9話。誰かのヒントと新たな始まり
休憩所が終わらないのって、色々詰め込みすぎなんですかね。
《ん?帰りたいのか?なら負ければ良い》
「「なっ!?」」それはつまり…
お母さんが子どもを抱えて、後ずさった。
《「ルリ…ダメ…言葉足らず…」
でも別に此奴らに勘違いさせといたところで俺らには関係ないだろ?
「それと…これとは…話が…別」
はいはい…んじゃ、さっきのことは忘れてくれ。気のせいってことで。》
忘れられるわけがないじゃないか!それに…勘違いって、なんなんだ?
「あ~!冗談だったのか!」
「蘭雨…それは違うよ」
「?どういうことだ?」
「もう…まあ良いや」咲も諦めちゃったか…
「なあ、分かりようがないもんを今気にしててもしゃーないで?」
「確かにそうだね。色奈、ありがとう」
「え~よえ~よ」色奈はいつも明るいなぁ
「…なぁ色奈、部屋、女と男で分けるんだろ?伝えなくて良いのか?」
「ああ、せやったな。蘭雨ありがとぅな。忘れるところやったわ。玲谷、じゃウチが皆に伝えてくるわ。」
「ありがとう!宜しくお願いするよ。」助かるなぁ
「…むぅ」色奈?どうしたんだ?
「なんでもない!…鈍感」
最後に何か言ってた気がするけど…まぁ良いか。
今日は、1度女性と男性に分かれて部屋で寝ることにした。
「女子の水浴び終わったよ~タオルがあったから助かったけど、服の替えは見当たらなかったから気をつけてね。」
「咲、ありがとう。」
服を替えないのが違和感なのか、少し嫌悪感を滲ませながら、伝えて去って行った。
「僕らも行きます?」
「俺は良い…「蘭雨は行くよ?」なんでだよ!」
それはそうだろ…汗臭いし
「私も行きましょう。こんな状況とはいえ、清潔にはしておきたいです。」
ほぼ全員が水浴びをすることになった。
「あ~気持ちよかったな!」
「僕はちょっと寒いよ…」
「玲谷って寒さに弱かったか?」
「そういう問題じゃぁないんだよ…」
水浴びを終えて、そんな会話をしていると、急に眠くなってきた。
「ん~ねみぃ~。俺もう寝るわ。」
「僕も…いつもはこんなに早く眠くならないのに…」
う~ん…疲れてたのかな?
他の人も、しばらくは起きていたみたいだけど、それでもいつもよりは体感早めに寝たようで、スッキリした顔をしていた。
「あ~よく寝ました。」
「時間帯すら分からないのが少し大変ですね。」
もう一つの部屋の女性達と合流したころ、ルリの声がした。
《あ~朝のお知らせだ。めんどくせぇ
「ルリ…ちゃんとやって」はいはい、わーったよ》
朝なのか…ていうか急になんだろう。次の階層…の話かなぁ
《昨日の分のヒントだ。全体公開を選びやがったからな。めんどくせぇ…一応口頭でも言うが、本を礼拝室に置いておいたから、後で確認しろ》
ヒント?公開?なにかの役職のことなのか?
「う~ん…普通に考えると、探偵…とかかねぇ。ま、俺らの中の誰がとか考えても仕方ねぇし、聞くかぁ。」
「そうやね。聞いてみんと分からへんし」
確かにそうだな…
ザワザワしていた室内が、静まりかえると、ルリは巫山戯ていたことが嘘のように真剣な声色で話し出した。
《これは、何処かのいや、何かの神代の物語だ。
神は、気まぐれにこの世界を創りたもうた。地を造り、天を造り、理を敷いた。その後、命を育む海を造り、5種族の生命の種をそれぞれが根付きやすい地にまかれた。そしてその地にウォーラルと名づけ、永久なる世界の繁栄を願われた。
自然豊かになったウォーラルに、生命の種が根付く頃、天龍は爽やかな空を。エルフは自然豊かな森を。ドワーフは豊かな地下を。人間は広大な大地を。精霊は自由の次元を。それぞれの土地で豊かに暮らせるように心くばられた。
しかし、幾億年もの時が経ち、科学というものが発展したウォーラルでは、それぞれがほどよく関わり合い、暮らしていくはずが、種族の壁を越え、科学兵器で殺し合っていた。
そんな現状に心を痛めた神々が、各種族の夫婦神を遣わし、“魔法”を与えたもうた。
魔法の存在で、それまでの科学文明より逸脱し、魔法文明が発達するようになると、各種族の夫婦神の影響か、魔法の影響か、小さい小競り合いはあれども、各種族は程よい関係性を築いていくことになった。
そんな、平和の時代が来た…筈だった。》
不思議な話だった。まるで、その世界が本当にあるような…御伽噺のようであるのに、今の僕たちが置かれた非現実的な状況が、ルリの話に真実味をもたらしていた。
「筈…だったですか?」月熾さん…?
《あぁ、それは…
「ルリ…おすわり」そうだったな。これ以上のことが知りたければ、ここを攻略し、ラスボスを倒してみせろ。》
「答えてはくれないんですね。」
《ああ、答えを教えられてもつまらないだろう?》
「確かにそうですね。」
それ以上、ルリの声がすることはなかった。
「にしても聞いたことのない神話でしたね…俺の知っている国のものではなさそうです…」
「創作にしては…ルリさんの話し方が気になりますね。」
「すごい物語があるんだな!んで、この状況となにか関係があるのか?」
「「…確かに」ないですね。」
「まあでも…ヒント言うてたしな。今考えても仕方ないことは置いとこや」
気になりはするけど…これ以上のことは分からないだろうしということで、頭の隅に留めておくことにした。
全員が、水と幾つかの干し肉を自分の鞄に入れ、次の階層に進むこととなった。
その際、序でに…と礼拝室の扉を開けると、祭壇の上に立派な装飾の割にページの少ない本が置いてあった。
「内容は先程の放送と全く同じですね。とはいえかさばりますし、誰か持っておきますか?」
「なら、鞄に余裕があるので、私が持っておきましょうか?私の武器、クナイですし…」
「では、お願いします。暁宮さん」
そんなやり取りをしつつ、入ってきた扉とは通路の逆側にある扉を開けると、下へと続く階段があった。
そこを慎重に下っていくと、また簡素な扉があり、開けてみると、ただただ白い空間が広がっていた。
「「え…?」」
「最初に気がついたときの部屋に似てる…」
「入っても…大丈夫かな…?」
「咲、安心してぇや。この部屋はいけそうやで。…この部屋は。」
え?ま、まあ、色奈のお墨付きがあるなら大丈夫…かな?
「んじゃ、入るか~!」
「蘭雨、ちょっと待って…」
恐る恐る全員が部屋に入ると、入ってきた扉から、ガチャンという音がした。
焦って確認しに行くと、鍵が閉まったようでビクともしなかった。
「退路を無くされましたか…迂闊でした。すみません…」
「栗出のせいではないだろ。気にすんな」
ザワザワとした雰囲気が収まらずに、皆不安げにしている。それはそうだ。多少なりとも落ち着けた休憩所に戻れなくなったのだから。
と、急にハクやルリとはまた違った子どもの声が聞こえてきた。
「あれ~?早くない?」「早いね」
「どうする?」「どうしよっか?」
「始めよう!」「始めよう。」
「ハク様怒るかな?」「大丈夫だよ。」
声のした方を見ると、茶色の髪の毛に翠の目をした、双子の子どもが宙に浮いていた。思わず目を疑ったが、周りの人も信じられていないようだ。
よく見ると、片方は黒い膝丈のワンピースに灰色のズボンをはいて、もう片方は灰色のシャツに灰色のズボンをはいて、黒いコートを着ていた。
「あれ?こっちに気づいたよ?」「気づいたね」
「じゃぁ行こう!」「行こっか。」
そう話して、僕たちの近くへ降り立った。
独特な話し方で、動作や顔もそっくりだ。
「いらっしゃい!」「いらっしゃいませ。」
「「参加者さんたち!」」
参加者…?僕らのことだろうけど…
戸惑っているなかで、双子は楽しそうに笑い出した。
「アタシはコウギョク」「ボクはコクギョク」
「アタシを」「ボクを」「「愉しませてね!」」
新たなキャラの登場。…双子を書きたかったんです。
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