最終話 誓い
よろしくお願いします!
パーティーから1か月がたち、ついに、明日、騎士団に入団する。
とはいえ、お父様とアール兄様と同様、私も屋敷から通う。
だから、特別な準備はいらない。
持っていく物は、やる気だけ! もちろん、それも準備万端!
で、私は今、屋敷の外の道に呼び出されている。
ここは、ルドとロイスと初めて会った場所。
呼び出したルドが、私を見て、うれしそうに微笑んだ。
「マチルダ様、来てくださってありがとうございます」
「ここで、初めて会ったよね。ほら、そこにルドがうずくまってて…。荒れた雰囲気のロイスが立ってたよね。まさか、その時は、2人とずっと一緒にいることになるとは思わなかったよ!」
「いえ、ぼくは、一目見て、マチルダ様を離したらいけないと思いました。澄みきって、まぶしいほど光ってましたから」
「フフ…。前もそう言ってくれてたね。今は、どう? 汚れてない?」
ルドは、私を上から下までじっと見て、まぶしそうに目を細めた。
「今も、気持ちがいいほど澄んでいます。それに、前よりもっと光って見えます!」
「ほんと? 良かった!」
嬉しくなって、思わず微笑む。
ルドが真面目な顔になった。
「マチルダ様…」
「何?」
「ぼく、明日、王都へ行きます。そして、王宮の文官になります」
「え、そうなのっ?! しかも明日?! 急だね…」
ルドがいなくなると思ったら、胸にズキンと痛みがはしった。
気に寂しさが襲ってくる。
「はい。マチルダ様が騎士団に入団される同じ日に、ぼくも、新たに出発したいと思いまして…」
そっか…。でも、ルドにとったら、おめでたいこと。
私は、できるだけ明るい声で言った。
「寂しくなるけど、ルドにとったら良いことだもんね。その頭脳を生かさないと、もったいないし。今まで、従者として、いっぱいいっぱい助けてくれて、本当にありがとう! …王都へ行ってもがんばって」
「あ、いえ、マチルダ様の従者はやめません! マチルダ様の最高の従者として、一生そばにいるために、王宮の文官になります!」
…ん? それ、ちょっと、意味がわからない…。
首をかしげる私。ルドは大きな瞳に強い光をともし、すがるように私を見つめてきた。
「ぼくは、休日はこちらに戻ってきます。なので、従者のままでいさせてください」
「いや、王都からここまで遠いから、無理しないで?」
「大丈夫です!」
「…うーん、そう? まあ、でも、これからもルドと会えるとわかったら、ほっとした!」
私の言葉に、ルドが嬉しそうに微笑んだ。
ルドは、いつも身につけている黒いバッグから、リボンのかかった細長い箱をとりだした。
「マチルダ様。どうか、これをもらってください」
そう言うと、私に向かって、両手で箱を差し出しだしてくる。
「え、私にプレゼント?! うわあ、ありがとう! 開けていい?!」
ルドはにっこり笑って、うなずいた。
早速、リボンをほどいて、ふたをあけた。
小さくて丸くて赤い石のついたネックレスが入っている。
ルドの髪の色と同じ、きれいな赤い石。
「これ…、前に、ここで、ルドにあげた魔石のネックレスみたい…」
「はい! 似た色の魔石を探して、同じように加工をしました。ほら、ぼくがいただいた魔石とそっくりでしょう?」
そう言いながら、服の中から、ネックレスをとりだすルド。
見比べてみる。魔石の色も形も、うりふたつだ。
「マチルダ様から離れている時間も、ぼくの心は、いつもマチルダ様のそばにありますから…」
ルドはそう言うと、私の首にネックレスをかけてくれた。
赤い魔石のあたるところが、ほっこりとあたたかくなる。
ほんと、ルドがそばにいる時みたいだ…。
「ありがとう、ルド! 大事にする!」
ルドがうなずき、まっすぐに私を見つめてきた。
「マチルダ様。これからも、ずっと、ずっと、そばにいさせてください…」
「うん! ルドがいてくれたら心強い! こちらこそ、一緒にいてね!」
そのとたん、ルドの目から、ポロポロと涙がこぼれはじめた。
「え? ちょっと、泣かないで!」
「でも、…うれしくて…。ぼくは、一生、マチルダ様をお支えする従者となります!」
「ありがとう! なら、私は、一生、ルドを守る騎士になる!」
結局、ルドにつられて私も泣きだし、2人で号泣した。
それから2年がたった。
私は辺境の騎士団で働き、ルドは文官として王都で働いている。
ルドは宣言どおり、休日になると必ず辺境に帰ってくる。
たった一日のお休みで、少しの時間しか滞在できなくても帰ってくるから心配なんだよね。
そして、ここで大きな変化が!
なんと、私とルドは婚約しました!
というのも、昇進したルドに婚約を申し込まれたから。
驚いたけれど、私は、すぐに承諾した。
だって、恋とか愛とかは、わからないけれど、ルドのいない人生は、もう、考えられないから。
ルドは、私の体の一部みたいな感じに思えるんだよね。
ルドは、私の従者兼婚約者となった。
そして、私は、ルドの騎士兼婚約者だ。
婚約式では、ルドの作ってくれた魔石の指輪を交換し、私は剣で騎士の誓いをルドに捧げた。
婚約後も、私は辺境、ルドは王都で、お互い忙しいけれど、ルドは休日ごとに辺境に帰ってくる。
そして、今まで通り、楽しそうに従者としてお世話をしてくれる。
が、前と違うこともある。
それは、私に向けるルドの顔が、とろけそうな感じに甘くなったこと…。
そして、その表情を見ると、私の心臓が変にドキドキしてしまうんだよね…。
ということで、私、マチルダ・ターナーは、ルドと出会えて、本当に、本当に幸せです!!
(完)
これで完結となります。最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました!
ブックマーク、評価、いいねもありがとうございました! 大変、励みになりました!
本編である「無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?」のほうも、よろしくお願いいたします。
ちなみに、ルドは、番外編のほうにでてきます。




