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10話。天国と地獄

やっと二階層です!長らくお待たせしてすみません…

双子は楽しそうに揃いの短い茶髪を揺らし、クスクスと笑い出す。

「アタシはコウギョク」「ボクはコクギョク」

「アタシを」「ボクを」「「愉しませてね!」」


困惑を隠しきれない僕達だったが、栗出さんの「これまではハクさんとルリさんでしたが、この階層は…貴方方ということですか。」という言葉で気を引き締めなおした。

すると、キョトンとしていた双子が無邪気に笑い、

「「せいかいせいかい、だいせーか~い♪」」

と嬉しそうに言った。

「…なあ、お前らさっき“ハク様”って言ってたよな」これまで沈黙を保っていた古梓さんが訝しげに尋ねた。

そういえばそうだ。この二人は、ハクのことを“ハク様”と呼んで、“怒られるかな?”と言っていた。ハクの方が立場が上なのか?ルリもなんだかんだでハクの言葉には従っていた。


双子はしばらく黙り込んでいたが、コートの子…コクギョクがため息をついた。

「はぁ…そうだよ。ハク様はハク様。なにか可笑しい?ねぇ、コウギョク」

「ね~♪コクギョク」

コウギョクはなにが面白いのか、未だにクスクスと笑っている。

「…いや、なんでもない。確認しただけだ」

もう古梓さんに興味を無くしたのか、双子はそろって首をかしげる。

「もういい~?」「もういい?」

「じゃあ、二階層の説明!」


さっきの雰囲気が嘘のように、双子は愉しげに話し出す。

不気味なほどに揃った礼をする双子。

「二階層はアタシらの階層!」「ボクらの階層」

「アタシたちは遊ぶのがだ~いすきなんだ♪」「早く遊ぼ?」

遊ぶ…?嫌な予感が…咄嗟に色奈に目を向けるが、目を見開いて、必死に首を横に振っている。

「まずはぁ~」「「天国と地獄♪」」

嫌な予感は当たっていたみたいだ。コクギョクが指を鳴らした途端、一瞬で視界が変化した。


一瞬めまいがしたかと思うと、ふわふわとした場所に立っていた。

「皆さん!武器を!何があるか分かりません!」

栗出さんの言葉にハッとして、鞄から剣を取り出す。鞘が無いからと鞄に入れっぱなしにしておいたことが凶と出た。

周りを見ると、他の人も各々の武器を取り出していた。ただ、月熾さんだけは既に短剣を片手に持ち、緩やかに構えていた。恐らく双子が近付いた時点で出していたのだろう。

普段、皆を守ると思っておきながら、油断していたことを自覚する。

そうだ。ここは知らない場所。なにが起こるか誰にも分からないんだ…


目の前で宙に浮かぶ双子が動いていないことを確認して、周囲を確認した。

「…ある程度の広さはあるようですが、柔らかく、動きにくいですね。まるで雲みたいです」月熾さんが軽く足踏みをして言った。

同じように足踏みをしてみると、軽く沈み、戻った。まるでクッションの上にいるみたいだ。

「!なんや!?」警戒しながらも、円形のこの場所で端になっている方へ歩いて行った色奈から、声が聞こえた。

驚きつつ、近付こうとすると

「あまり来やんほうがええ。…このふわふわ、マグマに浮いてる…」

僕らに近付き、周りに聞こえないようにか声を潜めて色奈が呟いた言葉に、絶望の声を上げそうになった。

「玲谷、小さい子どもには聞かせるべきじゃないだろ」と口を押さえてくれた蘭雨に感謝しながら

「“天国と地獄”って行ってたよね…ここで何をするんだろう」と呟く。


答えを期待していなかった問いに、答える声が静まりかえった空間に響く。

「しょきゅうへ~ん」「しょきゅうへ~ん」

「どれだけ生き残るかな?」「かな?」

「じゃあ頑張って…「避けてね」」

双子はそういうと、コウギョクは本人の身長を超えるほどの長さの黒い鞭を、コクギョクは腕の長さほどの黒い杖を服の袖から取り出した。

そして、不気味な笑顔を浮かべ鞭と杖を振りかざす。


最初に動いたのはコウギョクだった。長い鞭を自由自在に操り、攻撃してくる。

「真ん中や!!」色奈の叫びで全員が反射的に左右へ避けた。それとほぼ同時に真横から、強い風が吹き付けてきた。思わず目を瞑ったが、一瞬で風は収まり、恐る恐る顔を上げた。

すると、柔らかく雲のような足場に、鋭く深い1つの線が刻み込まれている。

「こんなの当たったらひとたまりもないよ…」

鞭がこんなにも恐ろしいものだったなんて、思いもしなかった…

「ウチに任しとき。直前になってはしまうけど、軌道はある程度分かるんよ…」と皆に聞こえる程度の小声で伝える色奈。


「あの子、邪魔だね~」「だね。」

「先に潰す?」「潰そっか」

小声での会話を聞き取ったのか、物騒なやり取りをする双子を蘭雨が睨み付ける。

他の人には聞こえなかったのか、攻撃に慄いている人だけだった。


「つ、次!右手側!」

走らなければ間に合わないほどの早さで次々と鞭が飛んでくる。

全員がギリギリで避けることに成功していたのは不幸中の幸いかもしれない。

双子の会話以降、色奈が集中的に狙われるようになった気がする…

色奈もそれを分かっているのか、集団とは少し離れた場所に一人で立ち、巻き込まないようにしている。僕が駆け寄ろうとすると、

「アカン!犠牲が一人増えるだけや!あんたは皆守るんやろ!」と制止される…

「でも!色奈が一番危ないでしょう!?」

「んなもん関係ない!一人より皆やろ!」

そう…言い合っている隙を突かれ、コクギョクが杖を振りかぶった。


杖から伸びた黒ずんだ紫の光は、止める間もなくまっすぐに色奈に向かっていった。

「色奈!!」蘭雨が走って行くが…間に合わず、色奈に光が当たった。

「うっ…」色奈!なんで…僕は動けないんだ…

うずくまる色奈に蘭雨が駆け寄る。どうやら外傷はないようだ。

「冬野さんは大丈夫…ですか?」

「おう…多分な…でも」

色奈はまだうずくまっており、蘭雨が応えた。

「蘭雨…大丈夫やで。ちょっと怠いだけや」

「本当に大丈夫…か?…スマン」

「なんで蘭雨が謝るんよ。迂闊な言動したウチが悪いんやから」

青ざめた顔でなんでもないかのように明るく振る舞う色奈。

「違うんだ!違うんだよ…」蘭雨…?

「まあまあ…気にせん…つっ!」

慌てた様子の色奈が、双子の方を向く。


「お涙頂戴だね~」「だね。」

「でも「そんなのはつまらない」」

コウギョクとコクギョクが揃って武器を振る。

紫の光と鞭が色奈と蘭雨を襲う

慌てて月熾さんたちと共に蘭雨たちの方へ向かうが…間に合わない!

蘭雨が色奈を抱きしめ、庇う。

「馬崎さん!「蘭雨!」」

鞭と光が直撃した…かのように思えた。


蘭雨たちから白い光が溢れ、思わず目を閉じる。

無能な自分に怒りを覚え、無残な光景を目の当たりにすることを覚悟し、恐る恐る目を開ける。

しかし、そこに広がっていたのは思いも寄らぬ光景だった。


うずくまる色奈と蘭雨を白い光の膜が覆い、光と鞭を跳ね返していた。

「ちぇ…窮地の覚醒ってなによ…面白くない」「つまんない。」

「もういいや」「もういいよね。」

双子は興味を失ったかのように武器を下ろした。

「蘭雨…これは…なんなん?」

「“スフィアバリア”って言うらしい。ポイントが足りなくて行き当たりばったりだったんだよ…守れて良かった」

蘭雨がホッとした顔で色奈を抱きしめる。

「よかった…」どこからともなく声が漏れた。しかしそんな時間が続く訳もなく…


「蘭雨!」色奈の悲鳴のような声と共に

「なわけ…」「ないでしょ!」という双子の声が聞こえ、蘭雨を襲うかと見えた攻撃は、此方に向かってきた。

ほぼ全員が飛びのき、避けることが出来た。

「…フェイント…?」色奈が呆然としている

「ぉかぁさん…」か細い声がして、帰りたいと泣いていた少女が、逃げた先でうずくまっていた。

よくみると、足場の端で、落ちかけていた。お母さんが慌てて駆け寄るが、双子がその隙を見逃す訳もない。

鋭い鞭の一撃が、少女を襲い、少女はバランスを崩した。

今のところ、ハクの立ち位置が謎すぎますね。何なんですかあの子…


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。(何十人もの方に読んでいただけて、感謝とともに震え上がっております)よろしければ下の☆マークを1つでも押していただけると作者のモチベーションに繋がります!(もし気になればブックマークもして頂けると嬉しいです(o_ _)o)

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