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17話。魔女

いざ魔女の元へ!

「色奈さん。〝そうとも限らない〟とは?」

「希望は捨てたらアカンやろ。それに……アイツらがなんの希望も残さないとは思えへん」

ハクたちには良心がある……ってこと?

「ちゃう。アイツらは希望を見せてたたき落とすんが好きみたいやから」

まるで心を読んでいるかのような色奈の返答に目を丸くする。


「そう……だな。少しでも希望をあたえてくれるなら、此方はそれを最大限活用してやろう」

古梓さんはそう言うと、抑えていた人達を手早く何処からか出した縄で縛り、立ち上がった。

「魔女は恐らくこの屋敷の地下にいるのでしょう。さて……戦える方のみ着いてきて下さい」栗出さんの言葉に、数人が立ち上がる。僕、咲、月熾さん、凛、……色奈。


覚悟を決め、扉をあけようとするとドアノブに触れる前にドアが開く。

「え……?」戸惑っていると、扉の先から何かを持った執事さんが入ってきた。

「ご歓談のところ申し訳ありません。ただいまお時間ございますでしょうか。」よく見るといくつもの小さな鞄を持っているようだった。

「え、ええ。大丈夫ですが……」

「それはようございました。見たところお客様方は大きな鞄をご使用の様子。こちらのポシェットをぜひご活用いただければ幸いです。」

そういって一人一人に渡されたものを見てみると、腰に巻くベルトと小さなポシェットだった。もしかしたら……と部屋から鞄を持ってきて、中身を入れてみると、見た目とは裏腹に全て収納することが出来た。

「いいのか?こんなものを渡して。主人の不利になると思わないのか?」

「ご心配いただきありがとうございます。そちらは主人の命によりお配りしているものですのでなんら問題はございません。あぁ、お客様方を害そうという考えはございませんのでご心配なさらずとも大丈夫です。」

主人が?ってことはこの階層の主だよね?

「信じられないよ。嘘ついてるかもしれないじゃん!」咲……?

「嘘でもそれ以下でもないのですが……あぁ、では少しお教えできる範囲ですが。」

主人が直接おっしゃったわけではないのですが。と前置きした執事さんによると、それぞれの階層の主には譲れぬものがあるそうだ。一階層のハクは“作ること”。二階層のコウギョク・コクギョクは“愉しいこと”。そしてこの三階層の主は“知ること”だそうだ。研究者のような性格のようで、興味深い対象である僕らの機動力が上がった際の動きの変化を知りたいのかもしれないそうだ。

「そうか。それならありがたく。」

皆水晶とメモをポシェットに入れ、腰に括り付ける。……これベルトに武器を佩くことが出来るのか。便利だな……


その後、7人で手分けして執事さんやメイドさんに聞き込みをし、最初の庭師さんが倒れた場所の近くにやってきた。


そこは、玄関から暫く行った場所で、見事なバラ園だった。アーチの先には、石畳が奥まで続いており、アーチにほど近い所が問題の場所だそうだ。

近くを調べていると、1つの石畳が浮いているように感じる。そこを通った際だけカコンッと微かに音が鳴るのだ。綺麗に整備された庭だからこそ、不備が目立つ。

一般的な家の窓くらいはありそうな大きさのそれをよく見ると、手を掛けることが出来そうなへこみが同じ辺に2つ付いていた。


「ここ……みたいですね。」

月熾さんと二人がかりで持ち上げる。

……滅茶苦茶重い!

なんとか持ち上げると、人一人は通れそうな大きさの、下に続く階段が現れた。


明るい日の下であるのに、その先は薄暗く、その闇は階段の先を告げてはくれない。


「……いきましょう」

静かな庭園に微かに栗出さんの言葉が響く。

僕らは、誰からともなく頷き合い、闇の向こうへ歩を進めた。


ーーカツ……カツ……石造りの階段を叩く足音が、暗闇に響く。

無言のまま歩き続ける僕らには、張り詰めた空気が漂っていた。

暫く行くと、急に視界が開け、驚く僕らの目に光が飛び込んだ。

さほど明るくはない光だが、暗闇になれた目には眩しく、瞬きをする。


改めて階段の先にあった部屋を見回すと、屋敷の応接間といった印象を受け、調度品も屋敷と揃いのものが多かった。

とはいえ家具と言えるものは少なく、唯一ある一人がけのソファーには、既に人影がある。


黒と紫のワンピース、黒いローブに同じく黒い魔女帽子を被ったその女性は、細やかな彫刻のなされた背丈ほどの杖を持ち、濃い青紫のつややかな髪を揺らし、艶やかに笑った。

「ようこそ。あたくしの居城へ」


「あなたが……私たちの仲間を操った方ですか」

武器を構える様子もなく、どこか余裕を感じる声色で、女性に話しかける栗出さんに焦りながらも武器に手を掛ける。

「えぇ。そうよぉ? だって数百年ぶりに目覚めたら地下に閉じ込められて、可愛いあたくしの子らも居ないのですもの。“補充”するのは当然でなくて?」

余りにも女性……いや魔女が平然と言うものだから、暫く理解が追いつかなかった。

「子らという割には、雑に扱っているようだな」

「そぉ? あたくしの役に立つのですもの。“壊れた”子らも本望でしょう?」

どこまでも理解できない……いや理解したくない考えで生きる魔女と、これ以上対話しても意味が無いだろう。


「さて……時間稼ぎは終わりかしら?」

「時間稼ぎ……?」なにを言ってるんだ……?

「あら、違うの? あたくしがしているからあなたたちも“そう”とおもっていたわ」

きょとん。とした顔で話す魔女は妖艶なその姿に似合わず可憐で……ダメだダメだ。敵だぞ? 思っていることが顔に出ていたのか、咲にわき腹をつねられた。……いたっ……助かったけどもう少しやり方があったんじゃないのか……?

「さぁ、いらっしゃい? 愛しいわたくしの子らよ」

一転して怪しげな笑みを浮かべた魔女が宙に語り掛けると、一拍おいて古梓さんの押し殺したような悲鳴が聞こえてくる。


「くっっそ! どこに隠れてやがった!!」

慌てて振り返ると、置いてきたはずの様子の可笑しかった二人の攻撃を古梓さんが抑えていた。

「なんで!? 入り口は私たちでふさいでる筈!」

「咲! そんなこと言っている場合じゃない! 援護しなきゃ!」古梓さんが!

「お仲間さんにかまっていて良いのかしら?」

魔女の愉快そうな声と共に、どこからか現れた蘭雨…いやファイファーが攻撃してきた。

ファイファーのシールドバッシュを避けて呟く。

「大盾……そこも一緒なんて……」


あまりにもそっくりなファイファー。でもその目は虚ろで、蘭雨の元気さも、1度話しただけでも分かるファイファーの聡明さも見ることは出来なかった。


……だからだ。僕が横から迫ってくる怪しげに光る刃物に気づかなかったのは。


気づいたときには残り数センチで、ここまでか……悔しいと思いながらも痛みを覚悟した、その筈だった。


いくら待っても痛みは無く、気がつくと誰かの背に庇われていた。……月熾さんだ。

「ぐっ……しっかりして下さい!」

そう言うと短剣を即座に抜き、一閃した。襲いかかってきた使用人は即座に飛び抜き、当たることはなかったが、そんなことに構っている余裕は僕には無かった。

「月熾さん! その傷!」

僕を庇った際についたであろう左腕の傷は深く、傷口から紫の何かが腕全体に広がっていくところだった。

「大丈夫……です……気にしないで下さい……」


「あはは!想定とは違うけどこれでもいいわぁ。……“自死しなさい”」

愉しげな魔女の声で、月熾さんの左腕が本人の意思に反して動き出し、首元へ短剣があてがわれる。

魔女の怪しげな術に月熾の負傷。……詰め込みすぎて回収できるか怪しくなってきました……


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。よろしければ下の☆マークを1つでも押していただけると作者のモチベーションに繋がります!(もし気になればブックマークもして頂けると嬉しいです(o_ _)o)

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