2話 決意
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私の手をにぎった、騎士団長様がうれしそうな声をあげた。
「おっ、剣ダコだな! マチルダは剣をにぎるのか?」
私は、勢い込んで答える。
「はいっ! 私は騎士になりたいんです!」
「では、ブライトに稽古をつけてもらってるんだな?」
「あ…、いえ…、ここ最近は素振りだけで、父からの稽古はうけておりません」
「何故だ?」
「母にとめられました。私が女の子で、騎士ではなくお嫁にいくのだから、剣はいらないと言われて…」
私の言葉に、騎士団長様の力強い視線が、私をまっすぐに射抜いた。
「マチルダ。人に言われてやめられるのか? 騎士になることを」
「…いえっ、やめられません! 絶対に騎士になりたいです!」
「そうか。なら、大丈夫だ。夢を追うのに、女も男も関係ない。騎士になるために必要なのは、日々の鍛錬だ。毎日、剣を持て。強くなれ。うちの騎士団は、15歳から入団試験を受けられる。そうだな、副騎士団長のブライト?」
そう言って、騎士団長様がお父様に向きなおった。
お父様は、ふーっと大きなため息をついた。
「もう、騎士団長。なに、うちの娘をあおってるんですか? あー、また、妻に怒られる…」
お父様の表情も口調もすっかりくだけている。
そういえば、騎士団長様は辺境伯様で王妃様だけれど、騎士団内では仲間として、皆に気さくに接しているとお父様から聞いたことがある。
強いだけじゃなくて、かっこよくて、素敵で、美しくて…まるで女神様みたいよね…。
そんな女神様がお父様に意味ありげに微笑みかけた。
「でも、ブライトから見て、マチルダは素質があるんだろ? だから、私に会わせた。そうじゃないのか?」
お父様は驚いたように目を見開いた。そして、言った。
「正直、男だったら、もっと厳しく鍛えたい…と思うほどではあります」
「なら、そうすればいい。入団試験までにマチルダを鍛えろ。副騎士団長の手腕を見せてくれ。入団後は私が責任をもって預かろう」
「いやいやいや、そんなことをしたら、妻がなんというか…」
「はっ! 妻って、あのローズだろう。今でこそ、生粋の貴族夫人って感じだが、どれだけお転婆だったか」
「え? お母様ともお知り合いなんですか?」
思わず、私が聞いた。
私が辺境伯様にあこがれているのを知っているのに、お母様は、そんなことを一言も言ったことがない。
「ああ。幼馴染だ。私の父である前辺境伯の側近だったルグラン子爵。娘のローラを連れてよく城へ来てたからな。しょっちゅう、森の中で一緒にかけまわっていた」
ええええ?! そうだったの?!
なんで、お母様は私に言ってくれなかったの?!
ちょっと、お父様! どういうこと?! という思いをこめてお父様を見る。
お父様はあきらめたように言った。
「ローズはな、マチルダに危険な仕事である騎士になってほしくないから、騎士団長様と友人なのをずっとだまっていた。マチルダがそれを知ったら、騎士への憧れがもっと強くなりそうだと言ってな」
「なんだそれは…。まあ、ローズのことは心配するな。私からも話しをしておく。優秀な騎士は一人でも多く育てたいからな。じゃあ、マチルダ。体を鍛え、稽古に励め。騎士団で一緒に働く日を楽しみにしている」
騎士団長様は私にそう言葉をかけると、颯爽と立ち去っていった。
その後ろ姿を、しっかりと目にやきつける。
いつか、後ろに立てることを願って。
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