外は声など聞こえていなかったようで、まったく話に出てこない。


「ねぇ……早く行かない……?」

咲……そんな急に……覚悟を決めたとはいえ、凛も友人を失ったばかりなんだし……

言いかけたことが伝わったのか、咲は少しすねた様子で言い募る。

「だ、だって……このままここに居たら、け、消されるんでしょ……?時間が何処まであるか分かんないのに……」

「そうだな。またあのちまこいクマに脅されるのはたまったもんじゃねぇ」

古梓さんまで……でも確かに言うとおりだよな……

以前の休憩所での出来事を思い出す。ルリなら……いや、その後ろにいるらしい奴ならやりかねない。という共通認識が僕らにはあった。


その後、手早く身支度を済ませ、一人欠けた全員で、次の階層への扉に向かう。

階段を一段降りるたびに、あの明るい声がもう無いことを呑み込んでいく。

この扉も、もう何度目か……白く無機質で、僕らを突き放しているように見えるその扉をもう躊躇することなく開けた……その先にあったのは


今にも飲み込まれてしまいそうな闇と、その闇さえも支配しているかのような深く、暗く、何処までも木々が生い茂る森だった。

「え……森……?」

色奈が茫然自失している凛を支えながら呟く。

今までは、階層主や案内する人が居て、どう進めばいいのか教えてくれた。……でも今回は、誰も居ない。

ハァ……誰かのため息が聞こえたと同時に、月熾さんが前方を指し示した。

「あの光……“目指せ”と言っているようなものではないですか?」

よく見ると確かに、少し丘のようになっているここから森の先を見ると、僅かに光が見えた。

四階層終了です!死ぬときの描写をどうしてもやりたくて入れてみたのですが、別視点が急に入って見づらかったかも知れないです、すみません(´・ω・`)


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。よろしければ下の☆マークを1つでも押していただけると作者のモチベーションに繋がります!(もし気になればブックマークもして頂けると嬉しいです(o_ _)o)

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