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3話 13歳になりました

よろしくお願いします!

騎士団長様から預かって来たお手紙を読んだお母様。

翌日、猛烈な勢いでお城にのりこんでいった。


そして、帰って来たあと、あきらめたような顔で私に言った。


「はあー、もう、だからマチルダには黙ってたのに…。私がミラベル様と友人だってこと。あんな魅力的な女性騎士に会ったら、もう騎士になるのを止められないじゃない」


「すまん、ローズ…」

大きな体を縮こませて、力ない声で謝るお父様。


「マチルダ。本当に騎士になる覚悟はあるの? 騎士は危険がつきもの。特に、女性にとったら、厳しい世界よ。それでもなりたいの?」

お母様が真剣な眼差しで聞いてきた。


私は、迷いもなく答えた。

「なりたい! なります!」


「わかったわ…。もう、好きなようになさい。お母様はとめないわ。刺繍はしなくていいけれど、今以上に勉強はがんばりなさい。そして、ケガをしないくらい強くなりなさい。ミラベル様みたいに、おごることなく、弱い人や困った人を助ける素敵な騎士におなりなさい」


「ありがとう、お母様! 私、がんばる。絶対にケガしないように強くなる! 騎士団長様みたいに、素敵な騎士になるから見ててね!」

私は胸をはって、お母様に宣言した。




あれから3年。私は13歳になった。


その間に、私はドレスを着なくなった。体を動かしやすいようにトラウザーズをはく。


それは学園でも同じ。

ドレスじゃないので、空いた時間を見つけては、体が鍛えられるから都合がいい。


最初こそ、周りの人たちには驚かれたり、笑われたり、からかわれたりしていたけれど、今は、何も言われない。

すっかり見慣れてしまったよう。今なら、ドレスを着た時のほうが驚かれると思う。


それと、大変嬉しい変化もあった。

なんと、あの憧れの騎士団長様に月に1回、お城によばれ、稽古をつけていただいている。


しかも、私にばれたことで、ふっきれたのか、お城へはお母様も同行している。

お母様にとって懐かしい場所のお城で、騎士団長様と話しをするお母様は、時折、少女のような顔をみせて、とっても楽しそう。


騎士団長様曰く、私はお母様に似ているよう。

目標を決めたら、ものすごい努力をするところがそっくりなのだそう。


森をかけまわるほどお転婆だったお母様。

でも、辺境騎士団で騎士として働いていたお父様とこのお城で出会い、恋に落ちた。


そこから、お母様は立派な子爵夫人になれるように、努力しはじめる。


なかでも、手先が不器用だったお母様が一番苦労したのは刺繍。

騎士団長様が笑いながら、こっそり教えてくれたのは、お母様が初めて刺繍したハンカチは血染めだったとのこと。


今では、お母様の刺繍をしたハンカチは、教会のバザーですごい人気なんだけどね。


そして、お父様の訓練は、どんどん厳しくなってきた。

アール兄様は、去年、辺境騎士団に入団したけれど、時間がある時は、私と一緒にお父様の稽古を受けている。

子爵家で働いている護衛の皆も一緒に訓練をする時がある。


お父様もアール兄様も護衛の人たちも、みんな背が高く大きい。が、私はお母様に似て、背はあまり高くなく、鍛えているけれど細い。


でも、体格で劣るぶん、最近は、すばしっこさを生かすことも覚えてきた。


そんなある日、屋敷の庭で剣の素振りをしていたら、かすかに、人が泣くような声が聞こえてきた。

どうやら、塀の向こう側、つまり道路のほうからだ。


私はあわてて、裏口から外にでて、声の聞こえたほうへと向かう。


すると、塀のところに、うずくまる赤い髪の毛の子ども。そして、その前で見下ろしている、体格のいい少年。

さっきの泣き声は、赤い髪の子どものようだ。


困っている人を助けるのは、騎士の役目よ!


私は練習用の剣をにぎりしめると、つっこんでいった。

そして、うずくまる男の子の前にかばうようにして立つ。


「小さな子どもを泣かせて何をしているの?!」


少年は、一瞬驚いたように固まったものの、私の顔を見たとたん、馬鹿にしたように笑った。

本日、三回目の更新です。読んでくださった方、ありがとうございます!

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