19話。新たな力
とうとう四階層です!
次に目が覚めると、朝のようで、皆起きていた。部屋を見まわし、死者が居ないことに安堵のため息を吐いた。
「「キャー!!」」絹を裂くような声が響いた。これは……隣の部屋から!?
駆けつけると、女性たちが部屋の隅で集まっていた。近づいてみると、真ん中には眠っている妙齢の女性がいる。
「まさか……」引き攣った顔で色奈の方を見ると、こわばった表情で頷かれた。
今回の犠牲者……はこの人だったのか……これも“暗殺者”の仕業なのだとしたら、先に突き止めないと皆が危ない……でも暗殺者と分かったとしてもどうすれば……
考えを巡らすが、十数年しか生きていない僕に良い案が思い浮かぶはずもなく、もしかしたら……! と栗出さんの方を見ると、何かをこらえるような表情で横に首を振られた。
何度見ても人の死は慣れないものだな……それが例え眠るように死んでいたとしても。
静まりかえった空間に、ルリの声が響く。
《毎朝こーれいお知らせだ~》
そののんきな声に体が強張る……ルリはいつも知りたくない現実を突きつけてくるんだ
《今朝の犠牲者は一人! いや~順調だな!》
もう怒る気力も無い……ルリに怒鳴るより亡くなった方を悼んだ方がきっと良い。
《そしてヒントは……っと、今回も非公開、か。んじゃ、次の階層も頑張れよ~
「つぎ……は……頑張れば……みんな……死なない……よ?」》
「「え!?」」
ハクの爆弾発言に皆驚く。これまで幾人かは必ず亡くなってきたからこそ、次は自分かも知れないという恐怖を押さえ込んで進んでいたのに……いや、犠牲が出ないかもしれないことを喜ぼう……
以降、ルリとハクの声はしなかった。
「なぜわざわざ私たちに知らせたんでしょう……ハクさんは集めてたはず……ですが発破をかけるため? ……いや……」
「栗出さん?」
「いえ、気にしないで下さい」
最近目が悪いのかなぁ……栗出さんの目が時々金色に見える……
気を取り直して次の階層への階段へ向かう……前に皆と別れて、扉の前の人形に話しかけに行く。
「スキルの解放をしたい」
「カシコマリマシタ ステータス ノ テイジ ト カイホウシタイ スキル ノ センゲン ヲ シテクダサイ」
声を掛けた途端にぎこちなく動いた人形が此方を向く。……ちょっと不気味だ。
っと……ステータス
「“光魔法”の解放を」
「フジヒロ レイヤ ポイント……カクニン。スキル“光魔法” カイホウシマス」
そんな素っ気ない言葉を聞き、改めてステータスを見ると、光魔法の欄の-未解放-が無くなっていた。
ステータスの光魔法の部分が点滅していた為、触ってみるとスキルの説明が現れた。ある程度理解し、顔を上げると人形はすでに沈黙していたため、お辞儀をして皆の方へ向かう。
……困った……使い勝手が良いわけじゃなさそう……まさに魔王を倒すための魔法って感じだなぁ
「玲谷、どうしたの?」
うわあっ! ……なんだ咲か
「なんでもないよ。さっきのハクの言葉について考えてただけ」
言っても良いのかも知れないけど、咲の笑顔に違和感を感じて、思わずごまかす。なんでだろう?
「……そっか。じゃあ、行こう? 皆待ってるよ?」
幸いにも咲に僕の嘘はばれなかったようで胸をなでおろす
皆に合流すると、古梓さんが小走りでやってきた。
「すまんな。待たせたか?」
「いえ、大丈夫ですよ」
古梓さんも何処かに行っていたのか……ダメだ。全員怪しく見えてくる……
階段を下り、扉を開ける。この瞬間はいつも緊張するなぁ……
「これは……」
誰かが呟く。なんだ?と見ると、そこは闘技場だった。
円形の舞台をグルッと観客席が囲う。柱の一つ一つに装飾がなされ、かつて本で見た古代ギリシアの闘技場を思わせる。
そして、正面には5つの大きな檻と中心に人影があった。
緊張の糸が張り詰める中、大きな声が広い闘技場に響いた。
「よく来たな!挑戦者達よ!」
力強いその声に、直ぐに危害を加えられないようだと思い、武器を構えながらもゆっくりと近づく。
近づいてはっきりと見えたのは、声の主の姿と……5つの檻に閉じ込められたものたちの姿だ。
見たこともないほどの大きさで、体に炎を纏っている鳥
檻の大きさに負けず劣らず、自分の数倍はありそうな亀
真っ白で、周囲に冷気をまき散らし続けている虎
空色の美しい鱗を持ち、檻の中で僅かに浮いている龍
どこか神秘的な、体に蔦を巻き、厳かな金の光を放つ馬
そして、それらに囲まれつつも平然とした顔の男。
ぼさぼさのツーブロックは濃い茶髪で、暗い赤色の目は闘志に輝いている。灰色のズボンに薄茶色のシャツを着て、その上から軽鎧を着けていた。
しかし、それらよりも目を引くのは、男が軽々と持ち上げている大槌だ。
「大槌……?」
思わず溢してから、しまった!と焦る。これまでの階層で出会った人は全員、個性的……だった。目の前の男は好戦的にしか見えず、いつ怒って襲いかかってきても可笑しくはない。そして襲われたら、僕らは抵抗する暇なく、殺されるだろう。
迂闊だった……と悔いるが、男は一瞬呆けた顔を見せると、呵々大笑と笑い出した。
「あいつが居ないって聞いて、詰まらないと思ってたが、分かってる奴もいるじゃねえか!」
とても楽しげで、少し気を緩める。
「……この階層のクリア条件は?」
しかし、栗出さんの言葉で、空気が張り詰める。
笑うのを止めても、まだ上機嫌な男
「その前に自己紹介しておこう!俺はサンゴという!よろしくな!」
「サンゴ……さん、クリア条件……は?」
凛の言葉で我に返る。そういえば……
「クリア条件は簡単だ!挑戦者達よ、俺に力を示せ!」
力を……?
曖昧な表現に首をかしげる
「お前を倒せば良いのか?」ちょっと古梓さん……
「はは!面白ぇ!だがそれだと俺の圧勝だからな!」
その態度にイラつく。まるでここまでの苦労や努力を踏みにじられたような……いや、亡くなった彼らに助けられてここまで来た僕がそれを言うべきでは無いな
「お前らには、こいつらを倒して貰う」
その声と共に、檻の中の獣たちが此方を睨み付ける。
こんなの倒せるわけ無い!見たこともないやつばかりだし……
僕らが不安でいっぱいになっていることに気づいたのか、サンゴが慌てる。……そんなに悪い人じゃなさそう……
「どんな相手なのかくらいは教えてくれても良いんじゃないでしょうか」
月熾さんのフォロー?にサンゴはホッと息をもらし、話し出す。
「ス……あぁ、お前らが戦い慣れていないのは知っている。こいつらは俺が既に弱らせた状態だ。それにそれぞれの戦い方も教えよう!」
「大盤振る舞いだな。私たちにそんなにヒントを与えても良いのか?」
「構わないさ。俺はお前達の力を見たいのであって、潰したい訳ではないからな!」
古梓さんと話すサンゴは、やっぱりどうしても悪い人には見えない。
「さて……それでは始めるぞ!六戦中の一戦目!お前らの相手はコイツだ!」
サンゴが指し示した檻には、大きな鳥が炎を纏って佇んでいた。心なしかサンゴに怯えているようだったが、サンゴが続いて僕らを指すと明らかな敵意を向けてきた。
その生物?の心は読めないが、サンゴと戦いたくない!と言っているようだ。
「こんなの勝てっこないよ……」
咲が呟くが、それは皆思ってることだ。
檻が開かれるのをいまかいまかと待ちわびるそれから、一歩でも離れようと後ずさる。
恐ろしさに震える僕らを他所に、檻は開かれようとしていた。
「コイツは不死鳥-フェニックス-その姿と特徴から伝説の生き物の名が付けられた。……さあ、お前らはどう倒す?」
サンゴが弱らせたとはいえ、不死鳥と呼ばれる生き物!玲谷たちはどう倒すのでしょう!……ホントに
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