14話。親切への疑心と警戒
そろそろネタが尽きそうです……
扉を開くとそこは……
豪奢な豪邸を持つ広大な庭園であった。
門から屋敷まではお洒落な石畳が続き、庭には巨大な噴水やお洒落な灯籠、バラやゲラニウムが植えられ、整えられている。出てきた扉はいつの間にか大きい門になり、その奥には街と森が広がっていた。
「ここは……?ダンジョンの中……だよね?」
「まあ、公園もありましたし……」
皆がキョロキョロと辺りを見回す。時折庭師のような人達の影が見えるが、すぐに庭の中に消えていってしまう。
門を開けないかと二人がかりで押してみるが、びくともしない。
「これは……あの洋館に行け。ということですかね……?」
月熾さんがそう呟いたのを見計らったように、屋敷から人影が出てきてこちらに向かってくる。思わず皆警戒し、武器に手を掛けるが、栗出さんが制止してくる。
「ここはあちらのテリトリーです。警戒するに越したことはありませんが、武器は構えないで下さい。」
緊張の糸を張り詰めさせるその言葉に納得し、構えていた手を下ろす。
「お客様。この度は当屋敷にどのような御用件でしょうか。」
近づいてきた人影は、恭しく一礼をして問うてくる。見ると、燕尾服に白髪の混じった髪を後ろに撫でつけ、モノクルをかけている。
「ええ、少し迷ってしまって。気がついたらこの場所に」
平然と嘘を吐く栗出さんに視線が集まる。それを気にした様子もなく、どこか張り詰めていた執事さん?の雰囲気が和らぐ。
「さようでございましたか。では、当屋敷で休まれては如何でしょう。」
その提案に戸惑う。……敵じゃ無いのか……?
「執事さんが勝手に判断してもいいのか?ここの主人は?」
だいぶ踏み込んだことを聞く古梓さんに焦り、止める声をかけようとした。
しかし、執事さんは意にも介さず
「ええ。大丈夫です。……主はお客様を招かれるのがお好きでいらっしゃいますし、私は一応では御座いますが、屋敷に関する全権を預けていただいております。」
少し返答まで詰まったことが気になるが、執事さんの気遣いなのだろうと思うことにする。
「……では、お言葉に甘えさせていただきます。」
思わず月熾さんの方を見ると、執事さんに聞こえない程度の小声で説明してくれた。
「一階層、二階層は入ったときに案内人が居ました。三階層は、こちらの執事さんかもしれません。」
「ですが……」
「退路が断たれた以上、俺達は進むしか無いですしね」
僕達は、執事さんに連れられ、屋敷の中に入っていった。
彼らが屋敷の中に消えた後、庭園で動いていた庭師達が動かなくなったのはまた別のお話。
屋敷の中は、アンティークな調度品に溢れ、絢爛豪華というわけではないが、シックで落ちついた内装となっていた。
細やかな彫刻がなされた扉を開くと、広々としたエントランス、大きな階段があり、この屋敷の広大さを表しているようだった。
エントランスには、メイドさんや執事さんがずらりと並び、僕たちが入った途端一斉にお辞儀した。
「「いらっしゃいませ。お客様」」
その中に、懐かしい姿を見つけ、色奈は固まり、僕は思わず咲と二人で駆け寄る。
「蘭雨!生きてたの!?」
執事姿の彼は、此方を戸惑った様子で見てくる。
彼は執事さんの方を見やり、頷いたことを確認すると一礼し、
「申し訳ございません、お客様。私は“蘭雨”と言う方は存じ上げておりません。失礼ですが、どなたかとお間違えではないでしょうか。」
「「え……?」」
その態度に戸惑っているばかりの僕たちは、執事さんに促されるまま応接間に案内された。
道中で執事さんに、蘭雨にそっくりな彼のことを聞くと、“ファイファー”という名で、先日より務め始めた者だと教えてくれた。
「彼はこの街から遠く離れた名も無き村より、出稼ぎに来たようで、礼儀もしっかりしていましたし、働き口が無いとのことで此方で雇わせていただくことになったのです。」
いろいろと思うところはありつつも、他人のそら似ということにした。
ただ、色奈だけはどうしても気になるようで、終始なにか考え込んでいた。
執事さんに案内して貰った14人全員が入れるほどの大きさの応接間は、これまたいくつかの調度品があり、部屋の内装もシックな印象だ。数は多くなく、成金のようにも見えないが、統一感があり、その分一つ一つが高価にも見える。
落ち着きなく、ソワソワしていた僕らとは対照的に、屋敷に入る前からどこかひりつく空気を纏った栗出さんが、色奈に視線を向けると、微かに頷く。
「……大丈夫。暫くは危害は加えられへん。」
その言葉に僅かに栗出さんは頬を緩める。
「そうですか。では有り難く歓待を受けるとしましょうか」
その言葉を聞いていたかのように、1度場を辞した執事さんが、メイドさん達を連れて入ってきた。
「大変お待たせ致しました。恐縮では御座いますが、お飲み物の準備を致しますので、お部屋の準備が整うまで、こちらでお待ちいただけますでしょうか。」
皆無言で頷く。……ひとり「メイド服、かわいい……」って呟いてたけど。
咲を見ると、咲も此方に気づいたのか、寄ってきて耳打ちしてくる。
「ヴィクトリアンのメイド服!しかも午後の……! この目で見られるなんて……!」
興奮している咲にたじろぐ。ヴ、ヴィクトリアン?メイド服に種類なんてあったんだ……
メイドさん達の用意してくれた紅茶を飲みながら暫く待っていると、執事さんが呼びに来た。
案内されて、長い通路をいくつも曲がっていく。
……これ、自分だけでは玄関にたどり着ける自信が無いなぁ
いつの間にか用意された部屋に着いていたようで、これまたお洒落な装飾のなされた扉が開かれると、リビング?が広がっていた。
「ごゆっくりどうぞ。なにか御用がありましたら、机上のベルを鳴らしていただきますと、メイドが参ります。」
そういって、執事さんは去って行った。
取り敢えず部屋の中に危険なものは無さそうだったので、部屋にある14個の扉を見て回ることになった。
しかし、内装は見たところどれも同じだったので、一人一部屋選んで、鞄を置いてからリビングで集合することとなった。
武器を装備しながらも、身軽になった状態で全員が集まった。
「にしても……不気味ですね。」
「何処がですか?俺らの存在はイレギュラーだったみたいですし、このダンジョン関係者ではあるでしょうけど、そこまで警戒しなくとも良いのでは?」
確かにそうだよな……最初警戒されていたくらいだし。栗出さんはなにに引っかかってるんだろう。
「そこですよ。私たちは彼らにとって想定していない客の筈なんですよ」
「……それが……関係しているんですか?」
月熾さんが言っていた通りだよね?
「ああ、つまり俺らの存在を知ったばかりの筈なのに部屋がきっかり14部屋用意されているのが可笑しいと。」
古梓さんの言葉にやっと納得する。確かに僕らは今朝で14人になった。これではここにたどり着いた時、14人になっているのを分かっていたみたいだ。
「でも、それは彼らがダンジョン側であるというだけではないのですか?」
月熾さんの疑問に栗出さんはさもありなんと頷く。
「ええ。そうでしょうね。なのでいくら親切だったとしても警戒を解かないで頂きたい。ということです。」
どこか緩んでいた気持ちを引き締め直し、神妙な顔をして皆が頷く。
色奈もどこか空虚な瞳で頷いている……大丈夫なのだろうか
蘭雨に似た彼に、親切な執事さん。姿を見せない主人……難しくなってきました……
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