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15話。主からの依頼

※ご飯を食べてから読むことを推奨します。(一応)

今まで以上に気を引き締めて進むことを決意した僕らだったが、謎は深まるばかりだった。


暫くして、執事さんが声を掛けに来た。

「お疲れとは存じますが、お食事の方は如何でしょうか。」

少し警戒しつつも、受けないのも変だからと、有り難く頂くことにした。

また執事さんの案内で、屋敷の中を進むと、広い机にシックな椅子。お洒落なカトラリーが並ぶ部屋に着いた。


雰囲気に圧倒されそうになりながら、皆が席に着くと、次々と料理がやってくる。

「あまり慣れていらっしゃらないようなので、僭越ながらバイキング形式にさせて頂きました。どうぞご自由にお取りください。」

執事さんの気遣いを有り難く思いながら、机の上を見回す。

大きい丸焼きチキンに、お洒落に盛り付けられたサラダ。テリーヌ?に魚のカルパッチョ……

目の前に置かれた皿を持ち、思わずゴクリと喉をならす。

誰かの「いただきます」という声が引き金になったのか、皆思い思いの料理を取り、食べ始めた。

自分も……と数々の絶品料理に舌鼓を打つ。

まずはお肉にかぶりついた。少し弾力のある皮を超えると、ジューシーな肉にすんなりと歯が入っていく。口の中でほろほろと崩れ、肉汁で口の中がこってりになった頃、ほんのり酸っぱいソースで味が引き締まる。

次にサラダを食べると、シャキシャキとした瑞々しい野菜が、甘めのドレッシングの風味と共に舌の上を通っていく。


そんなこんなで皆、食べる手が止まらず、あれだけあった料理が忽然と消えてから気づく。

……毒とか警戒すべきだったのか?


結局、館の主人のような人は現れず、これといったこともなく割り当てられた部屋に戻ってきた。

「う~ん……この館で一夜過ごすのかなぁ」

不安げに溢す咲だが、古梓さんがなんでもないかのように返す。

「その心配はないと思うぞ。多分そこの扉の裏にいるメイドさんの話を聞けば良いんだろ?」

驚いた栗出さんを除く僕らが通路に出る扉の方を一斉に向くと、おどおどした少女が恐る恐る現れた。


「あのぉ……お客様方は……旅のお方……ですよね」

「ええ、そうですよ?」

相も変わらず平然と嘘を吐く栗出さん。

「あ、あの! とも……同僚を助けていただけませんか!?」

「「え!?」」

周りの皆が困惑する中、どこか追い詰められているような少女を月熾さんが落ちつかせ、話を聞く。


少女によると、数週間前から数人、使用人の様子が可笑しいようで、つい先日少女の友人も変になったようだ。

「お客様にこんなことをお願いするのは可笑しいかもしれません。でも、あの子は確実に可笑しくなってるんです! ……メイド長に相談しても“気のせい”って言われて……!」

何かを気にした様子でチラチラと上を度々見ながら少女は捲したてる。

「あ、でも執事さんに相談すれば……」

対応してくれた執事さんは優しげだったし……

「無駄ですよ」栗出さん……?

「あぁ、俺も同意見だが、詳しくは本人に聞いた方が早いと思うぞ」

再び扉の方を見やる古梓さん。つられて見ていると、執事さんが音もなく扉を開けて入ってきた。


「お客様に気づかれるとは……まだまだ私も未熟ですな」

少女は入ってきた執事さんを見て、青ざめる。

「追って処分を下します。業務に戻って下さい。」

冷徹な声に、少女は震えながら、慌てて部屋を出て行く。

「そんなこと言ってるが、これも“業務のひとつ”だろう?」

「私たちは気づいているので、彼女を処分する必要は無いですよ」

栗出さんと古梓さんの全てを知っているかのような会話について行けないと感じたのは僕だけでは無いようで、皆呆然としている……いや、月熾さんは何故がウンウンと頷いているが。


「そこまで理解なさって居るのですか。……では、改めて自己紹介させて頂きましょう。」

その言葉で、執事さんのまとう空気がガラッと変わった。

「私はこの階層の主であるご主人様の使いです。……あぁ、あくまでもこの階層はご主人様のものですので、お間違いなく。」

その言葉に驚きながらも、どこか納得する。

「主人はどういうやつか聞いても……教えては貰えませんね」

「ええ。しかし、私たち自身がお客様方に危害を加えることは決してございません。むしろサポートさせて頂く立場となりますね。」


「サポート……ねぇ。んじゃ、早速教えて貰うが、俺らがこの階層を突破する条件はつまり……」

「ええ。“この事件”の解明と解決です。」

この事件?少女のいっていたやつのこと?なんだか置いて行かれてばかりだ……

「事件なら探偵の出番だな!任せた!」

「丸投げしないでくださいよ……はぁ。執事さん、事件の詳細を教えていただけますか?」

ため息を吐きながらも、栗出さんはスイッチが入ったように真剣な表情になる。

「ええ。勿論。ではまず、最初のぎせ……違和感からお話ししましょう。」


そんな言葉から始まった話は、あまりにも衝撃的だった。

「ーー最初は3週間ほど前でしたか。

事が起きたのはご主人様が出張に行かれた後からです。1人の庭師が出勤せず、怪しんだ同僚が探しに行くと、庭の寮にほど近い場所で倒れていました。

急いで診察を受けさせたところ、軽度の栄養失調でしたが、直ぐに回復し、翌日には仕事に戻っておりました。

問題はその後なのです。」

「その後……ですか?」

その人が可笑しくなったのかな?

「ええ。始めの方はあまり変わったところは無かったのです。いや、病み上がりだからと皆気にせずにいたのかも知れません。ただ、数日経って、彼の同僚が様子が可笑しいと私に相談しに来ました。」

相談……?

「ちょっとした仕事のコツなどを忘れていたり、声を掛けたときに反応が遅かったり、たまに地面を見つめてボーッとしているようで、指摘すると“そんなことはしていない。気のせいではないか”と言っていたそうです。」


執事さんの話によると、その後も様子がおかしくなる使用人は少しずつ増え、何度か執事さんの采配の範囲内で捜査したそうだけど、何も分かることはなかったようだ。


「でもそれは俺らが解決する理由にはならなく無いか?今へんなやつをぶっ飛ばしたらしまいだろ」

ぶっ飛ばす!?古梓さんは不思議そうな顔で問いかけている。暫定敵とはいえ……それはちょっと……

「う~ん……まあ、そうですよね。一応解決して頂いた暁には、ポイントを弾ませていただきますが……」

苦い顔の執事さんが辛そうで、思わず「やりますよ」と言いかけるが、付け足された情報に皆驚愕した。

「判断はお任せします。しかし……脅すようで心苦しいのですが、お客様方が〝蘭雨〟と呼んだ彼も実は今朝から様子が可笑しいと報告されているのですよ。」

「「つっ!?」」

もしかしたら……解決したら、元の蘭雨に戻ってくれるかも!?

そんな希望を持ってしまった僕らは、執事さんの「依頼を受けて頂けますね?」という言葉に頷くのみだった。


その後、手分けして館内を手がかりを求めて捜索することになり、僕は凛と月熾さんと共に図書館で似たような事例が無いか調べることになった。


執事さんの呼んだメイドさんに案内され、両開きの扉の前まで来た。

扉には妖精と蔦の模様が刻まれていて、「どこかで見たような……?」と思わずこぼす。

月熾さんと二人がかりで少し重い扉を開くと、一面本棚に埋め尽くされたとても広い空間が広がっていた。

エントランスよりも広そうで、円柱状のその部屋には、壁が本棚となっており、真ん中の大きい柱がまた本棚としてそびえ立っている。

それぞれに沿うように螺旋階段があり、床には小さな本棚とソファーが等間隔で並んでいた。

とうとう執事さんの正体が!……最初から透けて見えていたかも知れませんが。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。よろしければ下の☆マークを1つでも押していただけると作者のモチベーションに繋がります!(もし気になればブックマークもして頂けると嬉しいです(o_ _)o)

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